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第46回埼玉県産業振興懇談会 持続可能な成長へ レジリエント経営/経営者は語る②
強固な財務・収益基盤構築が必要/日本伸管 社長 細沼 直泰 氏
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日本伸管 社長 細沼 直泰 氏
当社はアルミニウムのパイプや棒、アルミ部品の製造、さらには表面処理や組み立て加工を手がけており、1967年の創業から57年がたちます。埼玉県の新座市と所沢市をまたぐ格好で本社・工場を構えているほか、福島県西郷村とタイにも工場があります。祖業であるアルミの引き抜きは、加工精度が比較的高いことと、長尺物にも対応できるノウハウが持ち味です。この引き抜き加工に始まり、表面処理や機械加工、組み立てへと事業を展開してきました。
売上高は44億円、グループ全体では60億円ほどです。従業員は埼玉の本社・工場が103人、福島が106人、タイが90人の合計299人です。
最近のトピックスとしては、創業以来初となるM&A(合併・買収)を9月24日付で行いまして(群馬県で精密パイプの加工などを手がけている)従業員8人の会社をグループに加えました。
簡易版事業継続計画の策定を推奨
事業継続への取り組みでは、当社がまとめた実行策が(中小企業のための簡易版事業継続計画と位置づけられる)「事業継続力強化計画」として経済産業相の認定を21年に受けました。策定作業はBCPより簡便で、認定されれば税制優遇措置や金融支援、補助金の加点といった特典も得られるので、事業継続力強化計画の策定がこれからの企業にはお勧めです。
11年の東日本大震災では、福島の白河工場が被災して断水が1週間以上続きました。白河工場は震災の被害から5日間で完全復旧にこぎ着けましたが、実はこの間に転注を考えていたお客さまもいたそうです。下請け業務の厳しさを痛感させられました。一方では急を要する設備の復旧や燃料の工面などで、関係者に多大なご支援・ご協力をいただき、取引先は大事にしなければ、とあらためて実感しました。
今年も7月31日の大雨で埼玉の本社工場が、軽微ですが浸水する被害に遭いました。頻繁に起きる自然災害への備えには、実際に経験しないとなかなか気付かないこともあり、経験者の実体験を聞くと、多くのことを学べると思います。
08年のリーマン・ショックや20年以降のコロナ禍も、当社の事業継続を脅かす要因となりました。特にリーマン・ショックは、私の社長就任と同じ年の出来事で、当時、新しく策定した中期経営計画を実行できなくなるほど大きな影響を受けました。(事業継続の阻害要因としては)気候変動に伴う気温の上昇も、加工の品質に影響します。材料を供給してくれるサプライヤーの事業撤退も、深刻な問題となります。これらの外的要因に対抗するには、事業ポートフォリオを分散させる必要があります。
当社は事業領域を広げようと自動車や電動工具、日用品などの分野に挑戦し、ポートフォリオの分散を進めました。この結果、売り上げ構成で30年間にわたって1位だったOA機器関係の部品を、自動車関連が昨年抜いて首位に躍り出ました。トヨタ自動車系のメーカーが電動ハッチバックのシリンダーに使っている部品2点を、月に100万個ほど製造しています。
一方、内的要因としては火災事故や病気などによる主要スタッフの離脱、設備の老朽化などがあります。当社は防災訓練のほか、従業員の健康を守るため、課長以上に人間ドックの受診を励行しています。設備の老朽化に対する備えとしても(交換用の)部品の確保や設備の更新に力を入れています。
このほか経営トップの健康問題にも、目を向けなければなりません。万一の時にも、2ー3年間はやっていける財務基盤や収益基盤を築いておく必要があると思います。まさに「備えあれば患(うれ)いなし」の格言を肝に銘じて対応していきます。
◆◆◆ 企業データ ◆◆◆
- 設立年:1967年
- 資本金:8375万円
- 職種・事業内容:アルミ引抜管・棒やアルミ部品の製造、アルマイト処理
- 本社所在地:埼玉県新座市中野1の10の22
- 電話:048・477・7331
縦割りから連携型組織へ移行/サン精密化工研究所 社長 村上 守 氏
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サン精密化工研究所 社長 村上 守 氏
当社は1963年に創業し、今年で62年目になります。創業当初より小物の精密成形品の製造と販売を行ってきました。工場は久喜市に本社工場と清久工場があり、海外は上海工場、タイ工場があります。売り上げは国内が22億円、グループ全体で52億円になっています。カテゴリー別の売上比率はカメラ関連が38%、車載関連が29%、ゲーム機が15%、OA機器が5%という比率になっています。
特徴は金型製作から成形量産までをワンストップで対応していることです。通常は金型製作会社と成形会社が別々ですが、ワンストップ対応することで効率の良いモノ作りができ、短納期・低価格での対応が可能になります。小物の精密成形品に特化し、短納期・低価格での対応をしています。
私は2011年6月、7期連続営業赤字のなか48歳で社長に就任しました。その翌年、12年に創業者の鷲尾政男が逝去し、同年、創業世代の取締役全員が退任しました。11年に設立したタイ工場は同年に発生した大規模な洪水でお客さまが被害を受け、仕事の計画が白紙になりました。社長就任から経験したことのない大きな問題を対応しなければなりませんでした。
当社のレジリエンス経営については、創業者の鷲尾政男の経営理念「企業は永遠なりー長期安定成長を持続するために、適正規模での効率経営に努めるー」を私も継承しています。実際に現場を見て、知って、市場動向に合わせた戦略を立てて実行するには、適正規模でないとできないと考えています。
私の経営の考え方として、強いマインド、ビジョン、事業継承、家族・友達が大切だと思っています。強いマインドとはやるべきことは躊躇なくやり切り、常に先頭に立って全員敵に回してもやりきることが大事という考えです。ビジョンは市場の変化に合わせて方針、戦略を策定して、定期的に進捗レビューを行い、都度、直接明確な指示を出します。任せっぱなしで結果は出せません。進捗レビューは常に現場、現実、現物をわからないとできないと思っています。事業継承は、幹部に私の会社経営の考え方を言葉だけではなく、レポートにして共有しています。世代交代の環境をつくるのは社長の重要な仕事です。そして心が折れそうな時にも家族や友達の存在があったことで心が安らぎ、乗り越えてこられたと思っています。
国内・国外版BCPマニュアル作成
問題に対して実行した事は、規模の検討を行い縮小しました。将来に向けた戦略として組織力を強化し、縦割り組織から連携型組織への移行を行いました。生産プロセスの見直しで新規立ち上げ部品は、下流部の意見や要望を上流部が取り入れ、問題を上流で解決し、下流での生産ロスを低減していくプロセスへの移行を行いました。小ロット・新規カテゴリーへの受注として小ロット生産や技術的に困難な仕事を積極的に受注しました。コンサルタントを起用して、車載関連を新規受注しました。当社の費用負担で金型、サンプルを作り、お客さまへの提案を行い、受注量の拡大をすることができました。新規受注、技術向上のための必要な投資も積極的に行いました。
BCPについては国内版、海外版のマニュアルを作成しています。最優先は従業員の安全確保です。問題発生時はグループ全体で対応ができるよう、設備の統一化、情報の共有化を行い早期復帰ができる体制をとっています。火災時に対応するための避難訓練を定期的に実施しています。今後の外部要求のレベルアップに対しては、埼玉県産業振興公社からのサポートを受ける予定です。
◆◆◆ 企業データ ◆◆◆
- 設立年:1963年
- 資本金:8100万円
- 職種・事業内容:射出成形用精密金型と成形品の生産・販売
- 本社所在地:埼玉県久喜市所久喜707の4
- 電話:0480・21・5616
