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レアメタルリサイクル
レアメタル(希少金属)は金属素材の高機能化や自動車や電子機器の性能向上、軽量・小型化に欠かせない。その希少性、市場性から迫られるのがリサイクル技術。小型家電廃製品では回収、再資源化につながる技術開発が進展をみせ、需要拡大する電気自動車(EV)では、その先を見通し、車載用廃電池のリサイクルに関わる動きが活発だ。
進む廃小型家電回収技術
8月11日、閉幕したパリ五輪。日本選手団は金メダル数、総メダル数ともに海外開催の五輪で過去最多を記録した。自国開催で史上最多の金メダル、総メダル数を獲得した2021年の東京五輪に続き、日本選手が躍動した。
その東京五輪ではメダル自体も話題になった。授与されたメダルの原材料は使用済みの携帯電話や小型家電のリサイクル金属による“都市鉱山産”でつくられたためだ(東京パラリンピックでも実施)。メダルを通して持続可能な社会実現に向け、リサイクル意識の向上と行動を促すメッセージを発信した。
東京五輪から3年。希少金属を循環利用へと導くリサイクル技術は進展をみせている。コスト高の要因でもある手作業に頼る廃製品の解体、部品選別などの作業を容易にする自動化技術の開発だ。産業技術総合研究所(産総研)などは廃製品・廃部品の小型家電無人選別システムを開発し、その実用化に迫っている。
スマホの高速分解技術開発 車載用電池めぐり動き活発
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「高効率な資源循環システムを構築するためのリサイクル技術の研究開発事業」(17-22年度)。産総研を軸に企業、大学、研究機関が参画し開発を進めてきた。
従来型携帯電話(ガラケー)やスマートフォン、デジタルカメラなどの小型家電を対象にしている。センサーやAIを活用して自動解体、分解、選別を行う。
スマホでは自動分解高速システムを確立。X線で内部を透過撮影し、バッテリーやネジの位置を見える化できるようにした。この撮影結果からAIを導入した構造解析で切れ込みを入れ、バッテリー部分を避けて衝撃を与え、バッテリーや筐体、基板などに分離する。これにより、発火した場合の対応もあり手作業を伴ったスマホの自動分解を可能にした。
接着剤で内部を固定されたスマホの場合は冷却して接着剤を無効化し、解体・選別にあたるノウハウも併せ持つ。部品の自動選別では、基板構造のデータベース化やはく離技術などについても構築した。プロジェクトで目標を掲げた手作業による廃製品の解体・選別の10倍以上の処理速度、廃部品の分離効率80%以上の達成を可能にした。
このプロジェクトに参画し、スマホの高速分解システムに携わる大栄環境は、約300機種の使用済みのガラケーやスマホを通して内部構造を調査。衝撃実験ではスマホ426台を使ってバッテリー発火の検証を行った。4月からは大栄環境の施設内に実証プラントの開設を着手。参画する機関・企業は関連するNEDOプロジェクト「高度循環型システム構築に向けた廃電気・電子機器処理プロセス基盤技術開発」(23-27年度)の受託もあり、各装置群をベルトコンベヤーでつなぎ、一気通貫の状態で資源の循環利用に寄与する自動化システムの検証を進めていく予定だ。
一方、EV需要の拡大に伴い、その先にある使用済みの車載用リチウムイオン電池(LiB)からのリサイクルをメーンに据えた事業展開が活発化している。リチウムやコバルト、ニッケルなどを回収、再資源化を図る。
住友金属鉱山は3月、使用済みLiBのリサイクルプラントを東予工場とニッケル工場内に建設すると発表した。24年度中に着工し、26年6月の完成を予定している。
三井物産、VOLTA(ボルタ、静岡県富士市)とシンガポールのミラクルエターナルの3社は5月、共同でLiBリサイクルを行う新会社を設立。海外からの原料調達力も活用し、電池中間材料であるブラックマスの製造、販売にあたる。
またJX金属と三菱商事の合弁で廃家電や廃車載用LiBなどの非鉄金属の資源循環を目的とする新会社「JX金属サーキュラーソリューションズ」が7月、事業をスタートした。リサイクル原料の集荷強化やリサイクルプロセスの変革を進めるとしている。