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廃製品の回収技術進展
レアメタルはニッケル、リチウム、コバルト、タングステンなどのほか、レアアース(希土類)を含む31鉱種を指す。これらの希少金属ではEVに搭載のリチウムイオン電池(LiB)のリサイクル技術に関わる動きが急だ。
カーボンニュートラル(温室効果ガス実質ゼロ)社会の実現に向け、増大するEV需要への供給リスクの低減、併せて廃LiBの有効利用を図るためだ。
非鉄金属メーカーでは共同開発でLiBからリチウムを電池材料として再資源化する技術を確立したところや、別のメーカーでは使用済みLiBに含まれるレアメタルを再び車載用LiBの原料として使う技術開発を進めている。
産総研、AI活用の無人自動選別システムを開発
不要になったスマートフォンやデジタルカメラなどの廃製品に含まれるレアメタルなどのリサイクル技術も進展をみせている。
産業技術総合研究所は人工知能(AI)やセンサーなどを活用したリサイクル工場における廃製品・廃部品の小型家電無人選別システムを開発、その実用化に迫っている。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクト「高効率な資源循環システムを構築するためのリサイクル技術研究開発事業」(2017―22年度の6年間)の委託を受け、開発にあたってきた。
無人化と高度化を両立
リサイクルされる金属は鉄やアルミニウム、銅など採算の合う付加価値の高い金属に限られる。レアメタルやレアアースは価格が安価な頃はリサイクルには目も向けられなかった。「選別コストの半分が人手に頼る作業」(大木達也産総研首席研究員)のため、リサイクルの高度化にあたっては、これまでのコスト構造を変える「選別作業の無人化、無人化するための機械化、それを実現するためにAI、情報を使った」(同)。
18年には産総研つくばセンター(茨城県つくば市)内に金属資源の自動選別装置群を導入した集中研究施設「分離技術開発センター(CEDEST)」を開設。金属リサイクルの省人化と高度化を両立する、試験運用を通して各種装置の開発を本格化させた。
廃製品と廃部品の自動選別技術の開発がその柱。スマートフォンや携帯電話、デジタルカメラ、ビデオカメラ、ゲーム機、タブレット端末の6種類を対象に、メーカーや年式なども問わず、データベース(DB)化し、選別技術の開発にあたった。
廃製品の解体・選別では、廃製品の形状などの特徴を複数の高解像センサーで検知し、これを製品情報と照合・解析して製品の種類を自動認識した上で、金属組成に基づいて、資源価値別に廃製品を自動選別する。部品の自動選別では基板構造のDB化や部品のはく離技術などについても構築した。
CEDEST開設当時に掲げた目標値の①手作業による廃製品の解体・選別プロセスの10倍以上の処理速度②廃部品を分離効率80%以上で選別する性能―は達成している。
産総研では技術開発を重ねてきた小型家電無人選別システムについて今後、実証プラントを建設し、完全な連続運転状態の中で、小型家電を導入した最終調整を経て製品化する計画だ。
また、産総研はX線透過装置とAI技術で、廃棄物からバッテリーを探し出すシステムも開発。リサイクル施設において、作業員が手作業で実施している廃製品・廃棄物内部のバッテリーの有無の判断を自動化でき、処理の速さとともに、バッテリーの誤破砕による火災発生を防止できるようにした。
全国のリサイクル施設で、廃製品・廃棄物に混入したバッテリーの破砕機への誤投入が原因で、出火に至る火災は年間約4500件、火花程度を含めると年間約9000件が発生。これらの約半数が解体・破砕工程で発生している。