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第36回 中小企業優秀新製品・新技術賞/受賞者座談会
りそな中小企業振興財団と日刊工業新聞社は4月24日、東京・大手町の経団連会館で「第36回中小企業優秀新技術・新製品賞」(経済産業省中小企業庁、中小企業基盤整備機構後援)の贈賞式を開いた。271件の応募があり、厳正な審査の結果、38件が受賞した。そこで受賞企業4社の代表に、受賞製品の特徴や今後の事業展開、自社の経営理念などを語ってもらった。(敬称略)
受賞企業の紹介
中小企業優秀新技術・新製品賞は中小企業の技術を振興し、わが国の産業の発展に貢献することを目的に、りそな中小企業振興財団と日刊工業新聞社が制定した表彰制度。1988年にスタートし、今回が36回目となる。厳正な審査の結果、一般部門は中小企業庁長官賞1件、優秀賞10件、優良賞10件、奨励賞10件の合計31件、ソフトウエア部門は中小企業基盤整備機構理事長賞1件、優秀賞2件、優良賞2件、奨励賞2件の合計7件が受賞の栄誉に輝いた。
【一般部門】
中小企業庁長官賞
オンチップ・バイオテクノロジーズ/微生物スクリーニングシステム「On-chip Droplet Selector」
オンチップ・バイオテクノロジーズは大量の微生物を解析、分離して個別に分注できるシステム「On-chip Droplet Selector」を開発、2022年に同装置を発売した。
従来、多くの時間と人手を費やし行っていた微生物スクリーニングだが、同システムを用いれば自動で短時間に100万個の微生物サンプルの処理が可能になった。同装置が普及すれば、人々の健康、地球環境の変動対策などに有用な微生物探索が飛躍的に進む可能性がある。
優秀賞
日本遮熱/ゼロエネルギー省エネ「遮熱鋼板ラップ工法」
日本遮熱の「遮熱鋼板ラップ工法」は、遮熱材を貼った金属製の外装材を既存の屋根に取り付けて二重構造にし、間に通気道を設けて遮熱、断熱する工法。屋根の棟の部分に形状記憶合金を使用した自動開閉装置を設置し、電気を使わず24時間通気量を制御する(気温18度Cで全閉、28度Cで全開)。これにより30-60%のエネルギー削減を見込める。
空調のない工場などでも暑さ対策や熱中症対策、作業環境改善に高い効果が期待できる最新工法となっている。
ユニソク/ピコ秒時間分解走査トンネル顕微鏡
ユニソクが開発した「ピコ秒時間分解走査トンネル顕微鏡(STM)」は、約80ピコ秒(ピコは1兆分の1)の時間分解能と原子レベルの空間分解能を持ち、光励起現象をナノスケールで観察できる。筑波大学重川秀実教授の研究成果をもとに製品化した。光学システムの小型化により操作性、動作安定性に優れる。これにより半導体、太陽電池、薄膜材料などの研究加速が期待される。今後は多探針顕微鏡、原子間力顕微鏡への応用や装置レンタル事業により計測手法の普及を図る。
ゼットエンジニアリング/超多段オリフィス型スチームトラップ
ゼットエンジニアリングの「超多段オリフィス型スチームトラップ Steam-Z Sシリーズ」は、可動部を持つスチームトラップに比べて経年劣化や故障が極めて少ない。連続的に凝縮水(ドレン)を排出するため、間欠排出型に比べてスムーズに機能する。
スチームトラップは蒸気雰囲気の中からドレンを排出し、なおかつ蒸気を極力漏らさないのが大きな役割。Steam-Z Sはオリフィス(穴)の開いた板を用いる。ドレンの生成量に応じてオリフィス板の枚数や孔径を選択できる。
優良賞
ジオ・サーチ/掘削状況3D管理アプリ「ちかデジ」
ジオ・サーチの「ちかデジ」は、スマートフォンなどで撮影した掘削工事現場の動画を、3次元(3D)デジタルデータに変換、表示する。
3Dモデル、点群データ、平面図、断面図、拡張現実(AR)データといった多様なデータを作成できる。
掘削状況を視覚的に把握しやすくなり、地図情報プラットフォーム(GIS)で一元管理することも可能だ。現場記録、出来形管理資料の資料作成が不要になり、工期短縮に役立つ。
安斉管鉄/高密度オゾンナノバブル水生成装置
安斉管鉄の「高密度オゾンナノバブル水生成装置」は、カーボンセラミックスを用いた超微細気泡発生装置とオゾン発生装置を組み合わせ、超純水中にオゾンのナノバブルを滞留させることで高濃度オゾン水を生成する。循環モーターを使わず、酸素ボンベと接続して簡易に高濃度オゾン水を生成できる。
同装置は二つのチャンバーの間で液体を右から左、左から右へと圧送する仕組み。その間にナノバブルを発生させるカーボンセラミックスを設置し、往復回数によりオゾン濃度を高めていく。
中山水熱工業/防爆Wi-Fi振動センサー「コナンエアー」
中山水熱工業の防爆Wi-Fi振動センサー「コナンエアー」は第一類危険箇所(ゾーン1)にある汎用回転機械や搬送設備の外側に磁石で設置できる、加速度や速度を測るセンサー。国内外の防爆認証を取得し、耐圧・粉塵防爆まで対応。石油・化学プラントなどで、水素を含む可燃性危険物を扱うゾーン1に指定された施設に使用できる。検出した生データはWi-FiでPCやスマートフォンに送信され、人による巡回点検を自動計測に置き換え可能。データから異常発生を予測でき、予防保全に役立つ。
奨励賞
三友工業/包装の封止検査装置「Sealing Checker-AI」
三友工業の包装用封止検査装置「Sealing Checker-AI」は人工知能(AI)を搭載し、ルールベースの画像検査では難しかった人の目と同等の検査を実現する。目視に頼っていた検査工程を自動化。人手不足を解決し、検査の品質を安定化する。
近赤外線ラインカメラと照明を用い既設製造ラインに20ミリメートルの隙間があれば設置可能。AIは顧客の仕様に合わせてローカル環境で専用設計し、ライセンス料は不要なのが大きな特徴だ。多品種に対応し、導入後は顧客が簡単にAI学習させられる。
日本プララド/テンションナット
日本プララドのテンションナットは大型ボルトの締結を簡単に素早く行え、振動でも全く緩まないセルフロックナット。M20(直径20ミリメートル)以上の大型ボルトの締結には一般的に高価な油圧レンチなどの工具を必要とするが、同製品はハンドレンチ1本で締結・弛緩(しかん)できるため経済的で安全に作業できる。
本体と、緩み方向へ傾斜角度を持たせた特殊な斜面形状ディスクとを一体で使用することで緩まない独自技術を開発した。製鉄機械や射出成形機、食品機械など幅広い分野での採用を狙う。
奨励賞
関西化学機械製作/小動力で混合する撹拌翼「WWミキサー」
関西化学機械製作の小動力で混合する撹拌翼「WWミキサー」は、今までと全く違った観点で考案した新型撹拌混合機だ。従来の撹拌機は液全体を循環、剪断(せんだん)して混合する。同製品は遠心力を活用し、液をパイプの下端からくみ上げて液上空間に放出。落下部で液を合体させて、異なる場所の液と液を合わせて混合できる。さらに、未使用の反応槽の壁に液を衝突させて微細化し混合を促進する。液を強制的に回転したり、剪断したりせずに混合分散を促進でき、小動力で運転可能。2液相の混合反応、抽出、固液均一混合、空間を利用したガス吸収など多方面で省エネルギーに貢献する。
東洋精鋼/ポータブル陽電子寿命測定装置
東洋精鋼は産業技術総合研究所と連携し、陽電子寿命のオンサイト測定技術を開発。2022年に「ポータブル陽電子寿命測定装置PSA Type L-P」として市販化した。さらに23年には小型化と性能向上を実現。標準品に比べて小型軽量なため、持ち運びが可能。また大型の構造物でも非破壊で測定できる。
陽電子寿命測定法は金属疲労や高分子劣化などを原子・分子レベルで高感度に検出でき、材料研究における分析手法の一つとして利用されている。
ブレイブリッジ/ワイヤレスIoT組立てモジュール「BravePI」
ブレイブリッジの「BravePI(ブレイブパイ)」は、生産現場におけるIoT(モノのインターネット)化、デジタル変革(DX)化などの〝見える化〟を専門知識不要で簡単に実現できる。
電池駆動、無線仕様のため、電源の配線や通信周りの環境整備が必要ない。センサーをハンダ付け不要のコネクターで接続し、共同開発の福岡県工業技術センターによる無償ソフト「IoT導入支援キット」を使うことで、アプリ開発なし、最短1日で無線IoTを実現する。
前田シェルサービス/圧縮空気品質モニター「AIR-MO」
前田シェルサービスの「AIR-MO(エアモ)」は同社製フィルター「3in1マルチ・ドライフィルター」専用の圧縮空気品質モニター。同フィルターは工作機械や測定器などに用いる圧縮空気から、三つのエレメント(濾過紙)で水・油・オイルミストを取り除き、清浄度を保つ。
エアモは同フィルターに取り付け、通過する圧縮空気の清浄度を示す粒子等級が国際規格「ISO8573-1」、日本産業規格(JIS)「B8392-1」の基準で「2」より悪化した場合にフィルター交換を促す。
【ソフトウエア部門】
中小企業基盤整備機構理事長賞
ネフロック/現場向けハイスピード・高精度「EdgeOCR」
ネフロックの「EdgeOCR」は、スマートフォンなどの端末上で作動する、ハイスピード・高精度OCR(光学式文字読み取り)だ。物流や製造の現場に向けて開発した。
人によるアナログな作業を置き換え、作業の効率化、ミスの削減、データ利活用に役立てられる。読み取り速度0・1秒を実現。英数字、バーコード、2次元(QR)コード、日本語や手書きの英数字も読み取りが可能だ。
現場の要望に合わせたカスタマイズにも対応する。