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雷害防止対策技術
落雷による被害(雷害)は企業にとって深刻な被害をもたらす。雷害は直接落ちた物的損傷だけでなく、落雷地点の周囲に発生した"雷サージ"と呼ばれる過電圧・過電流によって、電子機器の損傷やデータ損失を招く恐れがある。通信網が高速化しAI(人工知能)などの活用が進む現在の社会では、雷害の大きさ次第で事業の存続に影響する可能性も出てくる。事業継続の観点からも雷害防止対策はますます重要になっている。
誤作動・データ損失 デジタル社会守る
雷害は大きく二つに分けられる。一つは建築物や樹木、人などの物体に直接落ちる「直撃雷」で、もう一つは落雷が起こった周囲の電線などに"雷サージ"と呼ばれる過電圧・過電流が発生して機器などを破壊する「誘導雷」だ。直撃雷は一般的に言われる落雷で、建物の損傷や火災の原因になり、人命を奪う危険性もある。建築基準法によって高さ20メートル以上の工作物・建築物には避雷設備を設置することが義務付けられているが、20メートル以下の建物でも落雷の可能性はあり、自主的に設置することが望ましい。
他方、誘導雷は電機・電子機器や通信機器の破損、誤動作、データ損失などを引き起こし、気づかないうちに被害に遭っていることも少なくない。雷害の多くは誘導雷によるものと言われており、建物に避雷設備を設ければ良いだけではない。雷サージが電源線や通信線などを経由して建物内部に侵入する誘導雷の影響範囲は広く、雷鳴が聞こえるエリアには危険性があるといわれている。
SPD/SIT 電子機器を保護 クラス・種類 最適使用
近年は電子機器が高性能化、小型化、省電力化によって低電圧で動作するため、低いレベルの雷サージでも故障しやすい。また電源、通信、回路のネットワーク化で雷の侵入経路が多様化し、雷被害が増加している。
対策には通信線を光ファイバーにするなど絶縁化する方法や、雷サージの侵入経路ごとに避雷器(サージ防護デバイス=SPD)などを取り付ける方法が取られている。SPDは電サージから建物内の設備機器を防護する装置だ。雷の電流を大地に流すとともに雷の異常電圧を電子機器の耐電圧以下に抑えて故障を防ぐ。
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パソコンやテレビなど各種機器を雷から保護するSPD(JECA FAIR2025の昭電ブース) -
JECA FAIR2025で紹介された
音羽電機工業の雷害対策
5月28日から30日まで大阪市住之江区のインテックス大阪で開催された「JECA FAIR2025~第73回電設工業展~」では、連日3万人を超える来場者を集める中で、雷保護設備も紹介された。SPDは想定する雷撃や接続回路、保護対象機器、機能などによってクラス・種類を選定でき、最適な雷害対策が可能だ。
耐電圧が弱い機器やサーバーなど、より重要な機器に対しては、SPDよりも保護性能の高い耐雷トランス(サージ・アイソレーション・トランス=SIT)で対策を行う。電源用と通信・信号用があり、雷の異常電圧を遮断して電子機器を保護することができる。
日本で発生する雷は年間100万回ともいわれ、特に夏季は大気が不安定になりやすい。一度の落雷で甚大な被害を及ぼすケースもあり、万全の備えが求められている。
雷と雷保護技術セミナー/7月18日 東京ポートシティ竹芝で開催
音羽電機工業は7月18日13時15分から東京ポートシティ竹芝 ポートホール(東京都港区)で「雷と雷保護技術セミナー」を開く。「自然災害から企業を守る ~BCPにおける雷害対策~」をテーマに、雷害を最小限に抑えるための事業継続計画(BCP)の重要性やデジタル社会における雷害対策の実践事例などを紹介する。
13時15分からの特別講演では、職業的観点からの災害・事故対策を東京海上ディーアールの橋本幸曜上級主任研究員が講演する。13時55分からは近畿大学の森本健志教授が雷の謎について講演し、14時50分からは竹中工務店の坂口佳史専任部長がデジタル時代における雷害対策について具体的な方策を提示する。15時半からは音羽電機工業の早川信一部長がBCPと雷害対策について講演を行う。
セミナーは事前申し込み制で参加費は無料。申し込み締め切りは7月11日。応募者多数の場合は抽選となる。詳細はホームページ(biz.nikkan.co.jp/j-forum/thunder/)へ。