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ポンプと関連機器
「API規格610」を中心とした遠心ポンプの国際規格
【執筆】 外山技術士事務所 所長 外山 幸雄
ポンプには、石油化学や電力、鉄鋼など、各市場に合わせた設計規格がある。顧客は適用された設計規格から、ポンプのグレードを理解できる。それだけでなく、設計規格を指定して発注することもできる。一方、ポンプメーカーにとっては設計規格に合わせることで、トラブルの少ない高品質のポンプの設計・製造につながる。つまり設計規格は、顧客とメーカー双方にとって便利なものである。
ポンプの設計規格
ポンプの設計規格にはさまざまなものがある。国際規格には「米石油協会(API)規格610」「米国家規格協会(ANSI)規格B73・1」「国際標準化機構(ISO)規格2858」などがある。一方、日本の国家規格には「日本産業規格(JIS)B8313」「同B8319」などがある。設計規格とポンプの価格には相関関係があり、設計規格の規定が厳しいほど価格は高くなる。
中でも多くのポンプ技術者に理解を深めてもらいたいのが「世界で最も厳しい設計規格」とされる「API規格610」である。同規格は石油精製で使われる遠心ポンプのために制定された。しかし実際には、日本を含む世界中で、石油精製用だけでなく、化学用プロセスポンプや発電用ボイラ給水ポンプなどにも適用されている。さらに単段ポンプだけでなく、多段ポンプや立軸ポンプなど、市場で使われる19形式のポンプをこの規格は網羅している。
API規格の信頼性
「API規格610」は1954年の第1版発行後、改定を繰り返しながら最新の第12版に至る。現在は第13版の発行に向けて審議中である。この規格の特徴は規格どおりに設計してトラブルが起きると、原因を究明して同じトラブルが再発しないよう改定する点にある。製造原価が上がり、メーカーが困る改定内容であっても改定する。改定案に対して、製造原価を理由に反対するのはご法度である。根底には「トラブルを起こしてはならない」という強い意思が働いているのである。
「API規格610」に適合したポンプを設計・製造するメーカーは、設計・調達・建設を顧客から一括で請負う「EPC」といわれる企業の「サブベンダーリスト」に入れてもらわない限り、見積もりには参加できない。ポンプメーカーは世界に数千社あるといわれるが「API規格610」のポンプメーカーは世界で10社ほどである。そのため、この設計に携わる技術者は極めて少ない状況にある。
しかしポンプ技術者は「API規格610」を理解することで、どのようなポンプも自信を持って設計できるようになる。このポンプを製造していないメーカーであっても、同規格から目指す市場に適した内容を取捨選択しながら、自社製品の設計に活用することを筆者は勧めたい。
メーカーの成長と技術者の育成
ポンプメーカーが成長していくためには、既存製品が適用する液温や最高使用圧力などの拡大のほか、新たな用途に合った製品開発、技術提携などが考えられる。また海外進出も視野に入れる必要がある。
海外では、1台数万円以下の汎用ポンプであれば、設計規格が未適用でも売れるかもしれない。しかし1台数十万円以上の産業用ポンプとなると、たとえ世界的に有名な企業であっても、市場に適当と考えられるいずれかの設計規格を適用しないと売れないと筆者は考えている。
技術はメーカーの宝である。技術をどのように蓄えて伸ばしていくかは、経営者の判断によるが、そこには必ず人が存在する。そして技術を担うのが技術者である。技術者はプロであるから、結局は自分の意志で成長していくべきものである。
しかし、ほんの少しのきっかけで飛躍的に成長することがある。例えば、学会やセミナーへの参加、社内勉強会、懇親会など、その気にさせる動機付けは必要だと考えている。その上で、標準化する、多くの経験を積む、外部の力を利用するなどをとおして時間的な余裕を生み出し、会社を成長させるための一翼を技術者が担うことを期待している。
