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ねじと関連機器特集
環境ニーズに応える表面処理技術 ねじと関連機器
ねじはモノとモノを締結する重要な役割を担い、さまざまな産業を支えている。部材同士を締結するだけでなく緩めて外せるため、メンテナンスが必要な場面で活躍する。
2026年から本格運用される欧州の炭素国境調整メカニズム(CBAM)に向けて環境規制が強まっている。ねじ業界でも難しい対応が求められる。脱炭素社会の実現に向け環境ニーズが高まる中、ねじ業界各社も環境に配慮したモノづくりを進めている。
脱酸素社会に対応
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アルミ締結部品向け水蒸気被膜の表面処理技術(八幡ねじ 提供) -
亜鉛合金の粉末を活用したメカニカルめっき(エマナック提供)
CBAMは欧州連合(EU)の域外で製造される製品がEU域内に輸入される際に、その製品の製造過程で排出される二酸化炭素(CO2)など温室効果ガス(GHG)の排出量について、EU域内で製造した場合に支払われる炭素価格に対応した支払いを輸入者に義務付ける措置である。
2026年から本格運用を予定しており、現在は移行期間中。ねじ、ボルトなどの製品では、鉄鋼、アルミニウム製のものが対象となる。製品製造のライフサイクル全体でのCO2排出量をいかに管理し、削減できるかが問われる。
こうした環境規制が強まる中で、ねじ関連各社でも製品・技術開発において環境負荷低減の意識が当たり前になりつつある。ねじの耐食性・強度などに影響する表面処理技術においても、環境対応が進められている。
エマナックは高耐食性を追求したメカニカルめっき「エマルーチェ」を提案している。亜鉛合金の配分を工夫した金属粉末を投射して皮膜を形成する。水素脆性の観点でめっきを施すのが難しかった高強度ボルトなどの皮膜形成に訴求している。また皮膜形成の過程で熱反応を起こさないため、加工対象物(ワーク)の性質をそのままに表面処理を行える。焼き付けや液体によるコーティングだと、熱が発生し、ワークの材質によっては性質が変わり使えないものがあった。
同技術は焼き付けが不要なため、製造過程におけるCO2排出を抑えられることに加え、排水も出ない。
八幡ねじはアルミニウム合金への表面処理技術「AlooH(アロー)」を開発した。圧力容器にねじ締結部品を入れ、水蒸気でアルミの表面に水酸化皮膜を形成する。
この表面処理だと薬液を使用しないため廃液が発生せず、環境負荷が少ない。電気も使用しないため省エネルギー化も見込める。
一般的なアルミの表面処理で使われるアルマイト処理と同等の耐食性を持ちながら、約47%コスト削減できる。
近年の自動車の軽量化などでアルミ部材の採用が増えている背景もあり、アルミ部材締結用の表面処理技術として開発した。
締結部品ごとの水蒸気の温度管理に自社のこれまで締結部品開発で培ってきたノウハウが生かされている。水蒸気処理については技術特許を取得している。
水蒸気で皮膜形成するため、液体で皮膜形成するよりも、細長い穴に対して皮膜形成がしやすい。今後は冷却用のパイプなどの需要も見込んでいる。