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半導体産業(2024年2月)
半導体デバイスはパソコンや通信機器、家電製品など幅広い産業に欠かせない。生成人工知能(AI)の普及を追い風に、重要性が高まっている。また炭化ケイ素(SiC)などのパワー半導体は電気自動車(EV)の普及拡大を支える。こうした半導体デバイスに加え、製造装置などが存在感を高めている。日本製の半導体製造装置の需要は世界的に高まりを見せ、既に販売額で3兆円規模の市場に成長している。2024年度は過去最高を更新する見込みだ。半導体産業は力強い回復基調にある。
製造装置、初の4兆円
生成AI―成長けん引
米国半導体工業会(SIA)が5日(現地時間)に発表した23年の世界半導体産業の売上高は、過去最高となった22年と比べて8・2%減の5268億ドル(約78兆円)となった。年初に低迷したが下半期に大幅回復を見せ、24年は23年比13・1%増の5953億ドル(約89兆円)の市場成長を見込んでいる。
セグメント別売上高のトップはロジック半導体で、前年比1・0%増の1785億ドル(約27兆円)、2位のメモリー半導体が同29・0%減の923億ドル(約14兆円)となった。車載用集積回路(IC)の売上高は同23・7%増の422億ドル(約6兆円)となり、過去最高を更新した。
SIAは半導体産業における研究開発投資や半導体技術者の強化のほか、貿易障壁の削減などの政府政策の推進が長期的な成長を支えるとしている。
日本半導体製造装置協会(SEAJ)は1月18日、24年度(24年4月―25年3月)の日本製半導体製造装置の販売額が23年度比27・0%増の4兆348億円と、過去最高を2年ぶりに更新し、初めて4兆円超えとなる予測を発表した。24年度は前回(23年7月)発表の予測である3兆9261億円から上振れし、1年前倒しで4兆円を超える見通し。
中国の非先端半導体への積極投資が23年度に引き続き半導体装置需要を下支えするほか、生成AIの普及でサーバー向けのハイエンド半導体需要の増加などが予想より前倒しで生じる。
渡部潔SEAJ専務理事は「生成AIは半導体産業にとって、大きな潮流。大量の画像処理半導体(GPU)やメモリーなどが必要になる」と成長の風に期待を込める。
こうした生成AIは膨大な情報量と投資が求められる。AI向けGPUにはデータを高速処理する広帯域メモリー(HBM)が多く使われ、DRAM各社の事業採算も改善方向に向かい需給バランスも改善方向にある。
一方でスマートフォン用の最先端プロセッサーでは線幅3ナノメートルプロセスの量産採用が開始され、新しい中央演算処理装置(CPU)の投入や生成AI向けの機能に最適化した半導体の登場が見込まれるほか、パソコンやスマートフォンの需要回復も期待できる。
パワー半導体、EV追い風
電圧・周波数の変更や電力変換を行う機能を持つパワー半導体。その性能を左右する素材技術が日進月歩で進化している。SiCや窒化ガリウム(GaN)など、従来のシリコン(Si)に替わる次世代素材が注目され、実装や量産化に向けた動きが本格化している。
SiCパワー半導体はSiと比べて絶縁破壊電界強度が10倍、バンドギャップが3倍で、放熱特性に優れる。電力損失の大幅な低減、機器の小型化、高電圧・高温環境下での安定駆動といった特徴を持ち、電力変換時の損失を低減できる。
GaNは物質特性上、耐電圧性やデバイスの動作周波数などの優位性を持つ。
EVなどエネルギー分野を中心に、大電流・高電圧への対応や消費電力の低減といった需要の高まりがパワー半導体をけん引している。
そのためEVなどの電動車(xEV)の普及による小型・大容量の実現などで市場が広がり、需要が高まっている。