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県内中小企業の経営戦略を支援 第46回埼玉産業振興懇談会②
サーキュラーエコノミーに取り組むメリット
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古郡建設 社長 古郡 栄一 氏 -
産業創造課 課長 坂入 康昭 氏
古郡建設 古郡 栄一社長 サーキュラーエコノミー・循環経済に取り組むべきという話を聞くが、企業がサーキュラーエコノミーに取り組むメリットを教えてください。
産業創造課 坂入康昭課長 カーボンニュートラルや枯渇危機にある資源の効率的利用が叫ばれる中、サーキュラーエコノミー・循環経済の推進は、ヨーロッパをはじめとした世界の潮流となっており、例えば、EUではエコデザイン規則やELV(使用済み自動車)規則のような法制化の動きがあります。日本でも直近では2024年8月に「循環型社会形成推進基本計画」が閣議決定されましたが、この計画の副題(サブタイトル)は「循環経済を国家戦略に」であり、今後法制度の改正などルールが変わっていきます。メリットはリスクへの対応とチャンスの両面から、中長期的な事業の継続性と競争力の確保につながることです。リスクへの対応とは将来的な資源調達難で事業が継続できなくなるリスクや、カーボンニュートラルへの対応のために新たなルールが設けられ、ビジネスから排除されてしまうリスクを未然に防止対応できることなどです。チャンスとは、関連市場規模が日本国内で20年の50兆円から、30年の80兆円、50年の120兆円に拡大すると見込まれる中、新しい市場に参入できることです。
古郡氏 県内中小企業の人手不足は深刻な課題となっています。埼玉県として、どう取り組んでいますか。
産業労働政策課 内田貴之課長 本県は「人口減少・超少子高齢社会への対応」という歴史的な課題に直面し、生産年齢人口が減少する中、多くの企業で深刻な人手不足への対応が急務となっています。24年4月の「強い経済の構築に向けた埼玉県戦略会議」において、新たに「人手不足対策分科会」を設置し、マッチング支援などの「人材確保」、リスキリングなどによる「労働の質の向上」、DXなどによる「生産性向上」の3本柱で検討を進めています。9月の第2回の戦略会議までに、分科会を3回開催し、戦略会議メンバー以外の幅広いステークホルダーの皆さまにも加わっていただき、知恵を出し合い、議論を重ねてきました。そこで全ての業種を含む人手不足対策に関して各構成団体が社会実装する取り組みについて取りまとめを行いました。今後も分科会で引き続き全ての業種を対象として、人材確保、労働の質の向上、省力化の取り組みを検討します。
強い経済を築くための体制構築
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日本伸管 社長 細沼 直泰 氏 -
産業労働政策課長 内田 貴之 氏 -
雇用労働課長 高橋 利維 氏
日本伸管 細沼直泰社長 コロナ禍の経験から、県内中小企業のBCP対策を含めて、有事の際に共存を図れる強い経済を築くための体制構築が不可欠だと考えますが、県の対応はどうですか。
産業労働政策課 内田貴之課長 先ほどご紹介した「強い経済の構築に向けた埼玉県戦略会議」は当初、「新型コロナと共存できる強い埼玉県経済」を目指して「労働力の流動性」「販路開拓」「サプライチェーン(供給網)の維持・確保」「業務継続計画(BCP)」「デジタル化推進」の各議題に取り組みました。新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類相当になってからは、テーマを「ポストコロナ時代をオール埼玉で切り拓(ひら)く戦略的取組」に変えて議論を発展させています。新型コロナ対策のフェーズや社会ニーズの変化に応じてテーマを機動的に設定してきましたが、今後もあらゆる有事の際に戦略会議の枠組みを最大限に活用し、強い経済の構築に取り組みます。
細沼氏 M&A(合併・買収)による事業承継の支援には、どう取り組んでいますか。
産業支援課 神野真邦課長 国や商工団体、金融機関、士業団体などと「埼玉県事業承継ネットワーク」を構築して支援に取り組んでいます。親族内承継なら埼玉県産業振興公社に配置した「事業承継アドバイザー」が対応し、M&Aの場合は国が設置した埼玉県事業承継・引継ぎ支援センターの専門家に対応してもらいます。
産業振興公社 神田文雄理事長 公社では事業承継に関するご相談に「事業承継アドバイザー」か「よろず支援拠点コーディネーター」が対応します。M&Aの場合は課題を整理して明確にするところまで支援した上で、埼玉県事業承継・引継ぎ支援センターに取り次ぎます。24年度上半期だけで100件近い案件を取り次ぎました。
細沼氏 人手不足を課題とする中小企業の悩みに応える支援策はありますか。
雇用労働課 高橋利維課長 企業の人材確保を支援する「企業人材サポートデスク」をさいたま、川越、熊谷の3カ所に設置しています。ここでは民間企業の人事労務や、ハローワークでの相談業務を経験した専門家を配置し、求職者をひき付ける求人票の書き方や、多様な人材が応募できるような勤務条件の見直し方法などの助言を行っています。また県では規模や地域が異なる3種類の面接会を開いていますので、この機会もぜひご利用ください。
製造業の技術革新支援策
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サン精密化工研究所 社長 村上 守 氏 -
埼玉県産業技術総合センター長 福田 保之 氏
サン精密化工研究所 村上守社長 持続可能な企業成長を目指す中でDX戦略の策定は重要であるものの、企業単体での取り組みは難しい部分もあるが、DX戦略策定に係る支援はあるか。
産業振興公社 神田文男理事長 今年度、産業振興公社では新たにDXコンシェルジュ(オーダーメイドタイプ)を配置し、AI・IoTなどの活用で業務・組織の変革を目指す企業に対し支援を実施しています。今年度は製造業やサービス業、建設業など集中的に支援を行う15社を決定し支援に取り組んでいますが、それ以外の個別の相談にも対応しています。
村上氏 埼玉県における製造業の技術革新の支援策の概要をうかがいたい。
産業創造課 坂入康昭課長 製造業の技術革新の支援策として、本県では技術開発フェーズから社会実装フェーズまで各成長フェーズに応じた支援を行っています。技術開発フェーズへの支援としては、将来の成長が見込まれる技術や製品の開発を対象に補助金を交付しています。社会実装フェーズへの支援は、製品の市場投入や量産化などを目指す企業に対し、資金調達のためのアドバイザー派遣や、技術・製品の改良や実証試験のサポートを実施しています。
産業技術総合センター 福田保之センター長 産業技術総合センターでは、技術革新に取り組む製造業に対して、さまざまな支援メニューを用意しています。基本的な技術相談に始まり、センターが保有する各種機器を活用した試作加工や製品の品質評価・試験などを行っています。また、SAITECが保有する技術シーズを活用し、製品化に向けた加工技術および材料の開発など、企業の皆さまの具体的なニーズに対応した受託研究も実施しています。
村上氏 企業の人材確保に対し、即戦力となるような人材の確保支援などがあれば教えてほしい。
雇用労働課 高橋利維課長 県では、埼玉県産業振興公社内に「プロフェッショナル人材戦略拠点」を設置し、中小企業の新たな事業展開に必要な即戦力の人材確保を支援しています。拠点に中小企業診断士や社会保険労務士をはじめとした経験豊富な専門家を配置し、セミナーの開催や事例集の作成、個別相談を行っています。また、新たな事業展開を考える企業と、事業に必要な知識や経験をもつ即戦力となる人材、いわゆるプロフェッショナル人材を民間職業紹介事業者と連携してマッチングをしています。
