-
業種・地域から探す
PFAS規制対策と関連技術
有機フッ素化合物の総称である「PFAS」は非常に多くの種類があり、生活用品、産業・工業用品やその製造現場では欠くことができない物質だ。その化学的安定性ゆえに自然分解されず、ほぼ永久的に環境に残留するため、「永遠の化学物質」とも呼ばれる。PFASの中には環境汚染や人間の健康に対する潜在的リスクが指摘されるものもあり、規制に向けた動きも出ている。
「永遠の化学物質」に規制の網
PFASは社会で広く使われている数多くの有機フッ素化合物の総称で、1940年代ごろから普及し始めた。1万種類以上存在するとされ、自然界や体内で分解されにくい性質から「永遠の化学物質」と言われている。耐水・耐油性、潤滑性、化学的安定性などの優れた特性を持ち、界面活性剤、洗浄剤、表面処理剤、金属めっき処理剤、コーティング剤など、半導体産業、電機、電子・通信、洗浄分野などの幅広い分野で使われ、産業に欠かせない存在となっている。
代表的なPFASに、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)とペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)の二つが挙げられる。PFOAは電子基板や食品包装紙、フッ素ポリマー加工助剤のほか、フローリングなどの建材で使われる。PFOSは半導体や液晶ディスプレーのフォトマスク、金属めっき処理剤、写真感光剤などで使用されてきた。
PFOAやPFOSはその有害性や難分解性、長距離移動性、高蓄積性などから、国連の残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)ですでに廃絶対象物質に認定されている。分解が遅いため、仮に環境への排出が継続した場合、人や動植物へ悪影響を及ぼす可能性が指摘されている。
日本でも「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」においてPFOSは2010年から、PFOAは21年から第一種特定化学物質に指定されている。PFOA、PFOSは化審法に基づき、製造・輸入が原則禁止されている。
欧州の動向、日本も注視
23年1月、ドイツ、デンマーク、オランダ、ノルウェー、スウェーデンの5カ国から、欧州化学物質規制(REACH)に基づくPFASの製造や販売、使用を制限する規制案が、欧州化学物質庁(ECHA)に提出された。それに対し、同年9月に締め切られた同案に対するパブリックコメント(意見公募)は5642件、10万ページに及び、審議に多くの時間を要している。
ECHAはPFASの制限に関する科学的評価を26年末までに完了させる見込みで、日本の産業界も動向を注視している。
