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レアメタルリサイクル
レアメタル(希少金属)は地球上の存在量が少なく、技術的・経済的な理由で抽出が難しい金属。電子機器や電気自動車(EV)の小型・軽量化、省エネルギー化に欠かせない存在だ。その希少性のため、安定供給が課題となっている。加速するデジタル化や脱炭素化を背景に、今後もエレクトロニクス市場におけるレアメタルの需要が高まるとみられる。このニーズに応えるべく、Eスクラップ(都市鉱山)の回収率促進やリサイクル技術の向上が求められている。
Eスクラップ回収強化図る
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レアメタルを含むスクラップは選別、解体、精錬などを経て再資源化される(ティーエムシー提供)
レアメタルはリチウムやニッケル、コバルト、タングステンなどに加え、レアアース(希土類)を含めた31鉱種を指す。天然資源が乏しいとされる日本において、こうした希少資源の安定供給のために、資源の再生・再利用が重要な課題となっている。
こうした中で、不要になったパソコンやスマートフォンをはじめとした電子機器や家電製品などに含まれるEスクラップ(都市鉱山)の有効利用が重要視される。資源の供給量を増やすべく政府や業界団体が取り組みを進めている。
政府は国内での資源循環の推進のため、2024年8月に循環経済を国家戦略に位置付けた「第五次循環型社会形成推進基本計画」を閣議決定した。この中で、レアメタルなど金属のリサイクル原料の処理量を30年度までに倍増することに加え、Eスクラップのリサイクル処理量を30年までに20年比5割増の約50万トンに増やす目標を掲げている。
業界団体では資源回収に力を注ぐ。パソコン3R推進協会(東京都千代田区)の調査によると、24年度のリサイクル目的で回収した使用済みパソコンは前年度比3・5%増の226万6000台となった。このうち、家庭から回収されたものは同3・3%増の211万8000台、法人から回収されたものは同5・5%増の14万8000台といずれも増加した。
10月には、米マイクロソフトの基本ソフト(OS)「ウィンドウズ10」がサポート終了を予定しており、これに伴うパソコンの買い替えの動きが影響しているとみられる。
電子機器などの製品に内蔵されている小型二次電池にもレアメタルが含まれており、回収・再資源化が推進される。このうち、リチウムイオン電池(LiB)は回収・再資源化の過程で発火リスクが懸念されており、回収時の安全面の強化も図られている。
小型二次電池のリサイクルを促進する一般社団法人のJBRC(東京都港区)が公表している小型充電式電池の回収実績と再資源化率の状況によると、24年度のLiBの回収量は前年比13%減の510トンだった。ただ再資源化率実績値は53%で、法定目標値の30%を上回った。
再資源化プロセス効率化進む
回収されたスクラップは選別・分別、解体、破砕、製錬などの工程を経て再資源化される。レアメタルの回収方法は熱によって溶融、揮発させる方法や、溶液で金属を溶かして抽出する方法、金属の比重や磁性を利用する方法などがあり、目的に応じて使い分けられている。
こうしたプロセスの中で、低コスト化や効率化、環境負荷低減といったリサイクル技術の確立に向けた取り組みが産学連携で行われている。研究機関では、廃家電製品を対象とした解体システムや多様化している再生材に合わせた選別システムの開発プロジェクトが進む。
さらに、素材メーカーの中には廃棄された車載LiBからリチウム、ニッケル、コバルトを二酸化炭素(CO2)排出量を抑制しながら効率良く回収する技術開発もみられ、研究機関の支援策を活用し、実用化に向け取り組んでいる。
脱炭素社会の実現に向け、再生可能エネルギーの活用や自動車の電動化などを背景に、レアメタルは今後も需要増が見込まれる。資源の安定供給に向けたリサイクル技術の進展と効率的なシステム構築が重要となる。それには国、研究機関の継続的な施策、取り組みが欠かせない。
