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雷害防止対策技術
落雷の被害(雷害)の多くは8月に集中しているが、日本海側では冬季にも多くなっている。雷害は直接落ちた物的損傷だけでなく、落雷地点の周囲に発生した「雷サージ」と呼ばれる過電圧・過電流によって、知らないうちに電子機器の損傷やデータ損失などを招く恐れがある。通信網が高速化しAI(人工知能)などの活用が進む現代社会では、雷害の大きさ次第で事業の存続にも影響が及ぶ。雷害防止対策はますます重要になっている。
直撃雷・誘導雷 デジタル社会守る
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音羽電機工業は幅広いラインアップで雷害対策を後押しする(「JECA FAIR2025」 音羽電機工業ブース)
雷害は大きく二つに分けられる。一つは建築物や樹木、人などの物体に直接落ちる「直撃雷」で、もう一つは落雷が起こった周囲の電線などに“雷サージ”と呼ばれる過電圧・過電流が発生して機器などを破壊する「誘導雷」だ。直撃雷は一般的に言われる落雷で、建物の損傷や火災の原因になり、人命を奪う危険性もある。建築基準法によって高さ20メートル以上の工作物・建築物には避雷設備を設置することが義務付けられているが、20メートル以下の建物でも落雷の可能性はあり、自主的に設置することが求められる。
一方、誘導雷は電機・電子機器や通信機器の破損、誤動作、データ損失などを引き起こし、気づかないうちに被害に遭っていることも少なくない。雷害の多くは誘導雷によるものとされ、建物に避雷設備を設けるだけでは不十分だ。建物内部に侵入する誘導雷の影響範囲は広く、雷鳴が聞こえるエリアには危険性があると言われている。脅威を認識し、備えを徹底することが重要だ。
電子機器に合わせ最適対策
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サンコーシヤは用途別にさまざまなSPDをそろえる(「TECHNO FRONTIER2025」 サンコーシヤブース)
近年は電子機器が高性能化、小型化、省電力化によって低電圧で動作するため、低いレベルの雷サージでも故障しやすくなっている。また電源、通信、回路のネットワーク化で雷の侵入経路も多様化している。
対策には通信線を光ファイバーにするなど絶縁化する方法や、雷サージの侵入経路ごとに避雷器(サージ防護デバイス=SPD)などを取り付ける方法が取られている。SPDは雷サージから建物内の設備機器を防護する装置だ。雷の電流を大地に流すとともに雷の異常電圧を電子機器の耐電圧以下に抑えて故障を防ぐ。想定する雷撃や接続回路、保護対象機器、機能などによってクラス・種類を選定でき、最適な雷害対策が可能だ。
耐電圧が弱い機器やサーバーなど、より重要な機器に対しては、SPDよりも保護性能の高い耐雷トランス(サージ・アイソレーション・トランス=SIT)で対策を行う。電源用と通信・信号用があり、雷の異常電圧を遮断して電子機器を保護することができる。
日本で発生する雷は年間100万回ともいわれ、被害は夏季に集中している。ただ、日本海側では大気の影響などにより冬季でも雷が発生しやすい。また夏季と比較すると、冬季の落雷では大地へ流れる電流が大きくなる傾向にある。そのため、冬季でも備えを怠ることはできない。
落雷は一度の被害で甚大な影響を及ぼすケースもあり、万全の対策が求められている。
