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バルブ産業
バルブはインフラ設備や産業プラントなどの流体制御の要として高い品質、安全性、信頼性が求められる重要機器。配管内の流体の流れをコントロールする機能を担い、扱う流体は水、水蒸気、ガス、燃料、原材料とさまざまだ。見えないところで活躍する“縁の下の力持ち”として施設・設備、人と社会の安全を守り、生産やサービスの品質を守っている。
安全・品質守る
材質・構造使い分け
バルブは流体を流す、止める、逆流を防ぐ、量を調整するなどの役割を担う。日常生活でも水道やガスなどの安全な使用と品質管理において、なくてはならない存在だ。扱う流体の違い、性質の違い、圧力や温度の違いなどに合わせ、バルブの材質や構造もさまざまなものがある。
工業用途では流す量を調整する玉型弁、素早く開閉できるボール弁、圧力損失が少ない仕切り弁、逆流が生じたときに途中で食い止める逆止め弁、狭い場所でも配管できるバタフライ弁などが汎用弁とも呼ばれ、幅広く使われている。また食・医薬品や化学、半導体関連のプラントではダイヤフラム弁も活躍する。
自動弁はバルブが流体の力(自力式)や外部の駆動装置からの指示(他力式)によって自動で開閉する。流体そのものの力を利用して動く自力式自動弁には、身近なものでいうとトイレタンクや圧力鍋などが例に挙げられる。トイレタンクのバルブはタンクの排水・給水を制御するための液位調整弁(ボールタップ)で、工業用ではボイラ設備などで使われる大きなサイズのものもある。
他力式には調整弁と電磁弁がある。調整弁は化学プラントや石油プラントなどのシステム全体を制御する「プロセス制御」の操作端として使われる。センサーから送られてくる情報に応じて開度が自動調節され、常に正しい流量を保っている。
電磁弁は電磁石の力で急速開閉ができるバルブで、配管の緊急遮断または緊急開放を目的としてさまざまな工業分野で使われている。電磁弁と制御機器を組み合わせたシステムは、農業用として自動の灌水(かんすい)や施肥、ビニールハウス内の温度や二酸化炭素(CO2)濃度の制御などにも用いられている。
カーボンニュートラルを実現/省エネ・耐久性・長寿命化—「脱炭素」実現に貢献
カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ、CN)実現に向けて水素社会構築への取り組みが進む中、バルブメーカーでは水素ステーションや水素製造プラント向けの超高圧や極低温環境でも耐えられるバルブや、輸送・貯蔵機器の大型化に対応する大口径バルブ、防爆バルブなどを各種開発している。また、バルブの省エネルギー性や耐久性を高め、長寿命化による廃棄物削減などでCN実現に貢献する。
日本ハイドロパックはマイナス250度C級の超低温、100メガパスカル以上の高圧の液体の流量を高精度に制御できるバルブを4月に発売した。液体水素が扱えるバルブとして次世代の水素燃料用設備などに向けて売り込む。液体窒素用などの他用途も開拓する。
キッツグループは98メガパスカルの超高圧水素用バルブやマイナス253度Cの液化水素用バルブ、水素パッケージユニットなど幅広くラインアップ。事業領域を水素サプライチェーン(供給網)全域に拡大する戦略を掲げている。
8月にはキッツがFCyFINE PLUS(エフシーファインプラス)などと共同で環境省の公募事業「令和7年度コスト競争力強化を図る再エネ等由来水素サプライチェーンモデル構築・FS事業(一次公募)」に採択された。山梨県内でのグリーン水素の普及に向けて小口需要家の創出と効率的な輸送方法の調査に取り組む。
キッツは今回の事業でFCyFINE PLUSの会員企業と連携し、工場などでの水素活用による脱炭素化の可能性を調べる。また熱需要以外でも小口需要家の創出とグリーン水素の効率的な輸送方法を検討する。
生産額、最高更新/昨年度8%増5735億円
日本バルブ工業会のまとめによると、2024年度(24年4月—25年3月)のバルブの生産額は23年度比8・2%増の5735億円で過去最高となった。輸出額は前年度比微増の6211億円、輸入額は同6・5%増の3819億円となっている。
生産額は過去最高額になったものの、生産重量は3年連続減少、生産数量は前年度比微増にとどまっている。このため原材料高騰などに伴う、製品の値上げが生産額上昇に影響していることがうかがえる。なお、生産額は経済産業省の鉄鋼・非鉄金属・金属製品統計、輸出入額は貿易統計に基づいている。生産額と輸出入額とは統計の品目区分が異なるため、単純に比較はできない。
バルブ生産額を品種別にみると自動調整弁が1792億円と最も多く、次いでステンレス弁が1659億円、給排水栓類が1130億円となっており、上位3品目で約8割を占める。ステンレス弁は15年と比べて2・4倍に成長しており、高機能・高付加価値製品へのニーズ増を表している。
若手技術者を育成/研修会セミナー バルブ工業会が開催
日本バルブ工業会は会員企業に行った人財育成に関するアンケートで、特に関心の高かった分野について若手社員向けの研修会「バルブ塾」を実施している。10月と12月には「樹脂・ゴム」「品質管理」について開催する。樹脂・ゴムは基礎編が10月28日(申し込み締め切り10月10日)、実践編が12月10日(同11月21日)。品質管理は基礎編1が10月29日(同10月10日)、基礎編2が12月9日(同11月21日)。
2月に開催したユーザー向けのオンラインセミナー「火力発電用バルブの基礎とトラブル予防」の動画は、動画投稿サイト「ユーチューブ」に公開している。バルブの取り扱い経験が浅い人を対象として、火力発電プロセスで使われているバルブの基本的な構造と注意事項、トラブル事例を会員メーカー技術者がわかりやすく説明している。
INCHEM TOKYO/17日開幕
化学製造プロセスを中心に、要素技術やエンジニアリング技術などが一堂に会す「INCHEM TOKYO2025」(化学工学会、日本能率協会主催)が17日から19日までの3日間、東京・有明の東京ビッグサイトで開催される。バルブやポンプ、アクチュエーター、コンプレッサーなどの「回転機械・配管」ゾーンが設けられている。
オンライン展はすでにスタートしており、10月31日まで。
また同期間、千葉市美浜区の幕張メッセでは「H2&FC EXPO—水素・燃料電池展—」(RX Japan主催)も行われる。水素関連のバルブが出品される。
