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ねじと関連機器(2024年1月)
ねじは産業や日常生活に欠かせない機械要素部品。自動車や工作機械、建設、医療分野にまで幅広く活用されている。ねじは緩めて取り外しができるため、修理や点検が容易なところが魅力の一つ。ただ、ねじの緩みは時として大きな事故の要因にもなりうる。このためねじの疲労や緩みの把握は重要な課題となっている。そこで今回は東京都立大学の客員研究員で工学博士の晴山蒼一氏に「製品開発におけるねじ締結体の耐久信頼性評価」をテーマに語ってもらった。
安心・安全を守る緩み対策製品
ねじは“産業の塩”とも言われるほど、産業社会に欠かせない存在で多様な分野で活躍している。中でも自動車や建設物など、特に安全性が問われる分野では、ねじの緩み対策は重要な課題だ。メーカー各社は、さまざまな付加価値の高い緩み対策製品を展開し、社会の安心・安全を支える重要な役割を果たしている。
あるメーカーでは、特殊なねじ山形状の緩み止めナットを売り出している。ねじ山の谷底に特殊な傾斜のくさび面を施しており、ボルトの山頂がくさび面に当たることで、緩みを抑えられる。完全に締結するまで、くさび面には接触しないため、締め付け作業時に余分な摩擦を抑えられる。一般的な六角ナットと同様の力で締め付けできる。
同社は、くさび面を施した緩み止めボルトも開発し、量産にも対応している。接着剤を使わないため、接着剤のカスが発生せず、高温下でも使用できる。
緩み止めボルトの開発には、ねじの谷底のR形状にくさび面を作るのが難点だった。これに対して同社では、ねじ山の谷側の傾斜を理論化し、特許を取得。どんな形状のねじの谷にもくさび形状が緩み止め効果を発揮するように開発した。
また別のメーカーでは、ナット上面部に特殊な金属プレートをカシメ加工で固定した緩み止めナットを提供している。ボルトをねじ込んで締結すると、ねじ山の上に金属プレートが乗っかり、摩擦トルクが生じることで緩みを抑制する。このナットは一般的なナットと比べ使用後のへたりが少なく、再使用しても緩み性能を維持できる。
この緩み止め性能に加え、高所やトンネルなど土木建築分野での使用では、平座金と一体化したナットが活躍する。中でも、座金部分をカラー塗装した緩み止めナットは、視認性を高め、現場での部品管理などの作業性に強みを持つ。
こうしたねじメーカー各社の取り組みが産業社会の安全を支えている。