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粉体技術 POWTEX2023開幕迫る(2023年10月)
粒子微小化への対応に加え、人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)、シミュレーション技術の応用など、粉体プロセスの研究開発は依然、活発に行われている。粉体プロセスの重要性が増す時代背景だけではなく、さらなる底辺拡大につながる動きでもあり、今後、粉体プロセスがどのような新たなステージを切り拓くかに注目が集まる。こうした中、10月11日(水)から13日(金)の3日間、大阪市住之江区のインテックス大阪で「POWTEX2023(国際粉体工業展大阪2023)」が開かれる。日本粉体工業技術協会(京都市下京区、牧野尚夫代表理事会長)主催の同展には、粉体プロセスを支える最新の機器・装置のほか各種情報が一堂に会するだけに、その成果に期待が寄せられている。
産業の進展を下支え
特性生かす取り組み加速
粉砕や分級・ふるい分け、計量・計測、造粒・粒子設計など多様な単位プロセスで構成される粉体技術は、あらゆる産業に関連し、その進展を下支えする。技術・研究開発は日々、続けられており、粒子の微小化は今やナノスケール(ナノは10億分の1)が実用化の段階に入り、その特性をより生かすため粒子のコントロール技術の重要性が増すほか、シミュレーションの利活用が進む。一方、各種装置やシステムへのAIやIoTの導入も活発化してきており、今後も各種粉粒体の特性を最大限に生かす取り組みが加速することは間違いないといえる。
こうした粉体技術や同業界の今、そしてこれからが11日に開幕する「POWTEX2023(国際粉体工業展大阪2023)」で披露される。172社・団体、515小間の規模での開催となる今回は、「未来をつくるPX(Powder―technology Transformation)」をテーマに掲げる。コロナ禍が一段落したこともあり、前回(2021年)の大阪開催時と比べ規模は回復傾向にある。
また9月27日にはオンライン展が既に開幕、リアル展と合わせ3回目のハイブリッド形式での開催であり、会期中の併催企画も充実。それだけに、出展者・来場者ともに実りある展示会になると思われる。
会期は13日までの3日間、開場時間は10―17時(最終日は16時半まで)。入場登録料は1000円だが、招待状持参者、ウェブによる事前登録者に加え、高校生以上の学生は無料(学生は要登録)。問い合わせは展示会事務局(シー・エヌ・ティ、03・5297・8855)へ。
インタビュー
11日に開幕する「POWTEX2023」。最新の粉体機器・装置や技術、情報が一堂に会し、その進展具合が実感できる。オンライン展併設のハイブリッド形式も今回で3回目となるほか、時流に応じた多彩な併催企画も予定されており、これまで以上の成果が得られそうだ。同展を主催する日本粉体工業技術協会の牧野尚夫代表理事会長と、同協会大阪粉体工業展委員会の三宅康雄委員長に、協会の現状や展示会の特徴などを聞いた。
活動参加と満足感高める/日本粉体工業技術協会 代表理事会長 牧野 尚夫氏
―2023年度も折り返し地点です。
「会長就任後1年4カ月が経過した。この間、外部向けには粉体の有用性をいかに広く伝え、内部向けには会員の皆さまが協会行事に積極的に参加する意識を持っていただき、忌憚(きたん)なく意見を述べてもらえるよう努めてきた。法人会員数も337と過去最多であるが、粉体の底辺の広さを考えればもっと増えても良いと思っている。そのためには入会のメリットを理解していただく必要がある。新入会員オリエンテーションは効果的で、今後さらに工夫を凝らし充実させたい」
―粉体のトレンドは何になりますか。
「粉体は”産業の米”とも言われ、ほぼ全ての産業に関連する。今後はSDGsや健康社会、循環型社会などへの貢献が重要になる。特に省エネルギーや脱炭素社会に関わりの深い電池技術や薬品、食品関連などに注目している。高機能材料や新たな粉体材料へのナノテクノロジーの活用も期待が大きい。技術的には粉体の機能向上や複合化、ナノ粒子の活用、それらに貢献するシミュレーションや人工知能(AI)技術なども欠かせない。粉体を使う側、作り出す側のいい意味での競合、協調が重要になる」
―11日から「POWTEX2023」が開幕します。
「大阪は小回りが利く点を利用し、いろいろな企画にチャレンジしてくれている。今回は『PX』がテーマだけに、それを生かす展示会になってほしい。前回の大阪で初めて採用したハイブリッド形式は3回目となり、その活用にも慣れてきたので、本方式の集大成の展示会になることを期待する。展示のほか併催企画も充実しており、ぜひ来場者に楽しかったと思ってもらいたい。どんな情報や技術に出会えるかワクワクしてもらえると最高だし、そうなると信じている」
―協会の成長・発展に向けた取り組みは。
「今年は現中期運営計画の最終年で、24年4月からの次期中期計画策定時期にあたる。現計画で掲げた分科会活動の活性化、展示会の新しい展開、広報改革、国際化推進、組織強化の五つの重点項目は大きくは変えず継続したい。分科会については協会の活動範囲拡大のためにも、新たな分野での創設も考えたい。展示会は一定の方向性は固まったと感じているので、洗練度を上げていく段階に入ったと思う。広報は粉体技術や協会を広く認知していただくためにも、さらに充実を図る。国際化は展示会への出展、勧誘などを通じ海外会員の入会にも誘導していきたい。あらゆる事業の活性化が組織強化へとつながる。協会入会のメリットをアピールし、入会していただいた上で積極的に活動に参加し満足してもらうことが大事であり、そのための努力は惜しまない」
”PX”で新たな取り組み/大阪粉体工業展委員会 委員長 三宅 康雄氏
―今回の規模は。
「172社・団体、515小間で開く。コロナ禍まっただ中の前回大阪開催時(2021年)と比べると回復傾向だが、コロナ前の19年の約7割にとどまる。前回出展を見合わせた企業が戻りつつあるのはありがたいが、一方で慎重さもうかがえる」
―開催テーマの意味するところは。
「『未来をつくるPX(Powder―technology Transformation)』を掲げたのは、多様な粉体技術・操作は幅広い産業で活用されるが、世間ではまだまだ知られていない。それらが複合化され、製造プロセスが劇的に変化することを表した。それが社会をより良くし、明るい未来をつくるということが根幹にある」
―ハイブリッド形式も3回目です。
「前回の大阪からオンライン展を実施、リアル展とのハイブリッド形式も定着した。事前の情報収集での利用が多く、出展者は閲覧者がアクセスすれば顧客情報が入手できる点に驚かれていた。オンラインの効果だが全ての情報は集めきれない。いかにリアル展につなげるかが課題だ」
―課題解決策は。
「初企画の『PXステーション』では、オンラインでは味わえない臨場感を醸し出す。事前に受け付けた質問を司会者が砕けさせ講師が解説、回答する。従来にない手法で、まず粉体に興味を引いてもらい、深く知りたくなるよう仕向けたい」
「最新情報フォーラムを衣替えした『PXフォーラム』では全固体電池のほか、食品や化粧品の最新テクノロジーを紹介。『わが社のPX』は医薬や食品、電池の各業界別に企業が登壇、最新技術や製品を披露する。PXステーションやPXフォーラムはリアル展後、オンラインで配信。これを次回の出展・来場増につなげたい」
―POWTEXとしたのも大きな変革です。
「商標を取得して国際粉体工業展はサブ的扱いとし、浸透を図る。開催地を外したのは規模の違いや同じ年に両地で開催されるようにも思われるからだ」
ー今後に向けては。
「POWTEXは東京で産声を上げ、その後、大阪でも始まった。大阪はいろいろチャレンジしてきた。回を重ね距離感は縮まったが、規模の違いもあり大阪への誘導には難しさもあった」
「面白おかしい企画で大阪にも出展しなければと思ってほしい。それで底上げできれば出展者、来場者双方のプラスになると信じている」