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業種・地域から探す
力強い経済を実現 さいたま市
埼玉県の県庁所在地さいたま市は、政令指定都市初のデジタル地域通貨を7月にスタートした。キャッシュレス決済の導入により、地域経済の活性化だけでなく、データを活用した政策立案などにより市民サービスの向上などが期待できる。また雇用機会の拡大や財政基盤の強化を目的として、戦略的な企業誘致を展開。受け皿となる産業集積拠点の創出に向けて、市内6地区で取り組みを進めている。清水勇人市長は「より一層『住みやすい・住み続けたい』と感じてもらえる市民満足度の高い街にしていきたい」と力を込める。
政令市初のデジタル地域通貨 産業集積拠点を創出
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さいたま市長 清水 勇人 氏
―原材料価格の高騰や企業の人手不足が続く中、市内の経済の現状と今後の見通しは。
「直近の地域経済動向調査の結果では、景況DI値は7―9月期にマイナス20・2で底入れし、10―12月期には持ち直す見込み。原材料価格の高騰や企業の人手不足は、多くの市内企業にマイナスの影響を及ぼしている。原材料価格高騰の影響が出ている市内企業の割合は、53・8%にのぼり、販売価格への転嫁状況は業種によってばらつきがあるものの、全体として進展が見られている。特に製造業においては事業者の62・1%が原材料価格高騰の影響が出ていると同時に価格転嫁も進み、5割以上転嫁できている事業者は約半数となった」
―雇用は。
「雇用人員を不足とみる事業者の割合が22年7―9月期以降、継続して4割を超えており、人手不足感が強い状況が続いている。一方、市内企業の人材確保策として賃上げが進んでおり、今年度は3%以上の賃上げを実施した事業所の割合が、昨年度に比べて8・6ポイント上昇し、51・5%に達した。本市も物価高を克服し、力強い地域経済を実現するためには、価格転嫁、賃金上昇及び人手不足の解消が課題。今後示される国の総合経済対策の詳細も含め、引き続き、市内企業などの動向を注視する」
―政令指定都市初の地域通貨「さいコイン」「たまポン」を含む「さいたま市みんなのアプリ」が7月末にスタートしました。
「地域経済の冷え込みや民間消費の域外流出、キャッシュレス決済手数料の流出、地域コミュニティの希薄化といった地域課題を解決する手段の一つとして、デジタル地域通貨が有効と考えた。またデジタル地域通貨は、データを活用した政策立案などの推進による市民サービスの向上や、庁内業務の効率化による行政コストの削減にも寄与すると考える。デジタル地域通貨はマネーの『さいコイン』とポイントの『たまポン』の2種類ある。『さいコイン』は、快適・便利にご利用いただく地域のキャッシュレス決済であり、『たまポン』はさいコインのチャージや健康活動、地域のコミュニティづくり、環境活動などで付与される地域ポイント。ポイントはそれぞれ『さいコインを使ってもらいたい』『健康になってもらいたい』『皆さんと一緒に地球環境を守りたい』といった市からのメッセージである。このポイントが行動変容のきっかけになり、市民の皆さんとさいたま市をより一層『住みやすい・住み続けたい』と感じてもらえる市民満足度の高い街にしていきたい。また『たまポン』の利用は市内の商店街などの中小の店に限定しているので地域経済の活性化にもつながる」
―今後は。
「アプリ機能の拡充やポイント還元キャンペーン、イベントでの周知など、様々な取り組みを進めていく予定。多くの市民から要望がある現金チャージを12月1日から開始する。利用者間でさいコインを送金することができる機能も導入準備を進めている。今年度中にはデジタル地域通貨でシェアサイクルクーポンを購入できるようになるなど、民間サービスとの連携も進めていく予定である」
―市は多くの企業と包括連携協定を結んでいます。協定の狙いや今後の方針は。
「本市では企業などと市がそれぞれの資源や特色を生かしながら、多岐にわたる分野において市民サービスの向上と地域の活性化をることを目的として、2024年10月現在、22件の包括連携協定を締結している。この協定を基に、地域課題の解決やより良い市民サービスの提供に向けて様々な連携取り組みを実施している。行政の資源やノウハウなどが限られる中で、公共サービスに対する市民ニーズに的確かつ持続的に応えていくためには、厳しい競争の中でノウハウを積み重ねた企業等の力を最大限に活用していくことが重要となっている。今後も、パブリックマインドがあり、多種多様なアイデアやノウハウを持っている企業などと幅広い分野での連携を進めていきたい」
―市は企業誘致の受け皿となる産業集積拠点の創出に向けて取り組んでいます。
「市内6地区で産業集積拠点候補地区を位置づけ整備を推進している。現在6地区のうち5地区で施設建設や都市計画手続きに向けた動きなど、事業の進捗が見えてきた。浦和インターチェンジ西側地区では物流施設の立地が決定し、来年度の竣工に向けて施設整備が進んでいる。首都高北伸・宮前地区では都市計画の手続きに入っている」
―今後は。
「本市に対する企業からの立地ニーズは高く、一層の企業進出を促進するために、進捗中の地区に代わる新たな候補地区の選定も今年度から検討に入った。選定にあたっては本市の優位性がいかんなく発揮できるよう、また企業ニーズに応えられるよう交通利便性の高さ、土地利用状況などを踏まえながら検討を進め、切れ目ない事業推進を図っていく」
―浦和駅と大宮駅の周辺で進めている街づくりの進捗状況と今後の見通しは。
「市の総合振興計画基本計画では、大宮駅周辺・さいたま新都心周辺地区と浦和駅周辺地区を本市の二つの『都心』として位置付けている。浦和駅周辺の再開発事業として現在は、浦和駅西口南高砂地区第一種市街地再開発事業を実施している。事業年度は13年度―27年度。23年1月より新築工事に着手し、26年6月に竣工予定。施設建築物の規模は地上27階・地下2階。高さは約99メートル。主な用途は住宅525戸、店舗・事務所、駐車場。公共施設として、市民会館うらわと子育て支援センターうらわが機能移転する。駅前広場(約4300平方メートル)や都市計画道路浦和西口停車場線、高砂岸町線の整備も行う」
―大宮駅周辺は。
「東口で『大宮門街』が22年3月に、今年の7月15日には西口で『大宮サクラスクエア』がそれぞれ竣工している。これらの施設は、大宮のまちづくりのリーディングプロジェクトとして、多様なヒト・モノ・情報が集結する東日本の対流拠点『大宮』を形成する、大変重要な施設になると認識している。『大宮サクラスクエア』は大宮駅西口第3―B地区第一種市街地再開発事業により整備された。
13階建てのA棟、28階建てのB棟からなる2棟の建物が建設されており、2棟合わせて582世帯の住宅が整備され、現在入居が進み、商業区画も順次オープンし、新たな賑わいが生まれることが期待される。第3―B地区に隣接する第3―A・D地区も商業、業務、住宅の複合用途の再開発ビルの建設が予定されるなど、順次西口のまちづくりが進められている。また東口の大門町3丁目中地区では、昨年12月に埼玉県で初となる都市再生特別地区の制度を活用した再開発事業の都市計画決定を行った。オフィス主体の施設計画となっており、東日本の業務中枢機能の更なる集約に寄与するものと期待している」
