-
業種・地域から探す
サーボ駆動式プレス機
サーボプレスに期待される今とこれから
【執筆】小松技術士事務所 所長 小松 勇
自動車の車体組み立てラインでは多数のロボットが連携して稼働している。複雑な動作や前後工程装置の動きもすべてオフラインで動作設定が行われているのが現状だ。数値制御(NC)工作機械においてもオンボードから始まり今は5軸加工までオフラインでのプログラミングが主流になっている。加工品を機械にセットすれば直ちに加工を開始できる環境が整っている。一方で、登場から25年以上がたったサーボプレスのスライドモーション設定は、依然としてオンマシン方式に留まっているのが現状だ。
サーボプレスが伸びるために新しい機能を求めている
スライドのモーションを変えられるサーボプレスは、多くの利益をプレス加工企業にもたらしてきた。しかし登場から25年以上たった今日、多くの企業がサーボプレスを導入したため平準化されて受注競争が激しくなり、当初ほどの競争力差はなくなったのが課題である。
今は差をつけるにはどう生かすかが課題になっている。サーボプレスはスライドの動きを数値制御できるが、品質改善には限界がある。現場力のあるプレス熟練者が新しいアイデアの機能をサーボプレスに与えてサーボプレス力を増長しなければならない。しかし、現場力のあるプレス熟練者が少なくなった今、誰かがサーボプレスを生かす機能を与える必要がある。
最近のサーボプレス機能と活用事例
①急減速・急加速・急反転でサーボプレスを活用
クランク軸を短く早いサイクルで連続的に急反転させる振動モーションや、大きなクランク角で正逆転させる往復モーションなどがサーボプレスの標準的な使い方となっている。しかし、振動モーションはサーボプレスメーカーによって差が大きい。そもそもプレス機械は工作機械と違い駆動しなければならない質量が大きいため、サーボプレス自体は急加速と急減速が苦手である。
プレス機構部品の慣性力引き下げとサーボ駆動ソフトを改良してスライドを微振動させながら加圧するという加工方法を開発し、冷間鍛造型と材料の間の摩擦抵抗を下げた事例もある。
振動には一方向振動と両振れ振動とがあるのでメーカーによって振動モーションに違いがある。
②スライド下死点位置を高精度で繰り返し再現
サーボプレスも回転部や運動部には潤滑目的の隙間があり、フレームも荷重と熱によって伸び縮みし、加工材厚さも数%は変動する。下死点位置はこれらをすべて合わせると0・5ミリ―1・5ミリメートルほど変動する。
-
写真1 下死点プラスマイナス0・02ミリメートルで再現するサーボプレス(コマツ産機)
コマツ産機はスライド位置をストローク全長にわたってリニアスケールで精密に測定しながら運転し、加工荷重が大きくても小さくても下死点の位置をプラスマイナス0・02ミリメートル以内で繰り返せる(写真1)。したがって生産日が変わってもプレス温度が変わっても、下死点はほぼ一定で生産を再現する。同社には材料物性などが変動しても「加工荷重をほぼ一定」にする機能をサーボプレスに持たせている。
課題と展望
①自社のサーボプレスが他社のように働いてくれない
サーボプレスにはスライド速度と位置を一定以内に再現する機能もあるが、プレス加工には機械の動的精度、ダイクッションの動的精度、クッションのエア圧精度、材料の物性値などスライドモーションソフトでは制御しない変動要因が多数ある。
熟練技能者はこれらの変動要因を経験値から的確に調整しながらサーボプレスを使いこなしている。そのため、他社のようにうまく使えないのはこの現場力に差があると考えなければならない。
②続くコストダウンという課題
サーボプレスを使って絞り、整形、トリミング、ヘリ曲げの4工程を要する加工を1型1加工にまとめたことがある。効果は①プレス機械が1台で良い②型運搬と段替えが1プレスで済む③金型置き場が4分の1になる④作業者は1人で良い—などである。加工コストは4分の1にはならなかったが、工程の短縮はコスト課題の解決に大きな効果をもたらした。
工程を短縮するには加工、金型、プレスの動きを熟知した人材が必要であるが、コスト削減を優先すると、人材育成への取り組みがおろそかになりやすい点が課題だ。
技術開発の動向と進化
①サーボ駆動多軸化による複合加工
多軸加圧は単に加圧軸が増えるだけではなく、応力の複合という効果がある。筆者は過去に6軸複合加工で実験したことがある。金属材料は押す方向に動きやすく、方向が異なると動きにくい。また、引っ張れば切れる材料も圧縮では切れない。この複合原理をサーボプレス加工に応用したのがヤマナカゴーキン、森鉄工所、住友重機械工業、放電精密加工研究所などである。
-
写真2 サーボプレスを活用した複合加工製品「板形状の2段ヘリカルギア」(ヤマナカゴーキン) -
写真3 板形状の2段ヘリカルギアを成形するサーボプレス(住友重機械テクノフォート・ヤマナカゴーキン)
②ヤマナカゴーキンのダブルヘリカルギア複動加工
シングルヘリカルギアの複合加工の事例はアマダ、アイダなどにあるが、ヤマナカゴーキンは2枚のヘリカルギアを1軸上に成形した。特徴は1枚の歯は右に、他の歯は左に傾けている(写真2)。
ヘリカルギアの成形で難しいのは、歯車金型の隅々まで材料を欠肉なく行き渡らせることと、成形品を金型から取り出すことである。2枚の歯の傾きが逆の場合、単純なノックアウトでは対応できず、金型の複合化が必要になる。ヤマナカゴーキンは材料の流れや型構造を含む高度な知見に基づき、最適なモーションを設定・実現している(写真3)。
③放電精密加工研究所のダブルスライド
放電精密加工研究所は独立してサーボ制御される外スライドと内スライドを持つダブルアクションプレスで、スライド位置および前後左右の平行度をマイクロメートルで制御し、鍛造やフィルムの加工に使っている。
CO2削減、カーボンニュートラルのためにサーボプレスに新しい発想を
①サーボ駆動式リンクプレス
コマツ産機にはトグル機構をサーボモーターで駆動するものがあるが、ほとんどの機械式サーボプレスはクランクプレスをサーボモーターで駆動し、リンクモーション、往復モーション、振動モーションを得ている。
クランク軸を振り子式に揺動させ、振動的に動かすのだが、モーター回転子、駆動軸、ギア、クランク軸などの大きな慣性を持つ部品を起動、加速、減速、停止、再起動を繰り返し、モーターを冷やすにも電力を使う。
リンク機構に支点移動機構を加えることでストロークを可変にでき、モーターの反転を使わずに振動モーションを実現できる。これにより、エネルギー損失や電力消費、機械負荷を抑えられ、必要最小限の動作で加工が行えるため、省エネ性能に優れたカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)対応のサーボプレスにできる。
②プレス加工品のトレーサビリティー
大量生産されるプレス加工品は1個1個の追跡が困難とされてきたが、金型入り口でレーザーマーキングを行うことにより、サーボプレスと組み合わせたトレーサビリティー(履歴管理)可能なシステムを実現した。
サーボプレスのこれから
今後のプレス加工現場において求められる課題と、それらを解決するためのサーボプレスの役割について、主に以下の三つの視点にまとめる。
①金型設計とスライドモーションの統合(オフラインモーション作成)
これからのプレス加工では、金型が完成してから機械の動きを調整するのではなく、金型設計の段階でサーボプレスのスライドモーションをオフラインで作成・検証することが求められる。サーボプレスならではの柔軟で精密なモーション制御を最大限に引き出すことを前提に金型を設計することで、より高度な加工が実現可能になる。
②残留応力を抑えた高品質な加工(時効割れの防止)
近年増加している高強度材の加工において、製品に内部応力が残ることで時間が経過してから割れが生じる「時効割れ」が課題となっている。この応力を残さないためには成形時の加工速度を速くするなどの工夫が必要だ。サーボプレスの自在な速度制御機能を活用することで、加工中の速度を最適化し、残留応力と時効割れを防ぐ高品質な成形が期待される。
③非熟練者をサポートする支援ソフトウエアの活用
製造現場での熟練作業者不足が深刻化する中、経験の浅い作業者でも高度な機能を持つサーボプレスを早期に使いこなせる環境づくりが急務である。そのため、複雑なモーション設定などをサポートしてくれる支援ソフトウエア(ティーチングソフトなど)の導入が重要になる。こうしたソフトを活用することでサーボプレスの能力を引き出し、現場の生産性を向上させることが可能となる。
