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サウンドテクノロジー
音楽制作や動画配信など、現代では創作活動のすそ野は広がり、電子楽器や音響機器はなくてはならない存在となった。浜松市に本社を置くヤマハとローランドは、電子楽器やオーディオ機器製造などで培った技術を生かし、常に新たな製品を投入してきた。ユーザービリティを高めた音響機器や、多数の音楽家たちに愛用されてきた音源を引き継いだ最新モデルなど現代のニーズに合わせた製品も登場している。両社はたゆまぬ技術開発により、音を用いた可能性を追求する。
音楽制作助ける製品開発
ローランド/40年ぶりにアナログ音源搭載 創作の可能性を拡張
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アナログとデジタルが融合した音源
ローランドは1980年代に登場した「やおや」の愛称で知られる伝説的なリズムマシン「TR-808」や「TR-909」の系譜を受け継ぐアナログサウンドと、最新のデジタル音源、サンプリング技術を融合したリズム・クリエイター「TR-1000」を発売した。同製品は「TRシリーズ」のフラッグシップモデルで、ローランドとして同909以来約40年ぶりにアナログ音源を搭載した。
TR-808と同909はヒップホップやハウス、テクノなどのジャンルの形成に大きな影響を与えた。特にアナログ音源による独特のサウンドは多くのミュージシャンに愛されている。ただ近年両機種の入手が困難となり、ローランドにはTRシリーズの音色再現を求める強い要望が寄せられていた。
TR-1000は同808と同909から厳選した16種類のアナログ回路を受け継ぎ、新開発のサウンドエンジンによって、ヒップホップやハウス、テクノの歴史を形づくってきた同シリーズならでは音の太さ、揺らぎを現代に引き継いだ。いま改めてアナログ音源が求められるのは、単なる懐古のためではない。音の立ち上がりや倍音のにじみ、わずかな揺れが、打ち込み中心のデジタルな制作環境にアナログ独自の音質と操作感をもたらすからだ。
同製品はそうしたアナログの魅力に、独自のデジタル技術「アナログ・サーキット・ビヘイビア(ACB)」による「8X」「9X」の各モデル、FMパーカッション、バーチャル・アナログ波形、PCMサンプルを融合。往年のグルーヴを想起させながら、現代のビートメイクに必要な音作りまで一台で完結できる。
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波形編集にも対応
今回ローランドがあえてアナログ音源を搭載したのは、過去への単純な回帰ではなく、デジタル技術が成熟した今だからこそ、アナログの質感を現代のワークフローの中で実践的に生かせると考えたからだ。ステレオサンプリングやリサンプリング、BPM同期、タイムストレッチ、非破壊スライス編集に対応。64ギガバイトの内部ストレージに収録した2000種類以上のサンプルも活用でき、ひらめきをそのまま楽曲へ落とし込める。
シーケンサーも伝統の「TR-REC」やリアルタイム録音、オフグリッド設定に加え、モーションレコーディングや再生確率設定を搭載。往年の操作感を保ちながら、より自由で有機的なグルーヴを生み出せる。10系統の出力端子やトリガー入出力、CV入力、USB-Cオーディオ/MIDIインターフェースなど接続性も充実し、パソコンとのハイブリッド制作からライブまで柔軟に対応。専用ソフトウエア「TR-1000 App」により、大画面での編集やライブラリ管理も行える。
アナログとデジタルを対立させるのではなく、両者を横断することで、TR-1000は現代の音楽制作の可能性をさらに広げる。
ヤマハ/幅広いクリエイター支援 新型音響機器を投入
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音響機器のラインアップを広げ、クリエイターを支援
ヤマハは幅広く活動するクリエイター向けの新しい音響機器として、デジタルミキシングコンソール「MGXシリーズ」4機種とオーディオインターフェース「URXシリーズ」3機種、USBコントローラー「CC1」を発売した。これらのラインアップで音楽制作やライブ配信、小規模イベント、会議、設備音響など多様な用途に対応する。
MGXシリーズはヤマハのベストセラーであるアナログミキサー「MGシリーズ」のミキシング部とコントロール部をデジタル化したデジタルミキサー。高品位なサウンドと柔軟性を兼ね備える。
入出力とルーティング機能も多彩で、マイク/ラインコンボ入力や4系統のステレオ入力、USB-C接続、近距離無線通信規格「ブルートゥース」での入力、マイクロSDカードによる最大16トラック録音などに対応する。また「MGX16V」と「MGX12V」にはHDMI入力とパススルー専用の端子が搭載されており、ビデオカメラやゲーム機の映像をパソコンへ取り込みながらモニターへ出力することが可能。音声はダウンミックスして任意のチャンネルに取り込める。さらにゲートとコンプレッサー、イコライザー、リバーブなどのエフェクトに加え入力クリップを防ぐ「クリップセーフ」や自動で最適な入力音量(ゲイン)を設定する「オートゲイン」、アンプシミュレーター、ボイスチェンジャーなどのクリエーティブ機能も搭載。用途に合わせてスタンダードとシンプルの2種類の操作モードを選択できる。
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ミキサーからコントローラーまで使いやすさを追求した
URXシリーズはビット深度32ビット、サンプリングレート192キロヘルツ対応のAD/DAコンバーターと高ダイナミックレンジの入出力を備えた高音質オーディオインターフェースで、USB-C端子を2系統搭載し複数のPCやスマートフォン、タブレット端末を接続できるほかマイクロSDカードによるマルチトラック録音にも対応する。「URX44Ⅴ」モデルにはHDMI入力とパススルー機能を備え、映像をモニターへ出力しながらPCへキャプチャーすることが可能。タッチ液晶ディスプレー(LCD)やカスタマイズ可能なノブ「タッチ・アンド・ターン・ノブ」により直感的な操作性を実現した。
CC1は音楽制作ソフトの操作を効率化するUSBコントローラー。タッチセンサー付き100ミリメートルモーターフェーダーと10ビット解像度により精密なリアルタイムコントロールを実現し、AI(人工知能)ノブや複数のマルチファンクションノブ、12個のLCDキーを通じて各種機能を自由に割り当てることができる。さらに独スタインバーグのDAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)「Cubase」や「Nuendo」とのシームレスな連携に加え、米アビッド・テクノロジーのDAW「Pro Tools」にも対応する。
