-
業種・地域から探す
続きの記事
富山県産業界
新領域を開拓 培ってきた経験・ノウハウを生かす
富山県の企業は、培ってきた経験やノウハウ、自社の強みを生かし、新たなフィールドを開拓する。次の成長への足がかりとして、新たな製品開発や事業展開を積極的に進める。
ニーズ変化とらえ、中国販売強化
-
山東省済南市に新設した販社「北村精密机械(山東)有限公司」
キタムラ機械(富山県高岡市)は、中国に販売会社を設立し、6月12日に営業を開始した。同国内で販売している高精度マシニングセンター(MC)の販売強化が狙い。既存のユーザーを中心に、より高い加工精度が求められる半導体製造装置関連や医療機器関連など、高精度MCの特徴が生きる分野の需要を取り込む。初年度6億円の売り上げを目指す。
新会社の「北村精密机械(山東省)有限公司」は、キタムラ機械にとって7カ所目の海外拠点。アジアでは2022年にテクニカルセンターを開設したシンガポール以来、2カ国目となる。
中国政府が自国のみで最先端機器を作れる体制を目指していることもあり、工作機械には量より質を求める傾向が同国内で強くなっている。そのため同社は、高精度MCの需要が今後増えると考え、販社の設立に踏み切った。
新たな販売会社は山東省の済南市に設立され、現地採用の担当者20人でスタートした。敷地面積約6000平方メートルの中に営業部門とカスタマーサポートセンターを設置。保守部品の自動倉庫も備えており、顧客への迅速なアフターサービスにも対応できる。
同社はこれまでも中国で現地の代理店数社を通じ、販売と保守に当たってきた。今回の販社設立で、メーカーによる直接営業とサービスサポート体制を確立。ユーザーのニーズを的確に把握して満足度を高め、販売拡大につなげる。
自社にしかできない「こと」に注力
-
溶接後の「焼け」の範囲や色の判別から経路生成、レーザー照射までを自動で行う
スギノマシン(富山県滑川市)は、26年に創業90周年を迎える。このタイミングで杉野岳氏が新社長に就任した。経営方針として「必然経営」を掲げ、「スギノマシンにしかできない」と言われる技術やサービス、製品を突き詰める。特に人不足が深刻な日本社会で最も必要とされる「自動化技術」の開発に力をいれる。
このほど、溶接後に発生する「焼け」をレーザーで除去するシステムを開発、発売した。同社が培ってきた独自の画像処理技術とロボット制御技術、AI(人工知能)を活用。対象範囲や色の判別からロボットの経路生成、レーザー照射までを自動で行う。深刻化する溶接・板金現場の労働力不足解消につながる手段として提案する。
新開発の「レーザー焼け取りロボットシステム」は、産業用3次元(3D)カメラで加工対象物(ワーク)の形状や「焼け」の範囲、色の濃淡を捉え、画像処理ソフトで判別。それを基にレーザーのパラメーターを最適化し、自社製ロボットシミュレーションソフト「CROROROS(クロロロス)」がレーザー照射に最適なロボットの経路を生成。レーザー焼け取りまでを自動で実行する。人による事前プログラミング作業を大幅に削減でき、省人化と精度向上の両方を実現する。
100ワットのファイバーレーザー発振器を使用。6軸を持つ自社製産業用ロボットの先端にレーザーを照射するガルバノヘッドを搭載。集塵装置やレーザー遮光ブースといった付帯設備も提供する。
ステンレス鋼(SUS)や冷間圧延鋼板(SPCC)などの素材に対応し、類似形状品や多品種の板金加工ラインにも適応できる。錆や黒皮、被膜の除去にも使用が可能だ。
より付加価値のある製品を提供
-
新機種の「TJ100GLⅡ」は、パイプの切断可能径が直径130ミリメートル
津根精機(同富山市)は、全自動丸鋸切断機「TJ100GL」を機能改良した機種を発売した。パイプの切断能力を向上させつつ、機械各部を省エネルギー化。開口部の構造を変更し、使い勝手を高めた。消費税抜きの価格は1650万円。必要な機能のみを厳選して搭載したことで従来機よりも価格を抑えた。年間80台の販売を目指す。
新機種の「TJ100GLⅡ=写真」は、パイプの切断可能径が直径130ミリメートル。従来機は同124ミリメートルだったが、上位機種と同等まで高めた。
また、ワークの取り出しや可動部のメンテナンスを行う際に開閉するドアの構造を変更。上に上げる方式から横にスライドする方式に変更し、使いやすくした。加えて、同機を構成する部品・機器を省エネ対応製品にすることで、全体のエネルギー消費量も削減した。
一方で必要な機能のみを搭載し、それ以外はオプションとし、スリム化を図ることで従来機よりも低価格を実現した。自動車部品や鋼材など生産現場での利用を想定する。
新たな市場を開拓
-
出力電力100ワットの「CXLA100F(左)」と同150ワットの「同150F(右)」
コーセルは新ブランド「COSELSYNC.(コーセルシンク)」の第1弾として、医療機器用ACアダプター「CXLAシリーズ」を発売した。医療機器だけでなく、工場自動化(FA)機器や分析機器なども含めた幅広い展開を見込み、2028年に年間4億円の売上高を目指す。
出力電力100ワットの「CXLA100F=写真左」と同150ワットの「同150F=同右」を用意。医用電気機器用の安全規格「IEC60601―1」と、情報通信機器や一般産業機器に必要とされる安全規格「同62368―1」の両方に対応する。入出力用のインターフェースも豊富で、「同60320」に対応したACインレットタイプ3種類、出力プラグタイプ2種類を備える。
省エネルギー設計で、米エネルギー省(DOE)の電源変換効率に関する規制「DOEレベルⅥ」に対応。無負荷時の消費電力は0・15ワット未満。マイナス30度―プラス70度Cの広い温度範囲で使用できる。
同社の製品は内部に組み込むタイプが主流で、外部から電源供給する製品はなかった。近年、小型装置に使用されるACアダプター市場において、医療と情報通信・一般産業機器の安全規格に対応した高品質かつ信頼性の高い製品が求められており、同シリーズを開発した。
