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雷害防止対策
1年のうちで落雷が最も多く発生する時期が7―8月だ。落雷の被害(雷害)は直接落ちた物的損傷だけでなく、落雷地点の周囲に発生した“雷サージ”と呼ばれる過電圧・過電流によって、電子機器が壊れたりデータを損失したりする恐れがある。雷サージによって、気づかないうちに被害に遭っていることは少なくない。デジタル変革(DX)や自動化が進む生産現場で1カ所でも雷害を受ければ、生産・物流ライン全体が停止して大きな機会損失につながる場合がある。基幹的業務が中断しない、中断しても早期に再開するための雷害防止対策が重要になっている。
デジタル社会守る
正しく設置、適切に管理
雷害は大きく「直撃雷」と「誘導雷」に分けられる。直撃雷は一般的に言われる落雷で、建築物や樹木、人などの物体に直接落ちる現象。建物の損傷や火災の原因になり、人命を奪う危険性もある。
建築基準法によって高さ20メートル以上の工作物・建築物には避雷設備を設置することが義務付けられている。しかし20メートル以下の建物でも落雷の可能性はあるため、自主的に設置することが望ましい。
国土交通省は近年、建築物の落害は建物屋上の突角部分のものが大半を占めていることに対応するため、避雷設備告示に関し、屋上突角部への保護方法が規定された「JIS Z9290―3―2019」に規定する外部雷保護システムに適合する構造にする改正を行った。2025年4月に施行され、26年3月までが経過措置期間となっていた。適合する構造となっていない場合は、既存不適格建築物となる。
一方、雷害の多くは誘導雷によるものと言われている。誘導雷は落雷が起こった周囲の電線などに“雷サージ”と呼ばれる過電圧・過電流が発生すること。雷サージが電源線や通信線などを経由して建物内部に侵入して、電機・電子機器や通信機器の破損、データ損失を引き起こす。
その影響範囲は広く、雷鳴が聞こえる範囲には危険性があるといわれている。機器の内部が損傷するため、被害に遭っていることにすぐに気づけない場合も多い。近年は電子機器が高性能化、小型化、省電力化によって低電圧で動作するため、低いレベルの雷サージでも故障しやすい。また電源、通信、回路のネットワーク化で雷の侵入経路が多様化し、雷被害が増加している。
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分離器を内蔵して省スペース化や配線工数の低減を図るSPDが提案されている(JECA FAIR2026、上=昭電ブース、下=音羽電機工業ブース)
対策には通信線を光ファイバーにするなど絶縁化する方法のほかに、雷サージの侵入経路ごとに避雷器(サージ防護デバイス=SPD)などを取り付ける方法が採用されている。
SPDは電源用、通信・信号用があり、雷の電流を大地に流すとともに雷の異常電圧を電子機器の耐電圧以下に抑えて故障を防止する。保護対象機器や回線系統ごとに専用のSPDがラインアップされており、想定する雷撃や接続回路、機能などによりクラス・種類を選定する。
耐電圧が弱い機器やサーバーなど、より重要な機器に対しては、SPDよりも保護性能の高い耐雷トランス(サージ・アイソレーション・トランス=SIT)で対策を行う。雷の異常電圧を遮断して電子機器を保護する。
機器の故障は電位差が発生するために起こる。電流は電位の高いところから低いところへ流れるため、建物内のすべての金属導体を共通に接続し、等電位ボンディングを図ることも重要だ。別接地とする場合には接地間用SPDを用いて等電位化する必要がある。
SPDを設置しているにもかかわらず、適切に設置されていないことで被害に遭うケースも少なくないため、設置の際は施設の設計者や雷害対策のコンサルタントなどに相談することが望ましい。また、SPDやSITは保護する機器の手前に取り付けて侵入する雷サージを処理し続ける消耗品のため、日頃のメンテナンスや定期的な更新が欠かせない。
近年は、分離器を内蔵して省スペース化と配線工数の低減を図ったSPDや、劣化が一目で分かるSPDが販売されている。また、遠隔で劣化を監視する製品や、落雷の検知時刻を記録して見える化する製品なども開発されている。住宅用途や小規模事業者向けに、電気工事の資格がなくても誰でも簡単に高性能な対策を施せるSPDもある。被害の最小化に向け、“正しく設置して適切な管理をする”ことが重要だ。
風力発電設備の技術基準解釈見直し
秋田県男鹿市で4月に発生した風力発電設備の損傷事故は、落雷が原因である可能性が高いとされた。これを受け、経済産業省は追加の安全対策を講じる。
風力発電所には落雷を検出する装置などを導入する必要がある。今回の事故では発生前に受変電設備の修理を実施したことで、落雷を一定期間検出できていなかったという。このため、風力発電設備の技術基準に関する解釈を見直す。
改正案では落雷検出装置にとどまらず、監視カメラや気象データの活用を通じて、落雷の常時把握も促していくことが明記された。それでも風車への落雷の有無を把握できなかった場合は、内視鏡によるブレード内部の点検など、損傷の確認を求める。
