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新たな挑戦 次代をにらむ東北の企業群―1―
緩やかな持ち直しの動きに弱さも感じるが、来年以降の半導体関連の回復の動きなどに期待感もある東北地域の景況。人手不足やインフレなど企業を取り巻く環境には不透明感もあるが、新たな挑戦は東北各地で取り組まれている。新たな一歩を踏み出し、次代をにらむ東北の企業群の動きを探った。
ティ・ディ・シー/金属箔の精密研磨 能力増強
「超精密研磨加工」を掲げるティ・ディ・シー(TDC、宮城県利府町)が2024年3月の稼働を目指し、新工場を建設中。金属箔(はく)の精密研磨など新分野を中心に生産能力を約2割拡充する。約3億円を投資し、延べ床面積866平方メートルの工場棟を建て、最新鋭の研磨装置やレーザー加工機などを導入。研究開発案件だった金属箔の精密研磨が量産段階へ移行するのに合わせ、その能力増強を図る。
TDCは研究開発用途を中心に、大量生産品と一線を画した少量多品種の超精密加工に特化。金属箔もごく少量の受託加工に応じてきた。ここに来て、次世代半導体や超電導などの最先端分野で受注量が一定数に達し、今後も数量の伸びが見込めると判断。新工場完成を機により一層の高付加価化を目指す。
青山精工/MCなど最新鋭設備を導入
超精密金属加工を得意とする青山精工(秋田県鹿角市)。近年はチタンやステンレス、特殊鋼など加工時間を要する難削材や多数の工程が必要な精密部品の受注が増えており、これに対応するべく、継続的に設備投資を断行している。この夏には形彫り放電加工機、マシニングセンター(MC)と相次ぎ最新鋭機を導入。半導体関連など高付加価値分野の生産能力を高めた。
具体的には、それまでの放電加工機ではワークサイズや製造能力が不足し、納期遅れなどの懸念もあったことから、工具の自動交換装置付きの最新鋭機を導入。加工スピードをおおむね2倍に速められるとしている。MCもさらなる微細加工を実現するとともに、夜間・休日稼働も可能となり、更新前の機種に比べ、生産額を2・3倍に増やせると見ている。
伊藤製作所/医療機器向け部品加工 開拓
伊藤製作所(山形市)は、自動車向け各種部品、建設機械関連部品、半導体製造装置関連部品などの精密切削加工、組み立てを手がけている。半導体関連に関しては、「昨年の10月をピークにそれ以降は下降線をたどっている」(伊藤明彦社長)と現状を見つめている。ただ2008年のリーマン・ショック時に比べれば「まだ良い」(同)という。国内への半導体関連投資は、24年以降に上向く期待感もあり、先行きを注視している。
自動車関連では、新たな引き合いもある。受注が確定すれば新たな設備投資も必要となる見込み。24年からは課題としている新規分野となる医療機器向け部品の開拓を創意工夫して進める構えだ。工場の生産管理も新たな知恵を絞っていく方向で動いている。
馬渕工業所/監視システム 再生エネで稼働
馬渕工業所(仙台市太白区)の「マブチ・ハイブリッドポールⅡ」は、再生可能エネルギーだけで屋外のシステムを自律型で稼働できるのが最大の特徴だ。ポールに風力発電用の風車と太陽光パネルを取り付け、その電力をリチウムイオン二次電池に蓄電。これに監視カメラや照明、通信装置などを組み合わせ、防犯システムや避難誘導灯、非常用電源として利用できる。
10月末には仙台清掃公社(同宮城野区)に風力発電を除く駐車場監視システムとして納入。再エネのみでカメラ2台の映像を無線LANで送るシステムと防犯灯の電源をまかなう。また、重りとなる石を積めたコンテナを土台とすることで基礎工事を不要とし、移設も簡単にできるよう工夫した。小野寿光社長は「再エネとカメラの組み合わせはあまり例がない。当社は電源のない場所で監視したいという顧客にぴったりのスペックで提供でき、価格のメリットも出せる」と強調する。
岩機ダイカスト工業/MIMで製造 焼結合金 増産
岩機ダイカスト工業(宮城県山元町)は、金属粉末射出成形法(MIM)で製造する焼結合金「モルダロイ」の増産をにらんでいる。医療機器分野の需要拡大が狙い。MIMに特化する小平工場(山元町)敷地内で新工場を計画する。現在、工場建設に着手しており、新棟の完成は2024年7月末を見込む。「来秋には稼働させたい」(斎藤明彦社長)とし、対応を急いでいる。
同社は自動車向けダイカスト部品が主力。現在、MIM事業の売上高に占める割合は20%以下。当面の目標として同20%以上に高めることを目指している。MIMは、高精度・高密度、複雑形状部品の生産に適している。同社では、歯列矯正用の金具や内視鏡部品などの医療機器関連向けを中心に手がけている。
東機工/迅速・柔軟対応で信頼獲得
機械工具商社として1963年に設立した東機工(仙台市若林区)は、工作機械・工具に加え、プラントや製造ライン設備の構築など大型案件を中心に意思決定の速さや柔軟な対応で、多くの顧客の信頼を獲得。現在は東北と北関東に五つの営業所を持つまでに成長している。企業理念「発展性・公共性・人間性」と社是「誰よりも多く、誰よりも早く、誰よりも少しでも多くの仕事を覚えたい。そして仕事を愛し、皆んなの明日の幸せを築きたい。」を軸に事業を堅実に拡大。2023年3月、60周年を迎えた。
22年11月には延べ床面積1000平方メートルの社屋を新築し、本社を移転。広くなった空間を生かし、解放感のある職場環境づくりを推進。従業員のモチベーションアップにつなげている。