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ペルチェ&ゼーベック
電流が流れることで熱が移動し、素子の両端(両面)で温度差が生じる「ペルチェ効果」、素子の両端に温度差が生じることで起電力が発生し電流が流れる「ゼーベック効果」は、熱半導体による熱電変換現象だ。これらの現象は冷却・温調技術、温度差発電技術に基づいており、コンパクトで機構に可動部がなく、静粛性の高い装置に応用されている。ペルチェ効果は局所的な精密温調などで、ゼーベック効果は環境発電(エネルギーハーベスト、EH)や排熱回収などで活躍が期待されている。
静音ー高精度で温度制御
ペルチェ
ペルチェ式冷却技術はコンプレッサーや冷媒を必要としないため、配管やラジエーターなども不要となる。機械的には可動部のないシンプルな構造で、運転に伴う振動や騒音が発生しない。応答性がよく高精度の温度制御ができる。電流の向きを切り替えることで、冷却にも加熱にも使用できる。
こうしたことから、ペルチェ式冷却・温調は装置にコンパクトさが要求され、かつ①音や振動を避けたい用途②精密な温度制御が要求される用途ーなどで活用されている。とりわけ局所的な冷却・温調を得意としている。
民生分野ではホテル客室の小型冷蔵庫や車載用クーラーボックスなどで用いられている。産業・研究用途では半導体製造装置の温度制御や医学・バイオ工学の生体試料分析装置、レーザー発振器の冷却などで活躍中だ。
光通信分野では通信データの高速化・大容量化が進み、データ送受信モジュールの発熱量が増大。データ変換を担う小型トランシーバーユニットの冷却に微小なペルチェモジュールが組み込まれている。
ペルチェモジュールは温度ギャップや熱の移送量などの仕様を柔軟に設定できる。性能設計の自由度が高いため、研究目的の特殊な装置向けに専用設計することも少なくない。
ゼーベック
ゼーベック効果は環境中の未利用エネルギーから電力を取り出すEH技術の一つとして、広く知られている。機械装置やダクトの熱と雰囲気との温度差、直射日光を受ける部分と陰になる部分との温度差などで発電が可能だ。
生産ラインの機械やプラント設備の状態監視などで、大量のセンサーを活用したIoT(モノのインターネット)システムの提案も広がっている。
その際、センサーと通信モジュールの電源をどうするかは重要なテーマとなる。ゼーベック効果の利用は、配管内部など光のない環境でも温度差があれば発電できる。電力線の配線や電池交換が不要なこともメリットだ。
センサー駆動などの微小な電力利用ではなく、より高い温度の排熱をエネルギー(電力)回収するモジュールの開発も進んでいる。高温域での耐久性向上や冷却面での結露対策が進み、実用的な製品が登場してきた。ゼーベック発電への期待は高まっている。