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製造品の変化に対応/SIerの存在感高まる
100年に一度の大変革期に突入している自動車産業では、電動化への対応が加速している。トヨタ自動車は電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)など全方位で駆動装置(パワートレーン)を設定する。国内では電動化の主役はHVやPHVだが、世界情勢は中国を中心に急速にEV化が進む。これに合わせ、自動車に使われるさまざまな部品やユニットの形状は複雑化するうえ高精度化が進む。
こうした動きに対応するため、サプライヤーでは生産設備の更新を進める。ただし、現状はEV化への過渡期とみて、既存設備を活用しつつEV部品向けに搬送機器や保持機器などの改造ニーズが高まっているという。また、多品種少量生産化の動きもあり、生産ラインをセル化する要求も高まっている。既存の生産ラインを分割し、機械本体1台に対し、ロボットを組み合わせてセル生産ユニットとして活用する例も数年から広がっている。
中部地区は大手だけでなく、中堅・中小企業でもロボットや自動化設備を積極的に活用してきた。こうした自動化ニーズに対応できる優れたSIerや機器メーカーの層も厚く、産業の高度化を支えてきた。
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豊橋技科大と近藤製作所が共同開発した産業用ロボ向け非接触電力伝送ロータリージョイント
豊橋技術科学大学の田村昌也教授らの研究チームと近藤製作所(愛知県蒲郡市、近藤茂充社長)は、産業用ロボット向け非接触電力伝送ロータリージョイントを共同開発した。従来主流となっている接触式スリップリングを使用した場合に比べて、ロボットの動作によるノイズの影響を受けにくく、高耐久性を実現した。性能試験を進めて実用化を目指す。
小型で高効率な磁界方式の非接触電力伝送機構を新たに開発。一般産業用機器の制御で使われる直流(DC)電圧24ボルトを維持した状態で、出力12ワットを達成した。電力とともにロボット側、ツール側の双方向で信号通信のやりとりができ、ツール側にあるソレノイドバルブなどの制御も可能とした。今後、電磁環境適合性(EMC)などの性能試験を行い、実用化を検討。将来は外販を視野に入れている。
現在の主流となっている接触式のスリップリングを使用したロータリージョイントは、ロボットの動作によって摩耗し、耐久性が低下しやすいことなどが課題だった。
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スター精機がSIer向けに拡販に取り組むロボット走行軸ユニット「トラックモーション」
スター精機(愛知県大口町、塩谷陽一社長)は、ロボット走行軸ユニット「トラックモーション」を発売した。グループ会社でSIerのスターテクノ(愛知県岩倉市)での実績を基に製品化した。レール上をロボットが移動し、1台で複数の加工機に対応。工作機械の前後工程、マテハン搬送の効率化を提案する。SIer向けに販売する。最大積載質量260キログラムの「TM10シリーズ」が価格100万円(消費税抜き)から。
TM10シリーズのほか、同480キログラムの「TM20シリーズ」があり、それぞれストローク長1000ミリ―7000ミリメートルを標準で設定。重量物をロングストロークで移送可能。
複数台の工作機械を使って加工する場合、1台のロボットで加工対象物(ワーク)の着脱などの連続動作を行う。ロボットはメーカー各社に対応する。
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小型コンピューターを搭載したARMAのグリッパー「インターフェース付きグリッパー」
ARMA(アルマ、岐阜県各務原市、古田貴士社長)は、業界でも珍しい小型コンピューターを搭載した協働ロボット用ユーザーインターフェース付き電動グリッパー(UIG)を発売した。タッチパネル入力や音声での対話で、ロボットを含め簡単に操作指示ができる。国内外の協働ロボットメーカーやユーザーから引き合いも多く、個々の用途開発も進んでいる。
搭載するコンピューターは5センチメートル角と小型で、無線、タッチパネル式モニター、スピーカー、マイク、カメラなどを内蔵。各種ソフトウエアをインストールし、多彩な機能を追加できる。20―120ニュートンの把持力や、爪の違いで5機種を用意し、価格は40万円(消費税抜き)から。特注にも対応する。
UIG用に、制御機能付きで従来品より3割軽量の独自モーターモジュールを開発した。同体積で最大強度の形状を引き出す解析手法(トポロジー最適化)で本体質量は従来品の約半分。
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ナベルの協働ロボット用カバー「Robot―Flex」(マシンテンディング用)
ナベル(三重県伊賀市、永井規夫社長)は、工作機械分野におけるロボット利用の増加や市場全体の成長性を見据え、同分野で協働ロボット用カバー「Robot―Flex」の販売に力を入れている。
最近では、マシンテンディング用ロボットカバー専用生地「NRF―7」を開発。労働力不足への対応や省人化による生産性向上を目的に、加工機へのワーク投入と取り出しなどを協働ロボットに担わせる「マシンテンディング」が増えていることから、同生地を使ったカバーを開発した。
各軸やビルトインのビジョンカメラを耐油・耐クーラント性のある素材で一体式カバーに保護できる。ロボットの形状にフィットし、各軸の動作角度に追従する。さらに、着脱が容易でメンテナンス性も高い。防塵・防水性能はIP66相当。クーラントミストのかかる過酷な環境においても、協働ロボットの安定的な長時間稼働の実現に貢献する。
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ダイドーがロボット館(左)の隣接地に取得したcadeau(カドー)ビル(右)
メカトロニクス専門商社のダイドー(名古屋市中村区、山田貞夫社長)は、2024年4月、名古屋市中村区に新たな情報発信拠点を本格稼働する。名古屋駅前に取得した新ビルを「ダイドーcadeau(カドー)ビル(仮称)」として全面改装し、隣接する産業用ロボット実験施設「ダイドー名古屋ロボット館」と一体運営する。年間3000台の産業用ロボットを販売する世界有数のSIerとしてのコミュニケーション力に磨きをかけ、ユーザーや連携SIerとの共創の場として活用する。
「観る」、「試す」、「学ぶ」を体感する拠点「ダイドー名古屋ロボット館」の隣接ビルを取得。本社を含めた名古屋駅前の3ビルで計2000平方メートルの広大な敷地となる。自動車業界の電気自動車(EV)シフトや脱炭素社会の実現など、社会が大きく変化するタイミングでの大型投資となる。
