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塗装機械と周辺装置
塗装工程は二酸化炭素(CO2)排出や人手不足といった多くの課題に直面している。塗装機器メーカーのアネスト岩田はこうした状況に対応すべく「CUBIC LINE」(キュービックライン)という新たな塗装設備プラットフォームの開発を進めている。ここでは、当社が提案する課題解決の方向性と、それを具現化するCUBIC LINEの特徴、今後の展望について紹介する。
塗装設備の発展を目指して
【執筆】アネスト岩田 コーティングシステム部 技術営業グループ 黒米 康寛
最適化
アネスト岩田はスプレー(霧化)技術を中核とする塗装機および塗料供給機器のメーカーであり、塗装ブースや乾燥炉、搬送装置、前処理、空調システムまで一貫した設備設計・製作を行っている。ユーザーの多様な要求仕様に応じて、完全カスタム設計をすることで、高度に最適化された塗装システムを実現し続けてきた。
課題
今後の塗装技術の発展に向けて解決すべき課題として、第一に「環境負荷の低減」が挙げられる。生産全体のCO2排出量の4分の1を塗装工程が占めている現実を踏まえ、乾燥炉の省エネルギー化やブース風量削減、物流・スペース・塗料使用量の削減など、設備・機器・材料の各分野での継続的な技術革新が不可欠である。
第二の課題は「工数の削減」である。設備導入の検討段階から設置、量産開始、安定運用、さらには生産状況の変化ごとに多大な工数が発生している。理想では、ある程度具体的な草案から検討を開始し、工期の短縮や安定生産のための予防保全、設備拡張時の既存設備活用といった効率化が望まれる。
第三に「人手不足」も大きな問題である。塗装工程に関わる技術者不足、知識のバラつき、品質維持の難しさなどが現場を悩ませている。従って、塗装工程が敬遠されずに積極的に取り組まれる工程になるには、可能な限り”簡単”を実現することが不可欠といえる。
アプローチ
これらの課題解決のアプローチとして、当社はプラットフォーム作りに着手した。従来の塗装設備は、スクラップ&ビルドをしなければアップデートが困難で、技術革新の障壁となる場合もあった。そこで着目したのは「塗装設備の基本プラットフォーム化」で、ある程度仕様を標準化しつつも、組み合わせで構成・塗装方式を柔軟に選択できる設計思想に基づいている。
モジュール
この思想の下に生まれたのが「CUBIC LINE」である。塗装の各工程を独立した立方体=CUBICの形でモジュール化し、必要に応じて最適な設備ラインを構成できるプラットフォームとなっている。その狙いは、”削減”(モジュラーデザインによるスペース・エネルギー・材料・工数の削減)と”簡単”(ユニバーサルデザインによる導入・運用のシンプル化)の2点だ。
同一品質
具体的には、ロボット搬送によるコンベヤーレス化、乾燥炉の小型化と熱源のダウンサイジング、排気循環によるファン容量削減、最適な塗装方法による塗料使用量の低減や、工場・現場での工期短縮、ユニット化による同一品質のグローバル展開、柔軟なレイアウト変更などが挙げられる。
CUBICごとに仕様が確立されているため、金額や納期もすぐに算出でき、導入検討が大幅にスピードアップできる。また、出荷前に試運転が完了し、現地では設置後すぐに安定生産に入れるため、効率的に立ち上げられる。
さらに、IoT(モノのインターネット)やデジタル変革(DX)にも対応したソフトウエアや共通部品の活用によって、生産管理や運用負荷を軽減している。生産数量の変動や設備改造も、既存CUBICを生かした増設・再配置で柔軟に対応でき、標準化とカスタマイズ性を両立した設備運用が実現できる。
柔軟対応
塗装設備を進化させるには、削減と簡単を追求するだけでなく、被塗物や塗装仕様など多様な顧客要望への柔軟対応が不可欠である。
当社ではCUBIC LINEを活用し、網塗りや回転塗装に加え、高効率な新塗装方式などを積極的に導入しつつ、塗装業界の持続的発展と社会的要請に応えていく所存である。
