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ポンプと関連製品
これまで変化の少なかったポンプ業界に、IoT(モノのインターネット)テクノロジーを活用した大きな革新が訪れようとしている。持続可能性の実現に向けて、労働人口減少への対策と省エネルギー化にIoTが大きく貢献すると期待されているからだ。ここでは持続可能性を実現するための第一歩となりうる、当社が新たに設計、開発したポンプスマートモニタリングシステム「RANDX」を紹介する。
ポンプスマートモニタリングシステム「RANDX」
【執筆】みつわポンプ製作所 DX推進 係長 加藤 巧
2つの命題
ポンプは工場の基盤となる水の循環・移送を担い、産業や社会基盤の維持・発展において極めて重要な役割を果たしている。
当社が扱うスラリーポンプは、汎用ポンプでは対応できないような摩耗、腐食、漏れ、詰まりを引き起こす厳しい条件下での使用が求められる。これらに対応するため、事前に使用状況・条件の詳細なヒアリングを行い、それに対する適切な提案が必要となる。また、汎用ポンプに比べメンテナンス頻度も高いため、耐久性の向上が持続可能性につながる。
工場全体の持続可能性という観点から見ると、一般的な工場では労働人口減少への対策と省エネ化という二つの命題がある。不可逆的な労働人口減少は、ポンプを扱う保全技術者が減少し、従来の管理方法を継承できない問題につながっている。その結果、ポンプの故障に気づかず、修理コストが増大するケースもある。
省エネ化については、機械自体の効率改善により、徐々に進んでいる。実際、近年多くのポンプメーカーでは、3次元(3D)技術や流体解析を活用し、ポンプ能力の効率を改善してきた。しかしながら、段階的にポンプの効率は向上しているものの、部分的な効率化に留まっていると言える。
こうした背景から、この二つの命題を同時に解決できるIoTを生かした製品やサービスが注目されている。IoTを活用することで、機器診断の標準化と無人監視による省人化、データの分析から故障予知や不具合要因の特定、修正を行うことで、工場全体の効率化という大きな変化が期待できるからだ。
例えば、今まで数人がかりで行っていた機械の確認作業は、IoTを活用すれば1人が数分で行える。省人化につながると同時に、機械の稼働状況などを数値化して管理することで適切なメンテナンスを行えるようになり、省エネ化につながる。
また機械ごとの電気使用量、稼働効率、故障率など複数の種類のデータを蓄積、分析する。熟練者の勘に頼ってきた作業を継承できると同時に、複数機械の稼働条件を操作して工場全体の生産性を最大化することもできる。
IoTが導入されない原因
ただし、これらはあくまでモデルケースであり、実際には工場ごとの状況やニーズに合わせた試行錯誤が必要となる。また現時点では、IoTを導入していない工場が多い。
IoT導入には大きなハードルが二つある。一つは将来の生産性向上というビジョンが見えづらいため価値を見いだせず、IoTの導入自体を検討しない工場が多いこと。そしてもう一つは、現在市場にあるIoT機器やサービスが専門的過ぎて導入しづらい、ということだ。
前者では、実績を積み上げていくと同時に、産業界全体で啓蒙活動を行っていく必要がある。ただし、これには長い時間がかかる。一方、後者は導入しやすく使いやすい機器やサービスがあれば解決可能だ。
まずは実際に体験することで、次のステップに進みやすくなる。
1分でネットにつながるIoT
このような観点から、当社では1分でネットにつながるIoTサービス「RANDX」を提供している。事前準備や知識、技術は不要で、電池を入れてセンサーを取り付けるだけで電流値の計測ができる。
通信には独立した省電力広域無線通信(LPWA)の回線を使用しているため、たった1分で設置が完了する。工場のネットワークにつなげる必要がなく、設定は全て当社側で完了した状態で納品されるため、ユーザー側での操作は不要だ。同時に、社内のネットワークとは切り離されているため、セキュリティー面でも安心できる。
スマートフォンやパソコンを使い、モニタリング画面により遠隔で状況を確認できる。遠隔地で巡回点検を行っているユーザーでは、同サービスを利用することで、省人化できる可能性もある。
閾値を超えた場合や設定した範囲内の電流値が計測された際に、メールでアラートを送る機能もある(スタンダードプラン以上)。
ポンプ管理では、「壊れるまで放置している」場合が多い。故障を早く検知することで、コストと手間の削減が期待できる。
現在は電流センサーのみだが、今年後半には振動・温度を同時に測定できるセンサーも提供予定で、ポンプの故障検知や故障予知に貢献できるよう開発を進めている。
同サービスは、スラリーポンプメーカーとして65年以上歩んできた中で、初のITサービスとなる。新しい領域での挑戦のため、ユーザーとのつながりを重視し、ユーザーニーズに合わせたモニタリング画面の変更など、サービス自体もブラッシュアップしていく。