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粉体技術(2024年2月)
粉砕や分級・ふるい分け、計量・計測、造粒・粒子設計など多くの単位プロセスで構成される粉体技術は、〝産業の米〟とも言われ、ほぼ全ての産業に関連している。特に最近では、省エネルギーや脱炭素社会に深く関わる次世代電池製造分野で、その開発の成否を左右する存在であり、注目されている。技術的には粉粒体の機能向上や複合化、ナノスケール(ナノは10億分の1)粒子の活用は欠かせなくなっており、日々、研究開発が続けられている。
AI、MI利用本格化へ
最近の産業界のすう勢ともなっている人工知能(AI)活用への取り組みも進む。粉粒体は物性や特性、挙動などの解明が欠かせないが、粒子の大きさや形状などによって千差万別で、的確な解明が難しい。その解消のためシミュレーション技術の活用が始まったが、初期の段階では満足する結果が得られなかった。
その後、コンピューター技術の進展やソフトウエアの開発とラインアップ充実により、対象となる粒子個数が飛躍的に増大。球形粒子の混合や偏析などの解析、付着や分子間力などにまでモデル化が広がったことで利活用が進み、精度も向上した。
AI利用はこうした動きを踏まえた上の取り組みで、個々の粒子が持つ多くのデータを収集してデータベース化し、AIで解析することで複雑な特性や挙動解明を図ることを狙う。日本粉体工業技術協会でも「AI技術利用委員会」を立ち上げるなど、法人会員への啓発と利活用のきっかけづくりをスタートさせた。
将来的に期待される分野だが、粉粒体の物性は大きさや形状によって変化が大きい。そのためデータ化になじまないイメージがある。一つのプロセスの中でいわゆる〝関所〟のようなところを設けておかなければ、操作の入り口と出口での乖離(かいり)につながり、結果データの信ぴょう性が揺らぎかねない。さらに利用目的が何かも重要になるなど課題も山積する。
材料としての分析と、そこから生まれる製品づくりはできており、双方をつなぐ根拠や信ぴょう性が分かれば最終製品のクオリティーが高くなったり、どんなプロセスを構築したりすればいいのか、それにはどんな装置が必要なのかまで追究できるため、ポテンシャルは大きい。今後の研究の進展が待たれる。
AI利用とともに「マテリアルズインフォマティクス(MI)」もこれからのキーワードになると捉えられている。機械学習などの情報科学を用いてさまざまな材料開発の高効率化につなげようというもので、多くの実験、研究や論文のデータがある粉体工学分野では注目される。シミュレーションやAI同様に、経験者のノウハウや勘に頼ることが多く、新素材・新材料開発に時間や労力を要していた粉体業界では、開発時間の短縮や効率化を促すだけに期待も大きい。
ただこれもMIによってどんな結果につなげたいのかという活用目的の明確化は避けて通れない。そこがクリアされれば、さらなる浸透と量産化にも対応できるとあって、今後の展開から目が離せない分野と言えよう。
POWTEX2024 出展募集中
日本粉体工業技術協会(京都市下京区、牧野尚夫代表理事会長)は11月27―29日の3日間、東京都江東区の東京ビッグサイトで「POWTEX2024(第25回国際粉体工業展東京)」を開く。同展は粉体機器・技術に関する最大のイベントで、最新の機器や装置の展示のほか、多彩な併催行事を実施、〝粉と粒子〟に関するあらゆる情報が発信される。また前回(2022年)および23年の大阪開催に続き、オンライン展示会(会期=11月11日―12月26日)を併設、ハイブリッド展示会となる。
主催者では現在、出展者を募集している。申し込み締め切りは6月28日(満小間になり次第締め切り)。問い合わせや出展申し込みは展示会事務局(シー・エヌ・ティ、03・5297・8855)へ。
MIシンポ開催 データ活用の材料開発解説―モノづくり日本会議
モノづくり日本会議は3月28日13時40分から日刊工業新聞社西日本支社(大阪市中央区)で「MI(マテリアルズインフォマティクス)シンポジウム 多機関による材料データ相互利用の最前線」を開く。データを活用した材料開発のMIを活用する仕組みづくりを国が進める一方、データ解析や整理などを妨げる要因がある。
同シンポでは小野寛太大阪大学大学院教授や三宅隆産業技術総合研究所材料・化学領域連携推進室長が基調講演するほか、平田裕人トヨタ自動車先端材料技術部部長が「材料の多用途展開、新材料探索のための材料データの相互利用」と題した特別講演を通じ提言する。
またデータの相互利用や活用につながるプラットフォームの一例として、トヨタ自動車の材料解析クラウドサービス「WAVEBASE」の紹介なども行う。
定員100人。参加は無料だが事前申し込みが必要(定員になり次第締め切る)。問い合わせはモノづくり日本会議事務局(03・5644・7608)へ。