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第38回中小企業優秀新技術・新製品賞/受賞企業座談会
りそな中小企業振興財団と日刊工業新聞社は4月23日、東京・大手町の経団連会館で「第38回中小企業優秀新技術・新製品賞」(経済産業省中小企業庁、中小企業基盤整備機構後援)の贈賞式を開いた。受賞企業4社の代表に、受賞製品の特徴や今後の事業展開、自社の経営理念などを語ってもらった。(敬称略)
受賞企業座談会
【座談会出席者】
シュヴァルベル(東京都新宿区) 代表取締役 林 美晴 氏
SPLYZA(浜松市中央区) 代表取締役 土井 寛之 氏
インタフェース(広島市南区) 執行役員開発本部 藤居 芳生 氏
不二精機(福岡市博多区) 常務執行役員営業管理本部統括 島田 政昭 氏
《司会》日刊工業新聞社 取締役編集担当 明 豊
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座談会参加者の集合写真
製品開発への思い
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SPLYZA 土井 寛之 氏 -
シュヴァルベル 林 美晴 氏
明 今日、受賞のあいさつをされた土井さんの話の中でスポーツの話が出ました。土井さんは日本人メジャーリーガーの活躍に関心はありますか。
土井 はい。当社は単眼カメラで高精度な3D(3次元)動作解析を行う「SPLYZA Motion3D」を開発し、多くのスポーツ選手に活用していただいています。ですので、選手の打ち方や投げ方などの動作にとても興味があります。
明 そうなのですね。ご自身の体験から事業や製品が生み出されることもあるかと思います。林さんは半導体ビジネスから起業されました。これまでの経験が事業につながっている面もありますか。
林 半導体業界のエンジニアの一人として、その移り変わりを見てきました。半導体で日本は劣勢になったものの、材料や前工程など、依然として世界的な強みを持つ分野も数多くあります。だからこそ製品開発では、日本の強い分野をさらに強くでき、今まで海外製品が使われていたところを国産に置き換えられる、世界標準となれる分野を狙うべきと考えていました。今回受賞した「ウルトラファインバブル計測装置」は、そうした考えのもと製品化しました。ウルトラファインバブルは、ここ数年産業界で注目されており、日本を中心に世界中で発展してきています。その分野をさらに後押しするため、正確に測定できる計測装置が必要だと考えました。今後より重要なのは、ウルトラファインバブルの計測方法が世界標準として確立されることであり、この装置がその一端を担う存在になれば大変嬉しく思います。
明 土井さんは大学との連携をされています。外部とのアライアンスと自社でやるべき部分をどうお考えですか。
土井 ソフトウエアも製品開発も自社でやっています。今、共同研究しているのは、大学医学部の整形外科などです。医療分野で広めていくにあたり、論文での検証や世界のデファクトスタンダードと比べた精度といったところで、大学の研究機関と連携しています。
明 ソフトウエア開発で人工知能(AI)の活用が進んでいます。御社はAIをどう使っていますか。
土井 昨年、バイブコーディングの研修をエンジニア以外のメンバーに実施したところ、本来プログラマーが何年もかけて習得する技術を獲得せずに、たった1カ月で簡単なアプリが作れていました。優秀なエンジニアであれば、さらに業務が加速することでしょう。今回受賞した製品は、おそらく世界でも5社ぐらいしかできない技術水準にあります。ただAIを使えば、未経験者でも簡単なシステムが作れてしまうという危機感はあります。ですので、当社の技術水準を他では到達できないところにまでリソースを集中していく必要があると思っています。
明 セキュリティーへの意識が高まっています。藤居さんのところには追い風になっていますか。
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インタフェース 藤居 芳生 氏
藤居 今回受賞した安全対策ネットワーク絶縁装置「ゼツエン犬」は、高額な装置の代わりに、中小企業にも導入しやすい価格帯で当社が製品化したものです。ランサムウエア被害が拡大し、自動車メーカーのサプライチェーン(供給網)が攻撃を受け製造が止まる事態も起こっています。当社は防衛や社会インフラ系企業と取引しており、その情報は絶対に外へ漏れてはいけないものです。同じような製品を20年前に作り協力会社と使っていましたが、中小企業が導入しやすいようコンパクトにして導入コストを下げました。この製品で安全性を高め、中小企業を含む日本の産業を強くしたいという思いを持っています。
明 島田さんのところは、人手不足という社会課題の解決に役立つ製品です。開発する上で何に一番の価値を置いているのですか。
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不二精機 島田 政昭 氏
島田 今回受賞した「ふんわりおにぎり供給機FDK」は、主にコンビニエンスストア向けに製造されているベンダー工場様へ開発されたおにぎりマシンです。工場も人手不足で、従業員の多くが外国人というところもあり、誰でも使いやすい装置が求められています。ただ一番重視したのは、おいしさです。おにぎりに対する日本人の舌は本当に厳しいのです。今回はどれだけふんわりしたおにぎりにできるかという点に注力しました。すし職人は三手で握ると言われますが、当社の製品もできるだけごはんにストレスを与えないよう、機能を極力シンプルにして、各設計の技の磨き込みに特化しました。結果として、おいしさと歩留まり改善、生産性アップを実現することができました。
今後の事業展開 海外戦略
明 島田さん、世界で日本食ブームが起きています。御社の取り組みは。
島田 ラーメンやおすしに加えて、最近はおにぎりがヘルシーな日本食として人気で、機械の需要も高まっています。国ごとの規格認証に対応しながら、開発を進めています。また、海外ならではのニーズもあり、それも反映して提案していこうと考えています。
明 林さんは、海外も含めてどのようなロードマップを描いていますか。
林 販売戦略として「陸のシルクロードをつなげる」ことを考えています。アジアから欧州へつなげていく。それと米国もマストです。アプローチとして、まず学術分野の先生方に使っていただき、論文などに掲載してもらいます。その後、各分野で商品化を狙い、普及させていく。この製品は自動化ラインに組み込むことを前提に設計していますので、そこがまさに強みとなります。今の引き合いから見ると中国、韓国、シンガポール、インドなどが多く、環境関連ではドイツやカナダからも需要があると見ています。今後は海外の動向を踏まえ、事業展開を進めていきます。
明 土井さんのところは、医療分野にも広げていますね。
土井 今まさに医療分野は準備中で、今年はまず整形外科分野中心に国内でやっていこうと考えています。並行して昨年から米国の整形外科学会や展示会にも出展しています。米国で当社の技術の優位性を確信しています。
明 米国では、この技術への期待値は高いですか。
土井 高いですね。米国の健康保険は民間が主体です。例えば、変形性膝関節症の人工関節置換手術は、日本なら1カ月ほど入院するのですが、米国は手術後、即日退院します。ですので、リハビリは自宅で行います。そのときに、当社のカメラ1台で撮影してリハビリの進捗(しんちょく)を確認できる仕組みが非常に役立ちそうです。日本とは違う制度だからこそ貢献できると考えています。
明 藤居さん、日本企業のサプライチェーンもグローバルになっています。御社の海外へのお考えは。
藤居 日本メーカーが海外に工場を展開する際、我々の製品も一緒に輸出されます。例えば欧州のサイバーレジリエンス法など、国や地域ごとの法制度があり、それに対応する仕組みの準備をしています。一方、国内では安全保障の観点から、社会インフラの維持に純国産製品が求められるようになってきています。当社は国内生産を貫き、国内の信用できる協力企業とだけお付き合いしています。これまではコスト面から海外製品を導入していた企業も、社会インフラや宇宙関連など信頼が重要視される市場には国産製品の使用が必要になっており、そこに当社の製品が採用されていると考えています。
人材育成
明 それでは企業理念や人づくりについて、伺います。島田さんのところは、この中で一番歴史がある企業です。長く続けていく価値を社員の中でどう共有されていますか。
島田 当社は現場力を生かして変化に対応してきた会社です。新機種開発では長くても5年とかのスパンで計画を立て、各機種に専属営業を立て開発と連携した組織体制をフレキシブルに展開しています。ただ、当社の主要顧客はコンビニさんで、市場の変化は大きくメニューも頻繁に変わります。ですので、現場の変化に対応して一度納品した機械についても、新たな機能や装置を追加できるようアップデート可能な設計を行っています。常にお客さまのご要望や製造変化に対応できることが大切です。必要であれば、スピード感を持って軌道修正を図りながら、方向性としては計画した開発や改良を進めることが大事だと思っています。
明 若い社員が持つ価値観や会社への忠誠心に変化を感じることはありますか。
島田 以前から見れば変わっているのでしょうが、当社はモノづくり企業として、3年から5年かけて人を育てています。機械開発から納品稼働まで営業・開発・製造の全部署が連携してフォローしていますので、コミュニケーションがしっかり取れていて、退職率も他社より低いです。また、開発のCADを活用する部署は4割が女性です。マシンの組み立てやプログラミングでも女性が活躍しています。
明 林さんは、社員とのエンゲージメントで、どこを価値として共有しようと考えていますか。
林 やはり働く人が主人公であるべきで、彼ら彼女らの人生の中で働く場として、当社を選ぶイメージが湧くかどうかがすべてだと思っています。一人ひとりと定期的な面談をしながら、働き方や将来どうなりたいかを聞き、それによって「だったらこれをやるべきだ、この資格を取った方がよいじゃないか」というような話をしています。エンゲージメントにおいて、それぞれの人生設計を共に考えることが最も大切だと考えています。
明 社員数はどのぐらいですか。
林 約170人です。私自身は社員にモノづくりを楽しんでもらうことをテーマにしています。とにかくエンジニアとして問題解決していくことを好きになってもらいたい。そのために、会社の指針としては教育を重要視しています。例えば、見ておく意義のある案件なら、収益を度外視してでも若手を連れて現場に行けと言っています。
明 後継者の育成については。
林 可能性のある人材には若いうちから組織を持たせて、資金的な面も意識した管理者の育成を行っています。その中で失敗することも多々あります。その経験を共にし、一緒に問題を考え実行していくことで、将来経営者となれるような人材がそのようなメンバーから出てくると思っています。将来はどのような技術分野が主軸か分かりません。ですから、問題解決ができる資質、先を見越して考えられる人材を育てる、そこに一点集中しています。
明 土井さんは人材育成についてどうお考えですか。
土井 当社はまだ従業員数は30人ぐらいで、今の技術も生まれたばかり。まさにこれからの会社です。その技術を、いろんな生活現場「ゆりかごから墓場まで」を、世界中に広げたいと考えています。そのために、社員にもっと大きな夢を見せていきたいと思っています。
明 米国でのビジネス展開が進んでいますね。
土井 実際、現在も時間的には日本と米国を半々ぐらいで行き来しています。米国に行くときには、私だけでなく、社員二人ぐらいを連れて新しい体験をしてもらうようにしています。ただ、社員の中には「自分はスポーツ関連をやりたいから入社した」と言う人もいて、会社の目指す方向とは違う考えもあります。そういうときには「君はスポーツが好きだと言うが、パフォーマンスの向上しかやらないのか。同じ人のけがの予防やリハビリにも、同じスキルが使えるなら使うべきではないか」と説明するようにしています。自分たちが貢献できる世界が広がっていることを見せていきたいと思っています。
藤居 我々は広島の企業ですが、広島県は人口転出超過状態です。広島で生まれ育っても、就職は外に出てしまいます。しかも、大学ではソフトウエア・情報関連の学科は人気がありますが、我々が作る電子機器に必要な電子回路が学べる学科は不人気なんですね。そこで、先日宇宙でお酒を醸造するプロジェクトに当社のコンピューターが使われていた、といった実例を出して、あなたがやる仕事はこういう面白い仕事につながっていますよ、と伝えるようにしています。米国ではすでにAIの導入で新卒者を採用しないという動きもありますが、日本はまだ若い人を育てていこうという素地が残っています。どこにもない製品を一緒に作っていこう、それで世界に打って出よう、とストーリーを伝えていきたいと思っています。
全国の中小へのメッセージ
明 AI時代に入る中で結局、人が大事だという点は業種を超えて共通していると思います。今回受賞されたことを踏まえて、改めて全国の中小企業にメッセージをお願いします。
島田 当社は採用の際に新卒でも中途の方でも、皆さんに「ご飯食べていますか」と聞くようにしています。しっかりご飯を食べられる方は、ストレスがあってもそれを「おかず」として食べ、エネルギーに変えられます。毎日の食事が課題を乗り越える元気の源なのです。それと、やはり現場にこそ、開発のヒントがあり、新しいものが生まれる要素がちりばめられています。現場の声をフィードバックする流れをしっかり作り、スピード感を持ってお客さまには新たな付加価値を創造してご提供していく。その繰り返しが大事だと思っています。
林 海外で仕事をすればするほど、真面目さや何事もしっかりやるという気質は、日本人の強みだと気づかされます。先人のたゆまぬ努力のおかげで、我々のような中小企業でさえ海外では「メードインジャパン」として評価されます。ですので、チャンスはいくらでもあります。ただ、世界中のライバルと戦うには、とにかくスピードが必要です。これさえ加われば、日本の中小企業は世界で通用すると考えます。
土井 うちは子どもが中学生と高校生なので、彼らに伝わる言葉で言うと「ワクワクさせてくれ」っていうことなのかと思っています。最近は社会に出て働くことがネガティブに捉えられがちですが、仕事とは、自分の関心があることをとことんやっていい時間なんだよ、と考えられたら、ものすごくワクワクできます。経営者の皆さんもそのように考えてもらえれば、もっと面白くなるのではと思っています。
藤居 今回の賞はモノづくりに対していただいたものです。最近は就職先としてメーカーを敬遠する風潮もありますが、モノづくりって面白くてやりがいがあることなのです。海外ではすでにモノづくりの素地がなくなって、自国でモノが作れないところもあります。メーカーというのは尊いものだと、そういう雰囲気が保たれる国であってほしいと思います。
明 今日はモノづくりの大切さを共有できるよい機会となりました。本日はありがとうございました。
