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埼玉県
新型コロナウイルスの脅威は弱まったものの、不安定な国際情勢などを起因とするエネルギーや原材料などの物価高、人材不足など厳しい状況が、埼玉県内の企業にも押し寄せている。そうした中で企業が社会や会社内のエンゲージメント(結びつき)を高めていこうという動きが加速している。持続的な成長や発展を遂げるためには連携が欠かせない。脱炭素化やサーキュラーエコノミー(循環経済)などへの取り組みも求められている。
第45回埼玉県産業振興懇談会―県内中小企業の環境戦略を支援
埼玉産業人クラブは10月30日に「第45回埼玉県産業振興懇談会」を開き、企業経営者と埼玉県幹部が意見交換した。国内外でサーキュラーエコノミー(CE、循環経済)実現に向けた動きが加速する中、中小企業も競争力確保に向けて積極的に取り組む必要がある。経営層からは、サーキュラーエコノミーにどう取り組めば良いのか、さらに県独自の中小企業支援策などについて質問や意見が相次いだ。これに対し埼玉県は、支援策や複数の実績を示した。埼玉県は今後も企業と連携し、さまざまな施策に取り組む姿勢を示した。
循環経済 ムーブメント起こしたい
45回目の開催となった埼玉県産業振興懇談会は、4人の経営者が各社の取り組むサーキュラーエコノミーやグリーン・トランスフォーメーション(GX)などについて講演。その後、埼玉県幹部らと意見交換をした。
目良聡産業労働部長は、意見交換の冒頭あいさつで「サーキュラーエコノミーのムーブメントを起こしたい」との姿勢を示した。
また、「企業の環境への取り組みをCSR(社会貢献)で終わらせるのではなく、ビジネスモデルとして成り立たせることが重要。そうでなければ、中小企業が持続的に取り組むことができない」と指摘。「今までゴミとして捨てていたものを資源として活用する。あるいは資源として再利用することを前提に製品をデザインする。そこにビジネスチャンスがある。そのリーディングモデルを埼玉県から発信したい」と述べた。実現に向け「環境部と産業労働部で強い絆を持ち、連携し皆さまの取り組みを支援する」とし、あいさつを結んだ。
ビジネスモデル成立を後押し 水の再利用/GX相談対応
日さく社長 若林直樹氏 地球温暖化の進行に伴い水の再利用が重要になると考えています。循環型社会を形成する中で、水の再利用についての考えや今後の取り組み方針を教えてください。
産業労働政策課 竹内康樹課長 県は地球温暖化対策の一環として、健全な水循環の推進、雨水などの利用を推進しています。水の有効利用を促進し渇水に強い社会を構築するための方策として、ダムの水資源開発施設の活用のほか、日常生活での節水や雨水・再生水の有効利用があります。雨水・再生水の活用を促進することで、水道水需要を抑制しながら、水資源の有効利用と緊急時に利用できる水の確保の推進が必要と考えています。県としては、県民に対し雨水利用の普及啓発を図るため、県ホームページで雨水タンクの設置に関するチラシや雨水利用施設設置の補助制度・県内市町村一覧などを掲載しています。
また2014年に雨水の利用の推進に関する法律が制定されました。雨水・再生水利用施設整備に関する財政支援は、下水道事業などの流出抑制の観点からの補助金と税制上の優遇のみです。今後も雨水利用などの普及啓発を図りながら、更なる雨水・再生水利用施設整備の推進に向け、全ての施設整備に対する財政支援について国へ働きかけを行います。
若林氏 多くの企業がGXにどう取り組めば良いか分からず悩んでいます。各地域に「GXコンシェルジュ」を配置し、企業の相談に応じる環境を整備するのはどうでしょうか。
産業創造課 坂入康昭課長 GXの対象は、設備の省エネや太陽光発電などの創エネ、電気自動車の導入、省エネ性能の高い住宅供給による化石燃料使用量の削減、バイオマス資源や廃棄物を活用した製品生産といったサーキュラーエコノミーなど、多岐にわたります。GXは分野も手法も幅広く、仮にコンシェルジュを設置してもワンストップで相談に応えることが難しいと思われます。そのため県では、例えば省エネ分野において県環境部で「省エネナビゲーター」による事業所の省エネ診断を実施し、創エネ分野において民間事業所での太陽光発電や熱利用のための設備などの導入への補助を実施しています。またサーキュラーエコノミーの分野において、埼玉県産業振興公社に設置した「サーキュラーエコノミー推進センター埼玉」で県内企業を支援しています。このようにGXについては、分野ごとに相談窓口を設けることによって企業のニーズに対応できるよう支援しています。