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フィルター・膜処理と関連機器
見えないところで半導体を守る —世界を支える日本のフォトレジスト用フィルター技術—
【執筆】 大阪公立大学 大学院 工学研究科 物質化学生命系専攻 教授 堀邊 英夫
三菱電機先端技術総合研究所主席研究員などを経て現職。専門は高分子物性。東北大学教授として、半導体人材の育成にもかかわる。
フォトレジスト向けを中心に大きな伸びをみせる半導体用フィルター市場。一方、半導体製造プロセスは年々微細化が進み、半導体用フィルターには不純物を極限まで除去する高度な技術が求められている。半導体製造のリソグラフィー工程で活躍する「フォトレジスト用フィルター」について解説する。
不純物、確実に除去
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レジストパターンの走査電子顕微鏡画像(膜厚2マイクロメートル/パターンサイズ1マイクロメートル)
半導体を作製する上で欠かせない工程の一つが「リソグラフィー工程」(図)である。筆者の研究室では、同工程で用いるレジスト材料(写真)やそのプロセスなどを研究・開発している。
リソグラフィー工程は20階建ての百貨店を建てる作業に例えると分かりやすい。地下1階の食料品売り場の通路が狭いように、半導体では配線工程、特にゲート線幅が最も微細になる。そのためここで使用されるフォトレジストには最も高い解像度が求められ、露光光源には最も波長の短い光が用いられる。
こうした最先端プロセスを“見えないところ”で支えるのが、日本企業が得意とするフォトレジスト用フィルター技術にほかならない。
塗布されたレジスト薄膜の上にわずかなゴミや異物が付着するだけで、露光時に光が遮られ回路欠陥や不良を引き起こす。そこでレジストをウエハーに塗布する直前に、不純物を除去するためのフォトレジスト用フィルターを使用する。このフィルターは肉眼では確認できないナノメートルサイズの微粒子や、ゲル状の異物まで確実に取り除く役割を担う。
元来、レジストはベース樹脂や感光剤、膜厚均一化剤などの低分子・有機溶媒から成る非常に繊細な材料だ。レジスト成分がフィルター材料を溶かしたり、逆にレジストのフィルター通過時にフィルターから異物や金属成分などの不純物が溶出したりしてはならない。これら要求を満たすため、フィルターにはフッ素樹脂(PTFE)やナイロンといった高機能性樹脂が用いられ、孔径や孔の分布を極めて精密に制御している。
レジスト高純度化 フィルターとの相性カギ
日本の半導体産業は1980年代後半から90年代初頭にかけて世界シェアの約半数を占め、大きくリードしていた。当時、総合電機メーカーで半導体の開発・製造に携わっていた筆者には、今も忘れられない思い出がある。ある時、シリコンウエハーにレジストを塗布すると多量の異物が発生した。デバイス製造が不可能となり、生産ラインを停止せざるを得なくなった。ラインが1日止まると、大きな損失が生じかねない、極めて切迫した状況だった。シリコンウエハー、レジスト、フィルター、塗布装置のいずれかが原因として疑われ、詳細に調査した結果、原因はフィルターであると判明。フィルターを変更してようやく生産を再開した。
興味深いことに、問題となったフィルターは用いるレジストの種類が異なれば、異物の発生がなかった。このことからその原因はフィルター単体ではなく、レジストとの相互作用、すなわち両者の「相性」によるものだったと考えている。
近年ではEUV(極端紫外線)リソグラフィーの実用化でフォトレジストの高解像度化がさらに進み、フィルターへの要求はより厳しくなった。従来は問題とならなかった極微小な粒子まで管理する必要が生じ、単に異物を「取り除く」だけでなく、「欠陥を発生させないようレジストとの化学的な相性まで考慮する」ことが現在のフィルターには求められている。
条件に合わせフィルター最適化
日本企業の大きな強みは、材料・半導体・装置の各メーカーが密接に連携し、現場に根ざした製品開発を行ってきた点にある。半導体メーカーに勤めていた時に筆者自身そのことを強く実感した。顧客の製造プロセスを深く理解し、個々の条件に合わせてフィルターを最適化する姿勢は、他国が容易にまねできるものではない。
先端半導体の微細化競争が続く限り、フォトレジスト用フィルターの重要性は今後も高まり続けるだろう。表舞台に立つことは少ないが、日本のフィルター技術は、これからも世界の半導体産業を静かに、しかし確実に支え続けていくことだろう。
最新!PFAS規制の国内外の動向と対応策、想定される代替手段/ライブ配信セミナー 3月12日
日刊工業新聞社は12日13時半から17時まで、ライブ配信セミナー「最新!PFAS規制の国内外の動向と対応策、想定される代替手段」を開催する。
有機フッ素化合物(PFAS)の規制強化が進む中、これにどう対応していくかは企業にとって喫緊の課題となっている。同セミナーでは、フッ素樹脂とフッ素樹脂コーティングの専門家である平山中氏を講師に迎え、規制の最新動向や制限案の内容、素材メーカーの対応など、PFAS規制を巡る動きを多角的に解説する。加えて半導体製造や化学工業、繊維産業をはじめ、業界ごとに想定される代替手段についても専門家の観点から考察する。また4月から水道法上の水質基準にPFASが引き上げられるのを受け、PFAS排水処理の技術選定や導入に関する話題も紹介する。
同セミナーはビデオ会議ツール「Zoom」を使ったライブ配信セミナーで、開催当日の12時まで参加申し込みを受け付ける。受講料は3万8500円(テキスト代・消費税込み)。当日の参加が難しい場合は、録画での参加も可能。
問い合わせは日刊工業新聞社西日本支社総合事業本部セミナー係(06・6946・3382)へ。
