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滋賀・彦根バルブ産業界
滋賀県北東部の彦根市と周辺エリアは国内屈指のバルブ集積地として知られる。約30社のブランドメーカーと70-80社の関連企業で構成し、働く従業員は約1500人と、県内最大級の地場産業の位置づけだ。彦根地区のバルブ関連企業が集まる滋賀バルブ協同組合(滋賀県彦根市)がまとめた彦根バルブ生産高調査(対象23社)で、2025年は過去最高を更新した。中東情勢の緊迫化など先行き不透明感はあるが、業界は堅実な成長を志す。
生産高、昨年最高更新
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バルブの組み立て現場(滋賀バルブ協同組合提供)
滋賀バルブ協同組合によると、25年の彦根バルブ生産高は前年比4・8%増の338億4178万円となり、3年連続で300億円を超えた。伸び率は24年(4・9%増)とほぼ同等。1960年に調査が始まり、23年に26年ぶりに300億円を超えて以降、直近は増加トレンドにある。
同組合では当初、原材料高やエネルギーコスト高騰、人手不足によるコスト増などの影響から、生産の落ち込みを懸念していた。ただ会員各社の生産性改善の取り組みや価格改定など地道な営業努力も実り、生産高は引き続き堅調を維持した。
業種別の生産高で見ると、前年比19・9%増の74億1736万円と最も伸び率が高かったのが船用弁だ。自動車運搬船など新造船需要が活況で24年に続き2ケタの成長となった。船用弁の専業メーカー、日の本辨工業(滋賀県彦根市)は「受注状況を見ても、あと3年は(舶用弁の)需要増加は続くと見る。当社も数年前から設備投資をし、生産を増強してきた」(岡一嘉社長)とする。鋳物素材も同17・1%増の17億8151万円と堅調。
工場やプラント向けなどの産業用弁は、同2・0%増の128億9465万円と安定的に推移する。一方で水道用弁は自治体向けの更新需要などはあるが、前年比1・6%減の117億4825万円となった。
同組合によると、26年の生産高も300億円超えは続くと見る。公共事業への投資継続や製造業・建設業の設備投資の拡大、造船業界の安定需要を期待する。特に船舶向けは2ケタ増をキープすると想定する。高市早苗政権が打ち出す成長戦略で重点投資対象17分野の一つに造船があげられ、国内の造船生産量を倍増する動きがあることも、追い風になりそうだ。
一方で中東情勢の緊迫化が長引くと、業界にとっても大きな懸念材料になる。組合企業の中では、塗装工程に使うシンナーなど資材の値上がりや調達困難などで影響が出ているところもある。材料高や原油高の環境変化が収益をどれだけ圧迫するか、影響を注視する必要がありそうだ。
組合、業界活性化へ PR活動推進
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滋賀バルブ協同組合青年部が3月のイベントに参加し、バルブ材料を使ったメダル製作体験を実施(滋賀バルブ協同組合提供) -
彦根市役所の地場産業ブースでPRしている彦根バルブの製品
滋賀バルブ協同組合では、若年層にバルブ業界への関心を持ってもらうための取り組みを強化している。滋賀県立大学工学部1年生を対象に、バルブ業界をテーマに年1回の特別講義を10年近く行ってきたが、25年度からは新たに滋賀県立彦根工業高校1年生向けにも特別講義を始めた。
滋賀県立大で25年7月、彦根工業高では同6月に特別講義を実施。同組合の役員を務める水道用バルブメーカーの社長が講師となり、彦根バルブの歴史やバルブ製品の基本構造を動画で紹介するなど、学生たちへ業界の動向や魅力を訴えた。
同組合の青年部は業界活性化を狙った対外活動に熱心だ。地域イベントに参加し、小さな子どもたちにもバルブに関心を持ってもらう活動を行う。3月に滋賀県草津市で開かれた、仕事の体験・学習イベント「しがわーくフェスタ」(滋賀県中小企業青年中央会と滋賀県中小企業団体中央会の主催)で、青年部はバルブ材料を活用したメダルの製作体験を実施した。参加した子どもたちはモノづくりを楽しみつつ、バルブ業界を知るきっかけにもなった。
バルブをより身近に知ってもらうためのイメージ戦略も強化する。同組合では23年に彦根バルブのイメージキャラクター「彦バルくん」を誕生させた。廣瀬バルブ工業(滋賀県彦根市)の「ばるるくん」など、個別メーカーでもキャラクター展開する動きもある。どれも愛嬌のあるデザインで、効果的なPR活動を進める。
人材育成を重視
関連資料によると、彦根バルブの始まりは明治20年頃に、同地で仏具の金具職人だった門野留吉氏が製糸工場用カラン(蛇口)の生産を手がけたのがきっかけだ。留吉氏は多くの弟子を抱え、その職人たちが独立してバルブ業や鋳物業を彦根地域で興し、バルブ産業の集積ができていったとされる。
人材育成を重視する姿勢は今も受け継がれる。滋賀バルブ協同組合は、業界の新人・若手社員向けにバルブ研修会も実施する。彦根バルブの歴史や、バルブの材料や構造用途などを学ぶ内容だ。
滋賀バルブ協同組合は27年12月に設立40周年の節目を迎える。濵口浩一理事長は「業界自体に派手さはないが、多くの企業は堅実経営をしている。バルブは多様なインフラのベースとなり、人の暮らしに必要なモノを我々は生産している。プライドを持って活動してきた」と強調する。
滋賀バルブ協同組合理事長 濵口 浩一 氏/ブランド力向上に取り組む
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滋賀バルブ協同組合理事長 濵口 浩一 氏
「彦根バルブ」は、明治中期に紡績工場配管の修繕や交換を手がけた歴史を背景に、現在の水道用・産業用・船舶用のバルブを生産する県内有数の地場産業に発展しました。産業と人々の暮らしに欠かせないものとして、安定した成長を続けています。
これまで会員企業は各市場の底堅い需要を基に、設備投資や人材開発などの企業努力を続けてまいりましたが、近年の材料・コスト高や次世代人材の不足は喫緊の課題となっています。特に今後のイラン情勢が産業に与える影響は不透明で調達面での注視は当面続きますし、いわゆる積極財政の恩恵も各市場の構造を踏まえた中長期的な視点が必要です。
当組合は県内の公的機関や学校などとも連携し、業界の技術力と品質向上、地域で「顔の見える」彦根バルブのブランド力向上に取り組んでまいります。
