-
業種・地域から探す
4月8日「タイヤの日」 タイヤ産業
新車用2%増 3383万本 今年
自動車タイヤは路面の間に生じる摩擦力で走行や方向を変え、停止を行うだけでなく、内部に充填した空気により振動を吸収するなど、自動車において重要な役割を担い、揺るぎない存在感を持つ。
国内のタイヤ需要は高まりを見せる中、主要メーカーは安心・安全なドライブに向けて、最適なタイヤを届けている。
日本自動車タイヤ協会(JATMA)が2023年12月に発表した「2024年自動車タイヤ国内需要見通し」によると、24年の新車用タイヤの出荷本数は、乗用車用が前年比2%増の3383万8000本を予想する。
24年の市販用出荷本数では乗用車の夏用タイヤが同横ばいの3121万7000本、冬用タイヤは同横ばいの1536万3000本を予想している。
サイズごと最適化
横浜ゴムは低燃費性能やウエット性能、耐摩耗性のバランスに配慮したコンパウンドを採用し、静音性が持続するプレミアムコンフォートタイヤ「ADVAN dB(アドバン デシベル)V553」を、2月に発売した。接地面(トレッド)のパターンを新設計し、構造をタイヤサイズごとに最適化。SUVやセダン、軽自動車市場に提案する。
オールシーズン好調
住友ゴム工業はDUNLOP(ダンロップ)のオールシーズンタイヤが東京・名古屋・大阪などの都心を中心に突然の天候変化でも走れる安心感というユーザーニーズに応え、好調に推移。また近年増えているSUV車両には静粛性とウエット性能に秀でた「VEURO VE304(ビューロ ブイイーサンマルヨン)」と操縦安定性に優れた「GRANDTREK PT5(グラントレック ピーティーファイブ)」が車両特性にマッチし、ユーザーから選ばれている。
ウェットグリップ
TOYO TIREは低燃費性能や濡れた路面での制動力を示すウエットグリップの性能を高めたタイヤ「PROXES CF3(プロクセス シーエフスリー)」を1月から順次発売。路面と接触するトレッド部の溝や切り込みの非対称なパターンを組み合わせ、制動性と操縦安定性を高め、静粛性も確保した。
設計基盤初採用
ブリヂストンは24年夏タイヤ商戦に向けてREGNO GRーⅩⅢ(レグノ ジーアールクロススリー」に注力する。商品設計基盤技術「ENLITEN(エンライトン)」を国内市販用乗用車向けタイヤとして初採用。レーシングドライバーの立川祐路氏との共同開発による心地良い走行性能を、国産車はもちろんのこと、輸入車や電動車(xEV)といった幅広い車種に訴求する。
最適なタイヤで安心・安全なドライブ
環境負荷低減に挑む タイヤテクノロジー
タイヤメーカーが高付加価値商品群拡充のEVや、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)で求められる環境負荷低減に向けた製品の研究開発にも取り組んでいる。車の動力源や使われ方が変わっても、「路面に接している唯一の部品」というタイヤの存在は揺るがない。その価値を最大化するため各社が技術力を高めている。
交換時期通知
横浜ゴムはアルプスアルパインと共同開発中のタイヤ内面貼り付け型センサーから得られた波形を解析し、タイヤの摩耗状況を検知する技術を開発した。摩耗したタイヤの交換時期を運転手や車両管理者にクラウド経由で通知し、タイヤ交換の効率向上やメンテナンスの負荷低減につなげる。
性能変化
住友ゴム工業はセンサーレスのセンシング技術「センシングコア」、路面状況に応じて性能がスイッチするゴム技術「アクティブトレッド」など独自技術を強みとする。センシングコアは24年中に完成車メーカーの新車に搭載予定。アクティブトレッドを搭載したオールシーズンタイヤは秋に発売を予定している。
環境素材90%
TOYO TIREは原料の90%に環境負荷低減に寄与すると認められる「サステナブル(持続可能)素材」を採用した次世代タイヤを開発した。同社が実用化した過去最高のサステナブル素材使用比率は50%で、大幅に上回る。製品における同比率を30年40%、50年100%にする目標を掲げており、同タイヤを達成への布石とする。
薄く・軽く・円く
ブリヂストンはモビリティーの変化による複雑化、多様化するニーズに注視。タイヤを「薄く・軽く・円く」することを基本とし、従来のタイヤの基本性能を全て向上させた上で、タイヤに求められる多様な性能をユーザーごと、モビリティーごとにカスタマイズする商品設計基盤技術エンライトンを展開、対応していく。
日本自動車タイヤ協会会長 山石昌孝氏に聞く
「安心・環境」同時に達成
-

JATMA会長(横浜ゴム会長)山石 昌孝氏
日本自動車タイヤ協会(JATMA)は2000年より4月8日を「タイヤの日」と制定した。ドライバーに自動車タイヤへの関心を喚起し、タイヤの正しい使用方法を啓発することで、交通安全の対策に取り組んでいる。山石昌孝JATMA会長(横浜ゴム会長)に、空気圧点検など日常の点検や整備の大切さについて聞いた。
-24年度のJATMAの方向性についてお教えてください。
「世界は政治的にも経済的にも激動の中にあり、タイヤ産業もその渦中にある。さらに、自動車という商品それ自体が社会的、技術的な変革の中に置かれている状況だ。そうした中にあっても、自動車はモビリティーの主役であり、自動車タイヤがこれを支える最重要な商品の一つであるとの位置付けが変わることはない。同時に『安全』と『環境』がタイヤに求められる性能であり、我々にとっての達成すべき目標であることも変わりはない」
-きょうはタイヤの日です。
「タイヤの日は特に『安全』に関し、一般消費者にその重要性を訴求する機会として、春の全国交通安全運動が実施される『4月』の中でもタイヤをイメージさせる『8(輪)』を選び、4月8日をタイヤの日と定めた。タイヤの日を前後して、タイヤ空気圧点検などの安全啓発活動を実施している」
空気圧、月1度点検/LCCO2算定指針 策定
-適正な空気圧点検の必要性と注意喚起が求められています。
「自動車の重さを支え、駆動力と制動力を路面に伝えるとともに、路面からの振動を吸収し自動車の方向を維持・転換するタイヤは、非常に重要な役割を担っている。空気圧を適正に保つことは、タイヤのこうした役割を果たす上で必須の条件である。しかしながら、我々の調査では4台に1台の割合で、空気圧が不足しているとの結果を得ている」
「空気圧の不足はタイヤが偏って擦り減る偏摩耗や、タイヤのサイドウォール部の屈曲変形による異常発熱の原因となるおそれがある。この結果、タイヤがバーストする可能性も否定できない。このため、常にタイヤの空気圧に意識を払い、月に一度は空気圧の点検を行っていただくようお願いしたい。もちろん、傷や異物の刺突がないかといったタイヤ全体のチェックも、重要。これらの存在は、空気漏れやバーストの可能性を高める要因となる」
-タイヤにはスリップサインが刻印されています。
「これに加えて、路面と接するタイヤのトレッド面にも注意を払ってほしい。トレッド面には溝が施されている。タイヤが擦り減って溝が浅くなると濡れた路面の走行に際して、トレッド面の排水能力が低下する。そうなるとハイドロプレーニング(タイヤの水上滑走)現象が発生しやすく、この状態は極めて危険な状態。使用中のタイヤの溝の深さが、法令規定の1・6ミリメートル(使用限度)に達していないことを確認してほしい」
-23年に開催されました展示会のジャパンモビリティーショーでは「環境」にフォーカスした提案がなされました。
「タイヤの製造から使用、廃棄に至るまでのライフサイクルを通じてタイヤに起因する環境負荷を極力減少させること、これが『環境』面に視点を置く我々の目標の一つ。耐摩耗性の向上などの技術開発に加え、ライフサイクル(LC)二酸化炭素(CO2)について『タイヤのLCCO2算定ガイドラインの策定』や、『低燃費タイヤ等ラベリング制度の活用』などさまざまな取り組みを通して、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の達成を目指していく」

