-
業種・地域から探す
精密・特殊ねじ
ねじは日常生活に欠かせない機械要素部品の一つ。その役割は締結や移動・搬送、高精度な位置決めなど多様にあり、それに応じてさまざまなねじ製品が展開されている。 主要な用途は自動車や建築物、工作機械などがあり、産業社会で重要な役割を担う。中でも精密ねじや特殊ねじは、特殊なサイズや形状、機能性などを強みとし、専門的な分野で活躍している。
専門分野で光る
車部品の小型・軽量化進む
精密・特殊ねじ類はパソコンやスマートフォンなどの電子機器・電子部品などに使用する極小サイズのねじから、建築業界では橋梁(きょうりょう)など大型構造物用の大型サイズのものまであり、特定の業界で活用されている。サイズだけでなく、高強度、高耐食、緩み止め、いたずら防止など、専門的な用途に合わせた機能を備えたねじもある。多種多様なニーズに応えるねじの活躍の場は多岐にわたる。
中でもねじの主要な用途先の一つである自動車業界では、ガソリン車から、電気自動車(EV)の移行が進み、自動車部品の小型化・軽量化への要求は高まっている。
軽量化ニーズへの対応には、自動車の部材に高張力鋼板(ハイテン)を採用するだけでなく、アルミニウム合金などの軽量な非鉄金属や、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などの樹脂材料を軽量化素材として活用する動きが活発化している。また複数の素材を掛け合わせたマルチマテリアル化も進んでいる。
マルチマテリアル化の課題の一つとして異種材料での接合の際に、電位差の異なる金属との接触による腐食の発生がある。ねじメーカーでは、こうした電食対策として締結する部材に合わせたねじの開発がなされている。
あるメーカーでは、アルミ部材への締結用に、アルミボルトの量産体制を整えている。アルミ材は伸びが悪く、鉄のボルトと同様の条件で冷間加工をすると割れや空気孔が生じることがある。こうした課題解消のためアルミボルト専用の加工条件を開発し、鉄鋼製のボルトと同様の形状に仕上げる製造技術を開発した。
ほかにも、メーカーの中にはCFRP製のねじ部品を製造・販売や、特殊な樹脂でできたねじを開発するなど、異種材料や高強度材料に合わせたねじの開発に力を入れている。
すべりねじ、ナットに炭素繊維
ねじは締結だけでなく、回転運動から直線運動への変換や、正確な位置の調節など多様な役割を持つ。こうした役割がある中で送りねじは回転運動を直線運動に変えることで、加工対象物(ワーク)の搬送や位置決めといった場面で貢献している。
メーカーの中には送りねじのナット部分の素材を開発することで、耐久性や摺動(しゅうどう)性を高めた製品を売り出している。
あるメーカーでは、ナット部にリサイクル炭素繊維を使用した転造すべりねじを提供している。ナットの素材はポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂にリサイクル炭素繊維を添加した特殊な樹脂を採用。これにより、耐久性が同社従来比で2倍以上も向上した。さらに、すべりねじの使用時に炭素繊維が削れて発生した摩耗粉がねじ山に流れることで、滑りが良くなり摺動性も高まった。
リサイクル炭素繊維は特殊鋼の専門商社と共同開発。従来品は耐久性を上げるためガラス繊維を配合したPPS樹脂を採用していたが、ガラス繊維から発生する摩耗粉で摩擦が発生し、摺動性を高められないという課題があった。
同製品は切削加工ではなく転造加工で生産することでオーバースペックを避けつつ、コストを抑えて提供が可能となった。直線運動の速さを意識して開発され、高速化に特化したハイリードタイプは6条ねじの仕様の場合、1回転あたり最大で45ミリメートル進められる。さらに、ねじ山をアーチ形状にしたことで接触面積を縮小し、摺動性を高め高効率化にも寄与している。
最近では、同社はグリースメーカーとの共同で同製品専用のグリースを開発した。グリースを使用することで消音性を高めるだけでなく、長寿命化にもつながる。騒音対策といった顧客からの要望に応え開発した。現在は受注対応で販売している。
こうした顧客の要望に応え、製品・技術を進化し続けるねじメーカーの取り組みが産業社会を支えている。