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伝動ベルト(2024年2月)
伝動ベルトは動力伝達の役割を担い、自動車や2輪車、産業機械、農業機械、情報関連機器など、その使用先は幅広い。伝動ベルトメーカーでは効率化と人手不足による自動化を追求する製造現場のニーズに応え、産業機械向けに高負荷対応ベルトの提供を推進。併せて自動化とリンクする産業用ロボット用途への取り組みにも注力している。
高負荷対応ベルト提供
伝動ベルトには摩擦伝動とかみ合い伝動の二つのタイプがある。摩擦伝動はベルトとプーリーの摩擦力で動力を伝える。平ベルト、Vベルト、Vリブドベルトなどがある。このうちVベルトは台形の断面を持つベルトで、V形の溝のあるプーリーに巻いて動力を伝達する。平ベルトより接触面積が大きく、すべりにくく、伝動能力が高い。
かみ合い伝動はベルトとプーリーにある歯形がかみ合って動力を伝える。歯付ベルト(タイミングベルト)がこれにあたり、スリップが少なく、正確な位置決めなどに適している。
伝動ベルトメーカーではこのうち、産業機械向けの歯付ベルトで、高負荷対応のベルト提供を追求している。射出成形機やプレス機械などでの高出力化に応えるため、高剛性の構成部材などを使用した高負荷対応ベルトなどを開発、製品化している。高い伝動容量により、ベルト幅を狭くできるコンパクトな設計も可能となる。
これと併せてメーカーの中には、自動化需要とリンクする産業ロボット向けの取り込みにも力を注いでいる。高負荷、高耐久をはじめ、高精度位置決めや、急加速・急停止の性能など、ロボットの駆動条件に適したベルト開発を進めている。
三ツ星ベルトでは、垂直多関節ロボットや水平多関節(スカラ)ロボットの駆動に特化したタイミングベルトを近く発売する。「メガトルクGⅡ」シリーズの3ミリ、5ミリメートルピッチの小型向け2タイプ。
カーボン心線、特殊配合のゴムを採用することにより、ベルトの伸びを抑制し、歯飛びを防いで高負荷伝動を可能にした。従来製品「スーパートルク」に比べて伝動容量を3ミリピッチで2・0倍、5ミリピッチで2・6倍それぞれ向上させた。
これによりベルト幅をさらに狭くすることができ、装置設計のコンパクト化、装置の軽量化に寄与。ベルトの幅狭化による騒音低減の効果もある。
ロボ駆動用 メリット訴求
同社は2023年11―12月に東京都内で開催された「2023国際ロボット展」にも出展し、発売予定の開発ベルトを紹介。今後、ロボット駆動に適したタイミングベルトのメリットを訴求していく予定だ。
日本ロボット工業会が発表した23年の産業用ロボットの年間受注額(会員ベース)は前年比24・3%減の7237億円で、4年ぶりの減少。前年の22年の受注額(同)が過去最高(9558億円)となるなど、堅調に推移してきたが、世界経済を覆う各種リスクによる設備投資の先送りなどが影響した。ただ、生産性向上と人手不足対策などから自動化ニーズは継続的に高いとみられ、産業用ロボット市場に向けた伝動ベルトの採用促進を図るメーカー各社の今後の展開が注目される。