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静岡県産業界
静岡県産業界は2026年を成長する1年にできるか。日銀静岡支店が発表した25年12月期の企業短期経済観測調査(短観)は、景況感を示す全産業の業況判断指数(DI)がプラス8と、9月の前回調査から3ポイント上昇して24年9月以来5期ぶりに改善した。製造業は前回調査比2ポイント改善のマイナス6。一方で輸送用機械は4ポイント悪化のマイナス12と一定程度米関税の影響がうかがえた。26年3月期予測の全産業DIは6ポイント悪化のプラス2。設備投資は前年度比24・2%増と前向きな姿勢だ。ただ年明け早々に米国がベネズエラへの軍事行動を実施して地政学リスクが増大。世界経済の見通しへの期待と不安が入り交じる。日本経済も、日中関係の緊張感の高まりや人手不足、物価高と不安要素がつきまとう。そうした状況下でも、静岡県の有力企業は設備投資や新製品開発を積極的に行い、挑戦を続けている。
業容拡大目指す 自動車整備を強化
業容の拡大や新製品、新技術の開発の動きが活発だ。
レントは横浜市を拠点に自動車整備事業を展開する神奈川石油販売(横浜市戸塚区)の全株式を取得した。買収額は非公表。レントは売上高全体で車両レンタル事業の占める割合が最も多い。神奈川・東京エリアでは同事業の拡大が見込まれる一方、整備員の担い手が減っているため、神奈川石油販売を傘下にすることで整備体制の強化を図る。
レントの売上高に占める車両レンタル事業の比率は30%弱で、法定点検や修理対応などで整備体制強化が急務となっている。車両整備事業者の買収は、三光塗装鈑金工業(静岡県富士市)に次いで今回が2社目。
神奈川石油販売は交通アクセスの良い横浜市の立地を生かし、大手企業を含めた盤石な顧客基盤を持つ。特に大型車両の整備ノウハウに高度な専門性を備えている。資本金5000万円で、社員36人。
自律制御コンベヤーを今春投入
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アイエイアイが開発したロボットコンベヤ
アイエイアイ(静岡市清水区)はコンベヤー市場に参入する。搬送の加減速を自律制御できるコンベヤーを開発し、春頃をめどに市場投入する。センサーで荷物を検知して位置決めすることで、搬送速度が毎分120メートルの高速ながらも滑らかに停止可能。荷物の処理量が大幅に増えて生産性向上につなげられる。消費税抜きの価格は1台当たり40万円から。モーターなどの内製化により価格を極力抑えた。初年度300台の販売を目指す。
新開発の「ロボットコンベヤ」は、モーターやセンサー、コントローラー、ローラー、配線などコンベヤーに必要な部品をすべて配線済みの状態で納入する。ユニット型のため、コンベヤー同士を連結させるだけで簡単に据え付けることができる。幅は250ミリメートル、または300ミリ-800ミリメートルの長さから100ミリメートル単位で選択可能。高さは600ミリ、800ミリ、1000ミリメートルから選べて、それぞれプラスマイナス50ミリメートルで調整できる。従来のコンベヤーでは、ストッパーを使って荷物を止める方式が主流だが、搬送速度を上げると停止時の衝撃が大きくなってしまうため、速度を上げるのが難しかった。
エネルギー回収装置が経済産業大臣賞
電業社機械製作所は、25年度省エネ大賞(省エネルギーセンター主催)の製品・ビジネスモデル部門で、半導体製造工程などに用いられる逆浸透(RO)法水処理設備用のエネルギー回収装置「DeROs-E」が経済産業大臣賞を受賞した。0・2メガ-4メガパスカル(メガは100万)の低圧条件でもRO排水のエネルギー回収を高効率に回収可能な新装置を開発した。運用コスト削減と環境負荷低減を両立した。
電業社機械製作所は、高圧・大型ポンプやブロアが主力。流体制御に関する技術力は、海外でも評価が高く、国内外のプラントで運用実績を持つ。
表面処理に新技術
鈴木商店(焼津市)はボルトをはじめとする金属部品向け表面処理技術「ロングッド」シリーズの「同ワイド」を刷新し、耐食性能を従来比2倍に高めて受注を始めた。高耐食オーステナイト系ステンレス鋼「SUS316」と同等以上の耐食性を付与できる。日本産業規格(JIS)による塩水噴霧試験では、赤錆が6000時間出なかった。自動車部品やインフラ設備用部品向けなどに提案する。同ワイドは素地の1層目から亜鉛ニッケル系電解メッキ、亜鉛アルミニウム合金系材料の焼き付け塗装、シリカ系材料の焼き付け塗装の計3層で構成。1層目と2層目の間に密着性を高める技術を開発し、耐食性を高めた。同技術は特許取得済み。膜の厚さは15マイクロメートル(マイクロは100万分の1)。
ロングッドは鈴木商店が自社ブランドで展開する表面処理で、同ワイドはハイエンド商品の位置付け。新技術は橋梁部材などの土木事業向けに開発した。公共事業では腐食対策や長寿命化対策が最重要課題となっており、同ワイドは社会インフラや補修工事における長期的な維持管理負担の軽減を目的に開発した。
カム設計手法で歯車製造
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「カム歯車」と「円弧歯車」を組み合わせることで、静音性や剛性を付与できる
テクノダイナミックス(菊川市)は、装置に求める動作や機能から形状を決めるカムの設計手法で製造する歯車「カムギア」の受注を始めた。カムギアを各種機械に採用することで、一般的に使われるインボリュート歯車では困難な静粛性や等速性を付与できる。すでに同様の歯車を納入した実績があるが、新たにブランドを定め専用設計する歯車のメリットを訴求する。受注活動と並行して市場性を探り、5年後に20億円規模の売り上げを目指す。
カムギアはカムの一種「パラレルカム」の構造を応用した形状で、「カム歯車」と「円弧歯車」で構成する。2種類の歯車の組み合わせで特許を取得している。実績のある大きさは、歯の大きさを示すモジュールが1ミリ―15ミリメートルだが、より大型の設計にも対応する。静音や耐久性といった要望に応じて、個別に歯の形状を設計する。例えばこれらの性能を求めて使われるはすば歯車は、軸と同方向にかかるスラスト荷重への対策のため、特殊なベアリングを使う必要がある。一方でカムギアを用いれば、対策は不要で静音性や耐久性を確保し、装置全体を小型化できる可能性があるという。
カムギアの依頼を受けてから納品するまでの標準的な期間は3カ月程度。現状では単品の受注が多いが、量産品にも対応できる。
支援機関の連携重要に 多様なメニュー利用呼びかけ
静岡県産業界を中小企業支援の現場はどう見ているのか。中小企業基盤整備機構中部本部静岡エリアマネージャーの三輪拓也氏と、同機構が運営するインキュベーション施設「浜松イノベーションキューブ(ハイキューブ)」(浜松市中央区)のチーフインキュベーションマネージャーの和久田忠寿氏に聞いた。
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静岡エリアマネージャー 三輪 拓也 氏
—県内の景況感は。
三輪「米国の関税政策の影響もあり東部では自動車関連では厳しい面があるものの、総じて堅調だ。半導体関連向けの一部では設備投資が進んでいる。中部は食品メーカーの投資があり、関連した案件を取り込んでいる企業がある。ただ人手不足感が一層強まっている。日中関係悪化の影響はまだ見えていないが、今後注視していきたい」
—今後の中小企業支援は。
三輪「例えば売上高100億円超を目指す中小企業に向けた『中小企業成長加速化補助金』の採択に、地域の支援機関と連携しながら採択に向け地域をけん引する企業を支援する。『よろず支援拠点』といった支援窓口と連携しながら価格転嫁に関連するセミナーなどを開催していきたい。重点項目は人材確保と販路拡大だ。早い段階で機構のメニューを活用できるように促したい」
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チーフインキュベーションマネージャー 和久田 忠寿 氏
—ハイキューブの特徴は。
和久田「静岡県と浜松市の要請で2006年に設置した。新事業・新産業の創出や産学連携の促進、地域経済の振興という三つの目的に合致した企業が業種問わず参画している。スタートアップや中小企業のほか、新規事業を構想する大手・中堅企業が入居しているのも特徴だ」
—今後どのような役割を果たしていきますか。
和久田「起業した直後の段階ではハイキューブでは規模感が合わない場合がある。最初は国や県、市の制度やコワーキングスペースを利用し、『ホップ、ステップ、ジャンプ』の3段階で言えばステップの成長段階でハイキューブを活用してほしい。静岡エリアマネージャーが常駐しているので中小機構のメニューの活用の相談もできる」
