-
業種・地域から探す
滋賀・彦根バルブ産業界
滋賀県彦根市とその周辺エリアは国内屈指のバルブ産地で、多くのバルブメーカーや関連企業が集積している。約30社のブランドメーカーと70―80社の関連企業で構成し、県内最大級の地場産業だ。バルブは管などを流れる気体、液体といったさまざまな流体のコントロールなどに欠かせない基幹部品で、“彦根バルブ”は上下水道用や産業用、船用のバルブが主力製品。彦根バルブのイメージキャラクター「彦バルくん」を通じたブランド力の向上にも熱が入る。
昨年の生産高、最高更新
彦根地区のバルブ関連企業で構成される滋賀バルブ協同組合によると、2024年(1―12月)のバルブ生産高は前年比4・9%増の322億9216万円となり、過去最高を更新した。燃料多様化や老朽船舶の代替をはじめとする新造船需要の回復で、船舶用バルブが2桁成長を記録。水道用バルブや鋳物素材も堅調に推移した。このほか、各企業が価格改定を含めた地道な営業努力を重ねたことも背景にあるという。
環境規制対応の次世代燃料船や老朽船の更新などで、造船需要が世界で拡大基調に入ったことから、24年の船舶用バルブは前年比16・1%増の61億8474万円と大きく伸長した。船舶用バルブは、タンカーや液化天然ガス(LNG)船、コンテナ船、客船、漁船、貨物船、自衛艦などに用いられている。中長期での新造船の需要増加が見込まれる中、25年も24年に引き続き、成長が期待される。
このほか、上下水道や工業用水、農業用水などの配管に用いられる水道用バルブの24年の生産高は、堅調な公共事業などを背景に前年比6・0%増の119億4477万円と伸長した。鋳物素材についても、同3・2%増の15億2186万円と伸ばしている。
一方、先行き不透明感などを背景に製造業や建設業などでは、設備投資に様子見ムードが漂っている。こういったことから、産業用バルブの24年の生産高は、前年比でほぼ横ばいの同0・6%減の126億4078万円となった。
25年は公共事業への投資の継続や、新造船建造数の増加、鋳物素材の新規契約のほか、製造業・建設業の設備投資拡大が期待される。ただ、アメリカのトランプ新政権下で繰り広げられる保護主義的な関税政策、長期化している円安、あらゆる産業の課題となっている人手不足、原材料やエネルギーコストの上昇など、収益圧迫の懸念材料は数多く、これらの影響を注視し、考慮する必要がある。
会議所との連携強化
-
滋賀バルブ協同組合の新事務所
滋賀バルブ協同組合は1月、事務所を彦根商工会議所3階(滋賀県彦根市)に移転した。これを機に、従来以上に同会議所との連携を強化する。理系人材の育成推進や産学連携支援に力を入れる同会議所とのコミュニケーション活発化で、人手不足をはじめとする昨今の企業課題の解決に結びつけたい考えだ。
滋賀県を管轄する日銀京都支店が公表した3月の管内企業短期経済観測調査(短観)では、全国同様に京滋企業の人手不足が続いていることが示された。
バルブ業界も例外ではなく、技術職の高齢化や技能承継といった課題が顕在化する。採用は他業種同様厳しく、「まずは地元の子供たちに彦根の地場産業といえば“バルブ”ということを知ってもらいたい」(バルブメーカー採用担当)と話す。同会議所との連携強化で彦根バルブのブランド力を高めていく。
ブランド力高める/滋賀バルブ協同組合 理事長 濵口 浩一 氏
-
滋賀バルブ協同組合 理事長 濵口 浩一 氏
滋賀県彦根市とその周辺地域で営まれてきたバルブ産業は、120年を超える歴史を誇ります。全国シェア50%以上の「水道用」をはじめ、「産業用」、「船舶用」といった多種多様なバルブが生産されるなど、数々のブランドメーカーと協力企業でなる全国的にも珍しい地場産業に育ちました。
いずれの用途のバルブにつきましても、日本の経済と人々の暮らしの根幹を支えるものであります。派手さはないものの、これまで日本の強固な社会基盤づくりに寄与してまいりました。
しかしながら昨今は、長期にわたった経済の低迷、国際社会の不安定さ、少子高齢化などの影響で、本来ある潜在的なニーズを活かしきれない状況です。特に深刻な人材不足につきましては、すべての企業にとって最優先に取り組むべき課題となっております。
当組合では、さまざまな事業を通じて、バルブの必要性や重要性、ものづくりの難しさや楽しさを発信することで、「彦根バルブ」のブランド力を高めていきたいと思います。