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静岡県産業界
静岡県では「2025年国勢調査」の人口速報集計で、前回20年調査と比べ減少幅が都道府県中ワースト2位となり衝撃が走った。県内の人口が減れば社会の沈滞が進むのではないかという不安が生じた。大学進学で静岡県から出て行った若年層が、卒業後戻ってこないというケースが多いと指摘されるが、「Uターン」「Iターン」を促進するには、やはり県内産業界の活性化が欠かせない。そのタネとなりうる企業・行政の積極的な取り組みは数多く存在しているはず。また、県は移住の受け入れも強化する。「静岡は暮らすのに最適な場所」と温暖な気候や産業集積などをアピールする。
企業・行政の取り組み盛ん 地元の魅力掘り起こし
リニア着工容認、工事前進へ
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鈴木康友静岡県知事は県議会でリニア建設容認を表明
静岡県の鈴木康友知事は7日、リニア中央新幹線の静岡工区(静岡市葵区)の着工容認を表明した。工事に必要な自然環境保全協定をJR東海と18日に結ぶもの。川勝平太前知事の意見表明もあって約9年間停滞していたリニア新幹線の建設工事が前進する。
鈴木知事はJR東海が6月まで開催した大井川流域住民への説明会で理解が深まったこと、関係法令の手続きが進んだことなどを着工容認の根拠に挙げた。開通まで今後さらに10年以上が必要となることから鈴木知事は「これからが本番」としながら「現時点での最善の検討ができた。JR東海との対話の成果だ」(同)と評価する。もちろん自然環境への影響などに関する住民らの不安を踏まえ「永続的なモニタリング体制を構築する」とした。
静岡県内にリニア新幹線の駅は設けられないが、開通後は東海道新幹線との連携が進んで、現在県内を通過する「のぞみ」、1時間に1本程度の「ひかり」の停車が増えることも期待されている。
「やらまいか」精神で連携深める
県内では企業間連携の動きも進む。静岡県西部のいわゆる「遠州」には、浜松市を中心にスズキ、ヤマハ、ヤマハ発動機など世界に発信する企業が多数存在する。根底には遠州気質とされる「やらまいか」精神がある。これは当地の方言で「やってみよう」というチャレンジ精神を表す。こうした中から業種・企業規模の垣根を超えた連携も生まれている。
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人材交流を進める「やらかしまいか」の参加メンバー
遠州鉄道、静岡銀行、HACK(浜松市中央区)、サーラ不動産(愛知県豊橋市)、スズキ、須山建設(浜松市中央区)、浜松いわた信用金庫、春華堂(浜松市中央区)が出資して株式会社「やらかしまいか」を設立した。参画企業がアイデアを出し合い、地域振興のイベント運営などを各社の社員が業務として行う。25年9月に開催された「インドはままつフェスティバル」などさまざまなイベントがにぎわう。
今後出資各社から集まったメンバーが、浜松市の中心部で眼科医院だった建物を改装して拠点とし、人材育成などのプログラムも展開する。人口減少への危機感から、浜松の人口が現在の78万人から100万人となるよう、産業の底上げを目指す。定期開催しているイベント「ヨル喫茶」は、県内のほかの都市にも広がる。
酷暑の夏に備える 冷房付き仮設休憩場レンタル
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レントの移動式仮設休憩所。冷房の効いた室内でリフレッシュする
6月26日夜に山梨県東部を震源として発生した震度6弱の地震では、静岡県内でも東海道新幹線がストップするなど大きな影響が出た。このところ全国各地で頻発する地震だが、静岡県内では南海トラフ地震への対策がかねて論じられている。地震だけでなく集中豪雨など自然災害の激甚化・頻発化は全国で進んでおり、企業各社も対策を講じる必要がある。そうした中、まず直面するのはやはり、この夏の酷暑対策だ。
全国の熱中症による救急搬送者数は25年、初めて10万人を突破し、過去最多となった。
生産現場や建設現場での酷暑対策は必須で、県内では関連する技術開発や新サービスも目立つ。産業機械・建設機械総合レンタルのレントは、建設現場の熱中症対策として、冷房機能付き仮設休憩所「アイシングシェルター」のレンタルを開始した。
ウインドエアコンを搭載し、一定時間シェルターに入って身体を冷やしリフレッシュする。簡易トイレサイズで車載などで容易に移動する。このほか同社は顔色、発汗などから健康状態を判定するAI(人工知能)カメラなども現場に提供する。
梱包材技術を防災ベッドに
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ニチワの避難所向けベッドは快適性を追求
同県は南海トラフ地震はじめ市民・企業ともに地震への関心が高い。企業による防災用品の開発にも拍車がかかる。そうした中、24年の能登半島地震で顕在化した避難所生活の快適性を追求する製品が注目されている。
空気を使った梱包材をさまざまな分野向けに開発してきたニチワ(沼津市)は、25年6月にエアベッド「airmax(エアマックス)」を発売し、防災用品市場に本格的に進出した。ポリプロピレン(PP)を編み込んだPPクロス素材に空気を注入すると、縦1970ミリ×横790ミリ×厚さ210ミリメートルになるベッドで、水に浮く軽量性や焼却可能などが特長だ。4本のチューブを並べた形状をしており、内側の2本が小径で、荷重がかかった際の空気移動を工夫している。
身体を包み込むような「寝心地を追求したベッド」(阿部留松社長)で、避難所での課題となっている快適性が大きく改善している。地域の防災イベントなどで積極的にアピールし、子どもから高齢者まで寝心地の良さを体験してもらっている。沼津市のふるさと納税返礼品には25年夏に採用された。小中学校などでの避難体験などでも使われ始めている。
県内中小の交流進む
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掛川産業人クラブ主催で開かれた講演会
中堅・中小企業の地域に根差した交流も活発化している。掛川産業人クラブ(事務局=日刊工業新聞社)は掛川市と近隣地域の経営者および後継者を会員として10年に発足し、現在は対象地域を静岡県全域に拡大している。
会員間の交流事業のほか、勉強会・見学会などを実施する。このほど開催した通常総会併催の講演会では篠田康人名南M&A社長が「中小企業から中小企業へ」と題して、中小企業の成長戦略について説き、終了後の懇親会では熱心な議論が交わされた。
各会員企業が軸となった各地での活動も盛んだ。ファクトリー・プライド・アソシエーション(FPA、静岡県掛川市)は、東京都中央区の東京ミッドタウン八重洲で「『工場の誇り』に向き合う一日」をテーマに「ファクトリー・プライド・サミット2026」を開いた。トークセッションや交流会などが行われ、工場経営者や現場責任者ら約260人が参加した。小林永典代表理事(掛川産業人クラブ会長)は「これからの製造業に対して、良いアクションを起こしてもらえる材料になることを期待する」と述べた。
地域発ウイスキー蒸留所10周年 製造業から転身
クラフトビールの醸造所や、クラフトウイスキー、クラフトジンの蒸留所は全国で広がりを見せる。小規模でも地域の特産品の活用やこだわりのある製法などにより、しっかりとファンを獲得しつつある。静岡県内でもウイスキー好きが高じて建設された蒸留所が10周年を迎える。
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「奥静」のガイアフロー静岡蒸留所
静岡発で存在感を示すのが「ガイアフロー静岡蒸留所」(静岡市葵区)だ。「奥静(おくしず)」と呼ばれる静岡市街から南アルプスに20キロメートル北上した地で、16年10月にウイスキーの製造を始めた。センサー部品メーカーを経営していた中村大航ガイアフロー社長のウイスキーに対する愛が結実した。
スコットランドなどの蒸留所で学び、当初は輸入原料などを使ったブレンドウイスキーを製造。スコットランド製の蒸留設備も導入した。「クラフトウイスキー」という言葉も中村社長が使い始めた。日本独自、静岡ならではのウイスキーを作ろうとブランディングに知恵を絞り、静岡県産の大麦を本格的に原料に使用している。
