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滋賀県産業界
モノづくり産業の競争力強化に向け、イノベーションや産学官連携、社会課題解決型の事業創造、次代を担う人材育成が求められている。滋賀県では高度専門人材を育てる県立高等専門学校の2028年開校への動きが加速し、産学官連携によるイノベーション推進を狙った県立試験研究機関の機能強化や整備なども進む。持続可能な社会の実現には、社会・地域課題解決と経済成長の両立するイノベーションが必要だ。
変化に挑戦する滋賀
県立高専、28年開校/実践的技術者養成に期待
滋賀県初の県立高等専門学校が2028年4月に同県野洲市で開校する。同市は古くから東日本と西日本を結ぶ交通の要衝。同市含む湖南地域はパナソニックなどの大手や地場モノづくり企業が数多く拠点を構えており、産業界や地元自治体から理系教育機関の増強が求められていた。理系人材不足が深刻化する今、実践的技術者を養成する高専への注目度は高く、産学連携にも期待が寄せられる。
国公立高専の開校は04年の沖縄高専以来。滋賀県は製造業が盛んなモノづくり県で、中学校卒業後の5年間の一貫教育で実践的技術者を育てる高専には地域貢献も期待される。
県はインターンシップ(就業体験)や課外授業、共同研究などでの連携も見据え、応援団となる企業らに参画してもらう「滋賀県立高専共創フォーラム」を昨秋創設。約300の企業や団体、個人が参画しており、期待の高さがうかがえる。
9月のフォーラムイベントには企業や保護者などの約180人(オンライン含む)が参加。現役女子高専生や海外の高専卒業生、実業家らがダイバーシティについて議論した。登壇した包装フィルムメーカーで女性社員比率4割の甲賀高分子(滋賀県湖南市)の石田秀幸社長は「考える力や発想力が仕事には必要。仕事後の時間を大切にし、趣味も大事にすることが仕事にもつながる」と指摘した。
滋賀高専は1学科4コース(機械・電気電子・情報技術・建設)。1年生は情報技術を基盤とした学び、2年生から各コースに分かれる。コース枠を超えたPBL(課題解決型学習)も行い、高度専門人材を育成する。
立命館と産総研 連携
今年で開設30周年を迎えた立命館大学のびわこ・くさつキャンパス(BKC、滋賀県草津市)。年間300ー400件あると言われる同大の共同研究・受託研究の大半が行われるなど、産学連携の主力キャンパスと位置づけられる。そんなBKCが立地する滋賀県を舞台に、同大などを運営する学校法人立命館は、産業技術総合研究所とタッグを組み、県内中堅・中小企業の技術支援や地域活性化に乗りだした。
10月に、産総研と立命館が持つ研究シーズを用いた共同研究を実施する連携体制を整備した。共同研究テーマは人の生活の価値を高める製品・サービスを創出するライフセントリックデザイン。両者の研究施設やBKC内に設ける連携拠点を活用しながら、人の感覚に働きかける心地よさを付加価値としたモノづくりを支援し、企業の新製品開発や事業化、新市場への参入などを後押しする。
産総研は材料工学に基づく物性評価、立命館は強みとする感性工学の知見から企業を支援する。既に視覚や聴覚、触覚の3分野のライフセントリックデザインに関する共同研究が動いており、同大でソフトロボティクスを研究する平井慎一教授や音響工学を研究する西浦敬信教授などが研究に名を連ねる。
高周波な試験規格に対応
工場のスマート化に欠かせないのが、WiーFi(ワイファイ)をはじめとした無線通信機能の生産設備などへの搭載だ。
ただ、産業用の同機能は家庭用に比べ高い信頼性が求められ、導入の足かせとなっている。
課題解決のため、滋賀県工業技術総合センター(滋賀県栗東市)は、そんな産業用無線通信品質を評価・測定できる施設「デジタル高速無線通信・EMC評価ラボ」を整備し、運用を始めた。
同センターが保有していた電波暗室を改修し、従来より高周波な試験規格に対応。電磁環境適合性(EMC)規制への適合検査を可能としつつ、WiーFi通信品質評価も同時にできるのが特徴だ。
スマート工場の普及を後押しし、県内製造業の生産性向上を後押しする。