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6月10日 時の記念日
6月10日は「時の記念日」だ。筆者の勤務する明石市立天文科学館は1960年の時の記念日に、日本標準時子午線上に開館した。当館のように〝時〟に関係するところでは、時の記念日は特別な日で、一種のお祭りムードになる。
時間を有意義に使うことは人生を豊かにする―「時の記念日」に寄せて
天皇の水時計
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明石市立天文科学館 館長/山口大学時間学研究所 客員教授 井上 毅
時の記念日の由来は、671年6月10日、天智天皇が水時計(漏刻)を使って日本で初めての時を知らせた故事にちなんでいる。
制定されたのは1920年。国立科学博物館の前身である東京教育博物館で、時間をテーマにした特別展「時」展覧会が開催されたことがきっかけだった。
意外かもしれないが、当時、日本人は今のように時間を気にする国民ではなかったようだ。「秒」など意識することもなかった。時計は高級品で、特に秒まで正確に計測できるものは見たこともない人がほとんどだった。
展覧会では、珍しい時計や時に関する楽しいパネルとともに「時間を大切に」というスローガンが展示された。「時」を展示するという試みは、近代化の途上であった日本人には、とても興味深いものだった。
「時」展覧会は博物館の特別展としては当時の最高記録となる22万人が来場した。この盛況ぶりを受けて、天智天皇の故事にちなんで、6月10日を時の記念日として事業を行うことになった。
響きの都
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1920年の徒競走の記録(「時」の展覧会で出品された資料より)
第1回の時の記念日では、正午の時報を告げる大砲に合わせて工場の汽笛が鳴り、寺社・教会の鐘が打ち鳴らされた。現代と違って東京といえども普段はとても静かだったが、そのとき東京は「響きの都」になったという。日本で初めて大衆に「秒」を意識させた大イベントになった。私はこれが日本で最初のカウントダウンイベントだったと考えている。日本人は時間を気にする国民と言われるが、そのルーツは時の記念日にある。
それから1世紀、時計の技術は飛躍的に発展した。それに伴い、人々の時間に対する意識も大きく変わった。興味深い資料がある。「時」展覧会で展示された多くの資料の中にある1920年時点での徒競走の記録だ(図)。この資料には、眞殿(谷)三三五、金栗四三など、日本陸上の黎明(れいめい)期に活躍した人たちの名前を見つけることができる。
100m走では、日本記録が「松田常政11秒2/5(11秒4)」、世界記録は「リピンコット10秒3/5(10秒6)」とある。現在の日本記録は山縣亮太選手の9秒95、世界記録はウサイン・ボルト選手の9秒58だから、100年間で約1秒短縮したことになる。
紙一重
興味深いのは記録の最小単位で、5分の1秒、つまり0・2秒刻みの記録になっている。これは当時の計測用時計の精度によるものだ。その後、時計の精度は上がり、0・1秒単位まで計測されるようになった。現在、100m走では100分の1で計測され、勝敗を分ける場合には、1000分の1まで測定し、判定している。
フィジカルやメンタルのわずかな違いが、数字として見えてくるとそこに努力が生まれ、紙一重の勝負を作り出した。
計測技術の向上は、スポーツの進化に大きく貢献しているといっていいだろう。今や「1秒」は「瞬間」ではなく、豊かな「時間」なのだ。
ゆったりと…
一方で、こんな時代だからこそ、意識的にゆったりとした時間を持つことも重要だろう。スポーツの例でいうならば、米メジャーリーグの大谷翔平選手はたっぷり10時間の睡眠をとっているとのこと。濃縮された短い時間のパフォーマンスのためにたっぷり時間をかける。大谷選手は時間の使い方に関しても達人だろう。時間を有意義に使うことは人生を豊かにすることにつながる。あらゆる場所にヒントが転がっている。
時間についてさまざまな観点から研究するのが時間学だ。山口大学には時間学研究所があり、時間学研究の拠点となっている。時の記念日をきっかけに「時間」についてあらためて考えてみてはいかがだろうか。
時計を着ける―所有する喜び
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カシオ計算機 時計BU商品企画部第二企画室リーダー 佐藤貴康氏
我々が正確な時刻を知るために利用する腕時計は、長年ビジネスシーンで欠かせないものだった。近年は携帯電話さえあれば時刻が分かり、腕時計を着けないという選択も増えてきた中で、腕時計に求める価値観が多様化している。カシオ計算機は6月14日、電波ソーラーウオッチ「OCEANUS(オシアナス)」のプレミアムライン「Manta(マンタ)」から新製品「OCW-S7000BV」を発売する。開発を担当した時計BU商品企画部第二企画室リーダーの佐藤貴康氏に開発のこだわりを聞いた。
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―オシアナスが発売20周年を迎えました。
「オシアナスは2004年、世界初となるフルメタルのクロノグラフ電波ソーラーウオッチとして誕生した。コンセプトは〝Elegance,Technology〟。高い機能性と〝青〟にこだわった美しいデザインを追求してきた。若々しく、ポジティブなマインドを持つ人をイメージしたスーツに合う時計を提案している」
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白蝶貝ダイヤル
―20周年限定モデルの特徴は。
「オシアナスの歴史を航海になぞらえ、紺碧(こんぺき)の大海原をモチーフにした。サファイアガラスベゼルの天面に20面カットを施し、白蝶貝ダイヤルを採用したのが特徴。ベゼルは中央の青から上下に黒へと変化するグラデーション蒸着を施し、見る角度によって揺れ動く波のように色調が変化する。ダイヤルは、あえて白蝶貝の模様が際立つ部分を厳選して採用し、海のきらめきを表現した。デュアルカーブサファイアガラスで、薄いながらも立体感を感じられるデザインになっている」
―マンタは薄さを追求しています。
「2019年に基板の片面に部品を集約する薄型高密度実装技術を開発し、部品の薄型化も進め、大幅にモジュール厚を低減した。今回のモデルは電波ソーラークロノグラフでも厚さが9・5mmと薄く、マンタならではの流麗なフォームを表現している。ワイシャツの袖に収まる薄さで、腕にフィットするのがこだわりだ」
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オシアナス・マンタ「OCW-S7000BV」
―機能面も充実しています。
「世界6局の標準電波を受信して時刻を自動修正する。世界27都市(38タイムゾーン、サマータイム自動設定機能付き)と協定世界時(UTC)の時刻表示、ホームタイムの都市入れ替え機能で、海外への出張や旅行でも時間合わせがスムーズ。スマートフォンと連動するアプリケーション『CASIO WATCHES』ではブルートゥース接続で、時刻修正や約300都市のワールドタイム設定も行える」
―世界1200本限定ですが、どのような人に手にしてほしいですか。
「オシアナスは〝青〟の表現方法や微妙なニュアンスにこだわって、シリーズごとにさまざまな表情を見せられるように開発している。既にオシアナスを持っている人も、初めての人も、自己表現のアイテムの一つとして、着ける喜び、所有する喜びを感じてもらいたい」