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東京工科大学は八王子キャンパス(東京都八王子市)と蒲田キャンパス(同大田区)に合計6学部・4研究科を有し、幅広い学修・研究の環境を提供している。また、産学連携にも積極的に取り組み、学内には実践研究連携センターを設置し、企業をはじめ社会と連携した研究活動を進めている。さらに、2023年には八王子キャンパスにデジタルツインセンター(DTC)を立ち上げ、最先端技術を活用した教育・研究活動を外部企業とともに推進するほか、24年4月には新たに四つの研究センターを誕生させるなど、研究力を一層強化。これらの取り組みを通じて、技術革新や社会課題の解決に貢献できる人材育成に取り組んでいる。
デジタルツイン技術の発展と人材の育成
【執筆】東京工科大学コンピュータサイエンス学部 教授 生野 壮一郎
デジタルツイン メディアコンテンツに広がる
デジタルツインとは物理的な環境や設備をデジタル空間に複製し、リアルタイムで状況を把握したり、未来の予測を可能にしたりする技術である。この技術は、従来の製造業やエンジニアリングだけでなく、メタバース(仮想空間)、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)といったメディアコンテンツ分野にも応用が広がっており、社会や産業においてその重要性がますます高まっている。
たとえば、製造業界では設備のメンテナンスや運用最適化に、メディア業界では教育・エンターテイメント、また医療分野のシミュレーションなどにおいて多様な活用が期待されている。
全国初、専門組織
このように多分野にわたるデジタルツイン技術の発展と、それを支える人材の育成は急務であり、その重要性を鑑みて、東京工科大学は23年6月にDTCを設立した。特に、デジタルツインに関する専用の組織を大学に設置するのは全国でも初の試みであり、大学としてこの分野をけん引することを使命としている。学術と産業の双方に貢献するこの取り組みは、時代の要請に応えるものであり、その責任と意義を強く認識している。
DTCでは開設当初から、メディアコンテンツや産業界の第一線で活躍する技術者を客員教員として迎え、最先端の技術を学生に伝える取り組みを行っている。産業界の実務者による講義は、学生にとって理論を超えた実践的な知識やスキルを学ぶ貴重な機会として重要視している。また、急速に進化するデジタルツイン技術に対応するため、現場の知見を共有し、学生が最新の技術や業界の動向をリアルタイムで学べる環境を整えている。
さらに、DTCでは今年度より「東京工科大学デジタルツインセミナー」を定期的に開催し、企業の専門家を講師として招き、学生に向けて最新技術や業界動向に関する講演を提供している。これにより、学生は産業界と直接つながり、実践的な学びを深めることができ、自らのキャリアについて具体的なビジョンを形成する機会を得ている。
即戦力養成 エヌビディアと実践スキル
また、DTCは23年9月に米半導体大手エヌビディアの日本法人エヌビディア合同会社との学術協定を締結し、エヌビディア学生アンバサダープログラムを開始している。このプログラムでは、エヌビディア・オムニバースやエヌビディア・ネモといったプラットフォーム基盤を活用したトレーニングを通じ、学生が最新のデジタルツイン技術に触れ、実践的なスキルを磨く機会を提供している。
11月30日にはDTCで第2回目のワークショップを開催予定であり、学生が実際のプロジェクトを通じてスキルを高めることを目指している。
課題対応力
大学と産業界の連携は、特にデジタル変革(DX)や人工知能(AI)人材の育成において重要である。大学ではスキルや技術の基礎トレーニングが可能だが、リアルな大規模データを持つことは難しいため、企業との連携が不可欠である。企業の協力により大学は最新の現場データや実務的な知識を取り入れることで、実社会に即した教育を実現できる。学生は、こうしたデータや教育を通じて、実社会で直面する課題に対応する力を養い、即戦力となる人材へと成長していく。
未来の教育環境
DTCでは、東京工科大学としてDXやAIに対応できる次世代の人材育成を積極的に進めている。産業界と大学が一体となり、急速に進化する社会や技術に適応できる人材を育てることは使命である。デジタルツイン技術やデジタルコンテンツ分野の教育を通じ、東京工科大学は未来を見据えた先端の教育環境を提供し続けていく。