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ポンプと関連製品
ポンプは流動性のある液体や物質を搬送する機械で、管やホースとつなぎ、低い場所から高い場所、低圧部から高圧部、または遠方へ移送する役割を担う。景気の先行きに不透明感が見られる中、ポンプ業界では長寿命化や省エネルギー性能を重視した製品・サービスへのニーズが高まっている。人手不足の深刻化を背景に、自動化や遠隔監視などのソリューション提案も加速。ポンプメーカー各社は製品開発に加えて運転管理などのサービス提供にも力を入れつつある。
長寿命・省エネ・自動化・遠隔監視 「ポンプDX」高度化
近年、ポンプユーザーのニーズが変化している。「長く使いたい」「省エネ性が高いものを導入して維持費を抑えたい」「メンテナンスの手間を減らしたい」といった要望が顕在化し、導入コストよりもライフサイクルコスト重視の傾向が強まっている。こうした動きに応え、ポンプ業界は製品の長寿命化や高効率化に注力する。腐食に強い材料の採用や羽根車など主要部品の形状最適化を通じ、運用コストの低減を図る取り組みが広がっている。
高効率ポンプの開発は、ある程度技術的に成熟しており、「1%の効率向上も難しい」(業界関係者)段階に入っている。近年では、キャビテーション(液中に生じる気泡の発生と崩壊)を抑える設計や、ポンプ内部の流体を安定して制御する技術が注目されている。これらは装置の振動や騒音の抑制にもつながり、静音性・信頼性といった側面でも製品価値を高めている。
メンテナンス面でも進化が見られる。軸受やメカニカルシールなどの消耗品の長寿命化により、以前よりも部品交換の頻度は減少している。メンテナンス周期を長期化し、稼働率の向上にも貢献している。一方で、パッキン類などの摩耗部品は使用条件により劣化し、定期的な交換が不可欠である。各部品の取り替え周期を目安に交換を行い、故障を防止したい。
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ニーズに応えるべくポンプメーカーは多様な製品開発に取り組んでいる。(「INCHEM TOKYO2023」帝国電機製作所ブース)
保守管理を支える技術として「状態監視保全」の導入も進んでいる。ポンプ本体に振動・温度・騒音などを検知するセンサーを取り付け、常時データを監視する。異常の兆候を早期に捉えることで、定期点検に頼らずとも異常発生時に迅速な対応が可能となる。トラブルの未然防止やダウンタイムの最小化につながる手法として注目されている。
社会インフラを支える上下水道分野では、人手不足や技能継承の課題が深刻化している。こうした背景のもと、ポンプの遠隔操作や流入量を一括監視する集中管理システムが導入されている。ポンプメーカーには単なる機械提供だけではなく、デジタル技術と組み合わせた包括的なソリューション提供が求められており、各社は制御システムやクラウド連携を含めた運用全体の最適化に取り組む。
現場の課題解決に貢献するこれらの取り組みによって、ポンプメーカーはユーザーの運用改善を支援する役割を担いつつある。今後は、エネルギー効率や持続可能性、スマート保全といった視点を含めた製品・サービスの高度化が、業界競争力の源泉となる。
システム包括力 競争のカギ メンテまで提供
地方自治体ではインフラ運営費用の削減や人口減少の影響により、水道施設の民営化や運転管理業務の外部委託が進んでいる。水道運転管理を請け負い、「商品を売る」ことからメンテナンスを含めた「包括サービスビジネス」への移行を図っている企業もある。
ポンプ業界では製品単体の性能に加え、メンテナンスを含む運用全体を支える「システム包括力」が、今後の競争力のカギを握るとみられている。
こうした中、日本産業機械工業会(産機工)は、メンテナンスの重要性を広く周知している。1980年以降、約5年ごとに風水力機械産業に関する報告書を発行するなど啓発活動に力を入れている。ポンプ、送風機、圧縮機に加え、運転に不可欠なメカニカルシールを対象に、需要動向や技術革新、市場展望を総合的に分析し、メンテナンスの重要性を伝えている。またホームページ上で汎用ポンプの日常・定期点検表、部品取り替え周期一覧を公開している。これらを参考に保守計画を組み、保全活動を実施したい。