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新たな挑戦 次代をにらむ東北の企業群―2―
東光鉄工/防水性と浮力性能を両立
東光鉄工(秋田県大館市)のレスキュー飛行ロボット(ドローン)「TSV―RQ1」は、毎秒18メートルの耐風性能を持ち、気密性に優れた2重モノコック構造により防水性と浮力性能を両立した。災害現場での、いち早い情報収集やレスキュー活動に活用できる機体として開発した。
流線形の本体には、天候に左右されず目立つオレンジ色を採用して災害現場での視認性を高めた。機体にはアタッチメント式で四つのオプションパーツが装着できる。正確に現場状況を把握する高感度・赤外線カメラのほか、高輝度発光ダイオード(LED)ライト、避難情報などを伝えるスピーカー、最大で2キログラムまでの荷物を運び投下できるユニットを用意した。
日本地下水開発/地中熱交換井 タジキスタンに
日本地下水開発(山形市)は、タジキスタンでの地中熱ヒートポンプ(GSHP)活用プロジェクトで深さ約100メートルの地中熱交換井の設置に成功した。8月までに2本の同井を設けた。「地球規模課題対応国際科学協力プログラム(サトレップス)」の一環で、同国においては初の地中熱交換井が設置された。
科学技術振興機構(JST)と国際協力機構(JICA)などが国際共同研究全体の研究開発マネジメントを担うサトレップス。研究開発チームに参画する日本地下水開発は、GSHP設置協力を担った。今回のテーマ「地中熱利用による脱炭素化熱エネルギー供給システム」では、タジキスタン側と日本側の研究チームが手を組む。2027年度までの研究協力が組まれる。
梶原電気/製造フロア “見える化”徹底
本社工場を移転、集約し、新工場棟での稼働を始めた梶原電気(仙台市若林区)。8棟に分散していた工場棟を1カ所に集約し、製造フロアの“見える化”を徹底。一足先に稼働した板金と組み立て工程では「すでに生産性が1割以上改善した。新工場での作業に慣れてくれば、もっと良くなる」(梶原功社長)と期待する。また工場棟に搬送口を8カ所も設けたことで、資材や完成品の入出庫も大幅に効率化された。12月半ばには塗装工場も稼働する。
足元では非常用電源制御システムや照明装置などを中心に受注は堅調。移転による生産性向上で旺盛な需要に応じる。さらに本社敷地の空きスペースに工場をもう1棟建設し、2026年をめどに新規事業を立ち上げる計画もある。それまでに現在56人の従業員数を10人程度増やし、熟練工の層を厚くしたいとしている。
トラスト・メカ/後工程の省力化機器に参入
電子機器や自動車部品などの工場向けに、各種組み立て装置を製造するトラスト・メカ(宮城県加美町)が、その後工程の省力化機器にも参入した。第1弾として医療機器メーカーに自動袋詰め包装機を納入。これを皮切りに、手作業に依存する工程を省人化したいというニーズに積極的に応えていく方針だ。
第1弾の装置は医療機器の消耗品を一定量ずつビニール袋に挿入し封止していくもの。袋をつかんで開くユニットは袋詰め包装機を手がけるハルミック(同大和町)から提供を受けた。これに熱圧着で袋を封止する工程や、センサーで部品の数を計量し、袋に投入する工程などを自前で設計し、完成品に仕上げた。今後はさらにその後工程となる箱詰め装置や、食料品の袋詰めなどへの展開を計画している。
キョーユー/技能五輪 次回は入賞目指す
金属部品加工を手がけるキョーユー(宮城県美里町)は、「第61回技能五輪全国大会」に選手を送り出した。出場したのは10月に先行してエツキ(山形県村山市)を会場に開かれた「フライス盤」職種競技。2年連続の出場を果たした蛯名謙仁さん。昨年の反省点も踏まえ、この1年、技能を磨いた。課題を製作するための競技時間は5時間。蛯名さんは「時間が足りなかった。来年に向けて技を磨く」と振り返る。次回大会での入賞を目指す構えだ。
機械系職種は例年、大手メーカーの選手がしのぎを削る。中小企業からの出場は数少ない。地域の中小企業が技能五輪に挑戦する若者へのメッセージは大きい。畑中得實社長は「技能五輪に挑戦できる会社が地元にある。地域で活躍できるモノづくり人材を一段と育てていきたい」としている。
白謙蒲鉾店/防災と事業継続 取り組み強化
大正元年(1912年)創業という100年企業の白謙蒲鉾店(宮城県石巻市)。数多くの試練を乗り越えてきた中、直近では東日本大震災での工場被災を契機に防災と事業継続への取り組みを強化。2015年に日本政策投資銀行の「DBJ BCM格付」を取得して以降、23年11月までに最高ランク格付けを3度も獲得するなど外部からも高い評価を得ている。
具体的には、食品の安全性の観点から、公的機関による放射性測定を自主的に行い、科学データを裏付けとした品質管理を徹底。また、過去の被災経験から、経営層自ら取引先と事業継続に向けたリスク情報を共有。さらに自然災害や食品事故などに適切に対処できるよう、教育や演習を頻繁に行い、従業員の自律的な判断を促すなど、防災と事業継続に「自分ごと」として取り組む組織風土を醸成している。