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泉州地区産業界特集
堺市をはじめ岸和田市や泉佐野市などを擁する大阪府南西部の泉州地域。大阪都心南部と泉州・南河内エリアを合わせた都市経済圏構想「グレーターミナミ」やオープンファクトリーなど、地域をまたいだ取り組みが進む。各地域の特性を生かし、関西国際空港(関空)を起点にインバウンド(訪日外国人)を呼び込むことで、地域の活性化につなげる。2025年の大阪・関西万博を契機とした連携の動きが加速する。
大阪都心部と連携 地域活性化
堺市や高石市、泉大津市、和泉市、忠岡町、岸和田市、貝塚市、熊取町、泉佐野市、田尻町、泉南市、阪南市、岬町の9市4町から成る泉州地域は大阪湾や和泉山地に接する。山と海の幸に恵まれ、水なすや桃などの農作物、アナゴやワタリガニなどの海産物を活用した料理が楽しめることも特徴だ。産業では石油・石炭製品、化学、鉄鋼などが盛ん。全国有数の綿作地でもあり、「泉州木綿」と呼ばれる綿織物が伝統産業として続く。
泉州地域には世界3大墳墓に数えられる仁徳天皇陵古墳を擁する百舌鳥・古市古墳群などの世界遺産、岸和田だんじり祭といった伝統行事など観光コンテンツが充実している。関西の空の玄関口である関空を起点に、世界の有名都市から多くのインバウンドを引き寄せる。さらに大阪駅からJR難波駅や南海本線の新今宮駅をつなぐ「なにわ筋線」が31年に開通すれば、大阪都心部へのアクセスが向上するだろう。通勤圏が広がり、大阪府南部での定住人口の増加が期待される。
周辺地域と観光推進/グレーターミナミ構想
難波や心斎橋などを擁する大阪都心南部と、泉州・南河内エリアを合わせた都市経済圏構想「グレーターミナミ」の取り組みが始まっている。特に観光推進には1自治体だけでの取り組みでは効果が薄く、周辺地域で連携し発展させる取り組みが重要だ。
大阪商工会議所は22年にグレーターミナミに関する報告書をまとめた。23年には南海電気鉄道や関西エアポート(大阪府泉佐野市)、大阪公立大学、泉州地域の商工会議所などで構成される「グレーターミナミ推進委員会」が発足。11月に開かれたシンポジウムでは関連地域の活性化に向けたプロジェクトの成果が報告された。今後、大阪・関西万博に向け、大阪都心部と連携した取り組みを進める。
体験型イベント開催/泉州オープンファクトリー
製造業による地域活性化のための取り組みも進む。泉州地域の製造業などで構成される「泉州オープンファクトリー(OF)実行委員会」は、泉州地域の産業活性化を目的とした体験型イベント「泉州オープンファクトリー」を11月14-16日に開催した。モノづくりの工場見学やワークショップなどの体験、製品の実演や販売、歴史文化の体験ツアーなどを実施。モノづくりをテーマとし、製造業だけでなく農業や飲食、サービスなどの幅広い分野の企業が集まった。開催エリアは岸和田市や泉佐野市、阪南市などの泉州全域に及ぶ。
泉州地域は愛媛県今治市と並んで日本のタオル2大産地と言われる。泉州タオルは織り上がった後に洗いをかける「後ざらし」の工程で、吸水性に優れ柔らかい風合いに仕上げる。泉州タオルの製造・販売を手がける神藤タオル(大阪府泉佐野市)は11月14ー15日にOFを実施。神藤貴志社長は自社のタオルについて「後ざらしの究極形」と自信を見せる。「ガン、ガン」と、けたたましい音が響く製造現場で参加者は熱心にタオルの製造工程を見つめていた。
製造業で働く従業員にとって仕事の現場で一般人と接する機会は貴重だ。泉州OFの実行委員長を務めるスプリード(大阪府貝塚市)の玉田翔太社長は「BツーB(企業間)の視点ではなく、BツーC(対消費者)の視点で現場を見てもらえる」とOF開催の意義を強調する。自社の取り組みを多くの人に知ってもらうことは企業価値を向上させ、参加企業の取引増にもつながる可能性がある。また企業の価値を社員に認識してもらう「インナーブランディング」にもつながるだろう。玉田社長は「25年の万博開催中にも関連イベントの実施を検討したい」とする。
24年度の泉州OFには37社が参加した。多くのOFが全国で開かれる中、泉州OF実行委員会は学生向けのOFとして地元の工科高校の生徒を招いた工場見学なども実施している。こうした取り組みは、就職率や入社後の社員の継続率の向上に貢献している。地域の活性化に向け各地で地道な努力が続いている。