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栃木県産業界
栃木県で中小企業のスマートファクトリー化が進んでいる。帳票の電子化や自動化設備の導入で独自の工夫を凝らし、業務を効率化する。県は最大1000万円の「スマートファクトリー実証モデル事業補助金」を実施。2022年度に交付を受けた4社が、栃木県産業技術センター(宇都宮市)で成果発表した。
スマートファクトリー化 中小で進展―実証モデル事業 4社が成果発表
生産日報を電子化 改善にデータ活用
プラスチック射出成形の神戸化成工業(東京都北区、神戸泰社長)は、栃木工場(栃木県下野市)と小山工場(同小山市)で1日52枚手書きする生産日報をタブレットで電子化した。システムに入力し直す重複作業をなくし、蓄積データを改善活動に役立てる。
現在、生産設備の停止ロスが1台あたり年320時間発生しており改善活動で2割減らす。同社担当者は「デジタル化に取り組むはじめの一歩となった」と機運醸成の成果を実感している。
部品リサイクル 出自を見える化
ツルオカ(同小山市、鶴岡正顕社長)は自動車を解体、リサイクルする「オートリサイクル事業部」に、取り出した部品の出自を“見える化”する識別管理基幹システムを導入した。既成のソフトウエアをカスタマイズし、大手自動車メーカーが推進するサーキュラーエコノミー化に対応した。
2次元コードや部品・材料の画像データを駆使し、人工知能(AI)技術を活用した解体方針作成システム、デジタル解体ガイド、部品ダメージ診断への展開も見通す。管理部の堤庸佐部長は「目的でなく手段が準備できた段階」と今後の展開を示唆した。
ワーク取り出し ロボット導入
金属部品加工のマツモトセイコー(同大田原市、松本義則社長)では半導体需要の高まりに伴い、半導体製造装置関連部品の発注が急増。加工対象物(ワーク)を自動で取り外すロボットを導入した。
自社設備に合わせたシステム構築により、限られたスペースで21時間13分の無人運転を実現。傷による不良品はなく、多品種の取り外しも可能なため、作業負担が減った。
松本知之取締役は「プログラムの工夫により想定以上の成果が出た」と振り返る。22年9月に1台目を導入後、23年8月に2台目の投資に踏み切った。今回をモデルケースとして、他の半導体製造装置関連部品や、主力製品である航空機部品にロボットシステムを展開したい考えだ。
プレヒーター 定期点検 自動化
吉澤石灰工業(同佐野市、松原維一郎社長)は三峰鉱山(同栃木市)から採掘した石灰石を焼成し、石灰に加工・販売している。葛生工場(同佐野市)で焼成の余熱工程に使うプレヒーターの定期点検を自動化した。
プレヒーターは格子板に石灰石を載せ加熱するが、腐食により格子板の穴が広がると脱落など設備停止の原因となる。スタッフによる定期点検は作業量の多さや作業環境の過酷さ、点検できる時間が限られることなどが課題だった。
センサーで格子板を自動撮影する仕組みを構築し、AI画像認識技術により劣化具合をランク付けした。AIの正答率は稼働後、96%まで高まった。データは帳票に落とし込み、格子板の在庫管理にも活用している。今後、自社で所有する他4基のプレヒーターにも横展開する。
企業のDX化 実機体験
栃木県はとちぎ産業創造プラザ(宇都宮市)に「とちぎビジネスAIセンター」を設置し、デジタル変革(DX)を検討する企業と先進機器ベンダーのマッチングを進めている。2021年5月に開所し、23年3月までに計2068人が来所した。
実機を体験し、その場で自社の課題や機器導入についてセンター内のマネージャーと相談できる。センターでは企業訪問によるヒアリングや、県内支援機関との連携で企業のDX化を支援している。
2年で企業の相談対応を127社に実施。先進機器ベンダーなどとのマッチングは54社に行い、10社が人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)ソリューションを導入した。ワークショップを通じ13社の人材育成計画策定を支援した。