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山川百合子草加市長に聞く―草加のモノづくり力を未来へ
子どもがまちづくりの主人公
市は埼玉県東南部に所在し、東京都心まで20キロ圏内に位置する。交通アクセスに優れ、東京近郊のベッドタウンとして発展してきた。近年は子育て支援を強化し、未来を担う次世代の育成を見据えた取り組みを進めている。山川百合子市長に今後の施策などを聞いた。
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埼玉県草加市長 山川 百合子 氏 -
山川市長と高橋理絵副市長(左)のタッグで草加市産業界を振興 -
―就任から一年が経過しました。これまでの取り組みを教えてください。
「草加市の現状把握に取り組み、市が進むべき方向性について議論を重ねた。草加市は2023年度の施策方針として『福祉政策』『子ども政策』『経済活性化』『まちづくり』『市民が主役』の5分野を示した。私はこの五大戦略にプラスアルファとして『対話のために飛び出す市長』を掲げた。この一年は市内のいろいろな場所に繰り出し、市民との対話を重要視してきた。今後も草加市のすべての市民の自由と平等と公正を保障する『だれもが幸せなまち』の実現に努める」
―子育て分野を重視する背景を教えてください。
「子どもは草加市の未来を明るくするパワーだ。草加市は、子育て世代に選ばれるまちづくりに力を注いでいく。新たな取り組みとしては、子育て世帯の経済負担の軽減に向け、24年度に『こども医療費無料化制度』を入院・通院ともに18歳まで拡大する。このほか、子どもが実現したい取り組みを支援する『そうかこども基金(仮称)』を設置したい。一例だが、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に関する活動をしたい子どもがいた場合、草加市が資金面でサポートすることを考えている。子ども自身がまちづくりの主人公であることを実感してもらい、子どもが持つ可能性を引き出す環境を整備したい。すでに同様の取り組みで先行している高知市を本年度視察しており、今後内容を詰めて24年度には見える形にするのが目標だ」
―他方、窓口業務でデジタル変革(DX)を進めています。具体的内容は。
「市役所でのスムーズな手続きを実現するため、『そうかスマート窓口』として、デジタル技術を用いたさまざまな便利を実現した。ウェブ上で窓口の混雑状況や待ち人数が分かるほか、人工知能(AI)が目的の窓口を案内してくれる。さらに複数窓口で手続きがある際は、ほかの窓口を一括予約し『窓口案内書』を発行し、円滑な手続きをサポートする仕組みを埼玉県の自治体で初めて導入した。待ち時間削減などにつながるとして市民からも好評だ」
―地域経済活性化や産業振興の取り組みは。
「草加商工会議所等で構成された実行委員会と連携し草加モノづくりブランド認定事業を実施している。また、市内企業が生産する優れた工業製品などを紹介するとともに、製品を販売し産業の発展を図る『モノづくりダイレクトセール』を開催した。このほか、市内に所在する建物を改修する際、対象となる改修工事の一部経費を補助する『市内リフォーム補助事業』を実施している」
「『そうかリノベーションまちづくり』では、地域課題の解決を目指し、地域資源を活用し草加市の新たな魅力となるビジネスの創出を目指している。空き家や遊休不動産を活用してカフェやレストランをオープンするなど、地域密着型ビジネスとして浸透し、地元の人にも愛されている。これらの取り組みにより、草加市内でにぎわいが出てきた」
―草加市は市長と副市長を女性が務めています。女性活躍推進の取り組みは。
「市内の女性経営者との意見交換会を定期的に実施中だ。女性経営者を草加市としてできる限りサポートする。女性活躍推進の一環で、子育てと両立可能な創業を支援するため、草加市女性創業スタートアップ事業『わたしたちの月3万円ビジネスin草加』を開催しており、募集人員を上回る申し込みがあり好評を集めた」
―埼玉県を代表する銘菓「草加せんべい」ですが、事業承継が課題となっています。
「少子高齢化の影響などで後継者不足が顕在化し店舗数は減少傾向で、切実な課題だ。草加せんべいを製造するには高度な技術・技法が欠かせない。長期の修行が必要で、後継者の育成も一朝一夕にはいかない。こうした中、パッケージに工夫をこらしたり、ほうじ茶味や大豆プロテインを練りこんだ独自の材料を加えた新しい草加せんべいを開発したり、事業者らは持続成長に向け前向きに取り組んでいる」
日本一『行動する会議所』の実現に向かって
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草加商工会議所 野崎 友義 会頭
草加商工会議所は「地域経済の発展なくして、街の発展なし」の一念で、1992年4月に設立。地域総合経済団体としての商工会議所の使命を深く認識し、誠意と情熱をもって地元商工業の経営改善と地域振興、伴走型支援にまい進してまいりました。
現在、わが国の経済情勢は、コロナ禍からの社会経済活動の正常化が進みつつある中、緩やかな持ち直しが続いている一方で、世界的なエネルギー・食料価格の高騰や欧米各国の金融引き締め等による世界的な景気後退懸念など、我が国経済を取り巻く環境には厳しさが増しています。そして、地域経済に目を向けると、慢性的な労働力不足や後継者問題、多様化する顧客ニーズへの対応といった課題が山積しています。こうした現状に立ち向かうためには、企業経営者の集まりである商工会議所会員事業所の“団結力 ”と“行動力”、そして、知恵を生み出す“事業継続力”が必要です。
このような中、当商工会議所では、市内企業の事業承継問題の現状把握やPR動画を利用した地元企業の魅力発信事業、第三国定住難民の就労マッチングを含めた外国人労働力の活用に向けた調査研究を実施。さらに、多様化する経営課題に対応するため、専門家によるワンストップ相談窓口『Sou―ai拠点』を常設し、創業支援事業や経営革新チャレンジ事業を展開し、全国屈指の支援実績をあげています。
また、持続可能な開発目標(SDGs)も積極的に推進し、昨年スタートした自走型のコミュニティフリッジ(公共冷蔵庫)事業は全国から多くの取材や視察をいただいているところです。
引き続き、地域経済の活性化に向け、草加商工会議所は『行動する会議所』のスローガンの実現に向けて、より一層精進してまいります。引き続き、皆さまのご支援、ご協力を賜りますようお願い申しあげます。
大和製作所/減速機の診断・解析サービス始動
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社長 澤田 良敬 氏
大和製作所は変速機や半導体製造装置を生産するメーカー。1936年に澤田良敬社長の祖父が東京都大田区で創業し、60年に埼玉県草加市に工場を建設した。澤田社長は現在、草加八潮事業所防犯連絡協議会副会長など草加市関連の要職を務める。
変速機はポンプ用や製鉄所の圧延用、クレーン用をはじめ、鉄道車両用、化学プラントの原材料の押出機用など幅広い分野で使われている。半導体製造装置は自社製品開発の新規事業として澤田社長が同社入社後に立ち上げた。窒素ガスを封入しての半導体の加熱中の酸化を抑制する窒素リフロー装置などを開発・販売する。
新たな取り組みとして、減速機の診断・解析サービスに乗り出す。「資格を持った診断員が専用車を使って全国をキャラバンして予防保全する」と澤田社長は新事業に期待する。
ロータリー/卵の殻を使ったボールペンを開発
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社長 原 恵美子 氏
ロータリーはプラスチック圧縮成形を手がける製造業として1960年に創業。現在はマーカーや医療検査用具、釣り具などの射出成形のほか、液晶バックライトパーツなどの薄物から、台車や什器の底面に取り付けるキャスターのような厚物まで扱う。中でもキャスターは売上高の約7割を占める主力製品だ。
そんな同社が注力するのは環境に配慮した製品作り。埼玉県内のベンチャー企業と連携し、卵の殻を使用しプラスチック材の使用量を削減したボールペンを22年に開発・製造した。「廃棄予定の殻がペンとして生まれ変わる、環境配慮型の製品だ」と原恵美子社長は説明する。乳白色の優しい色合いが特徴で、文具メーカーの販促品として提供すると好評を集めた。「消費者から使用済みプラ製品を回収して商品として提供したい」と展望を語る。
長谷川製作所/神社仏閣の授与品・記念品を製造
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社長 長谷川 義貢 氏
長谷川製作所は神社仏閣へ授与品や記念品の材料を納めている。長谷川義貢社長の祖父が1937年に創業した。宮城県に工場を持ち、創意工夫を凝らした企画力で提案する。「(商品ではなく)作品をつくれ」と長谷川社長は指示を出す。縁起物入りおみくじなど大ヒットの実績も多い。参拝者の幸せを願うこと、適正な価格で提供し会社を継続すること、納税をすることをモットーとしている。
草加商工会議所の野崎友義会頭の勧めで障がい者支援に取り組んだ。貴重な戦力に育ち、「障がい者と働くことで社風が大きく変わった」と感謝する。「やってみてください、楽しさがわかってくる」と長谷川社長は笑顔で勧める。また、今年からミャンマーの難民2人を雇用。埼玉県SDGsパートナーに登録しており、多様性のある働き方も進めていく。