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工作機械のオーバーホール&レトロフィット
モノづくりを支える工作機械は“マザーマシン”として産業用機械や輸送機器、電機、機械要素部品など多くのモノづくり産業で活用されてきた。国内の製造現場では新旧さまざまな工作機械が稼働しているが、長年の使用による摩耗や劣化によって、本来の能力を発揮しきれていないケースが少なくない。使い慣れた機械を修理、改修することで新品同様かそれ以上の価値を提供するオーバーホール、レトロフィットに注目が集まっている。かつて工作機械のオーバーホールやレトロフィットは経済の減速局面で、買い替え資金に苦慮した結果の選択だった。しかし近年では持続可能なモノづくりの選択肢として、常に引き合いがあるという。
名機、既存設備を有効活用
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スギヤマメカレトロは豊富な経験からメーカー問わず対応する
国内の生産現場では新品導入から10年以上経過したビンテージと呼ばれる生産設備の割合が60%以上を占めると報告されている。さらに20年以上経過したものは35%超に達するという。
こうした中、工作機械は高速・高精度加工が可能な5軸加工機や金属積層造形機能を搭載した複合加工機が登場するなど進化し続けている。また、デジタル技術を活用した新たなモノづくりも提案され、生産性向上や工程集約を実現する最新鋭設備の導入は製造現場の高度化への近道と言える。半面、最新鋭機の導入は多額の資金が必要となるため、ビンテージ機械の有効活用を含めた設備計画が企業経営においても重要な課題だ。
スギヤマメカレトロ(岐阜県本巣市)は工作機械のオーバーホールや改造を主力とする。「同規模の同業他社はない」(浅野博幸社長)という国内トップ企業で、産業界の中でもユニークな存在だ。長年の経験から個々の機械の特徴を把握し、図面なしで機種やメーカーを問わず対応する。オーバーホールでは構成部品をすべて分解して点検・整備し、組み立て直して新品の性能に戻す。あるいは部品を加工し直すなどし、修理以前に比べて性能を高めることもできる。改造では顧客先の生産現場により適するよう機能を高める。「名機を蘇らせるのが私たちの仕事」と浅野社長は話す。
中でも得意とするのが自動車や工作機械の軸受(ベアリング)を仕上げる研削盤だ。軸受は搭載先の製品の性能を大きく左右する重要部品である。大手軸受メーカー各社から修理や改造を任されるのは、スギヤマメカレトロの技術力の高さの証しだ。
修理・改造以外に、最新のコンピュータ数値制御(CNC)装置を搭載して旧型機や汎用機を再生する「レトロフィット」、CNC装置を別のメーカー製に載せ替える「リプレース」も手がける。また専用機も生産し、航空機用などの自動リベットカシメ機(オートマチックリベッター)、鉄道の車輪を修正加工する旋盤などを提供する。
修理事業を継承
国内には汎用工作機械や専用機械のメーカーが多数存在する。中には後継者や技術者不足で事業継続が難しくなるケースもある。こうしたメーカーの修理事業を承継することで、モノづくりを支えるのが佐々木精機(名古屋市熱田区)だ。このほど、数値制御(NC)立型旋盤を主力とした玉木鉄工所(三重県伊勢市)製機械の修理事業を受け継いだ。佐々木精機は2023年にも日立精工(現ビアメカニクス)が以前生産していた工作機械の修理事業を同業から受け継いでいる。同社のような技術と実績を兼ね備え、安心して修理を依頼できる存在はユーザーにとって心強い。
主要ユニットメーカーの廃業も機械メーカーなどの頭を悩ませる。中でもスピンドル(主軸)は機械性能を左右する。主軸は非常に精密なため、内部の組み付けのわずかな差で精度や耐久年数に大きく差が生じる。同業者でも製造元以外は修理に応じないケースが多い。大弥精機(静岡県磐田市)は、同社製主軸のオーバーホールやレトロフィットに加え、組み付けなど自社・他社問わずに引き受ける。30年以上前に製造した機械の主軸修理依頼にも対応している。
オーバーホール、レトロフィットは、手持ちのビンテージ機械の精度や生産性を復活させるだけでなく、各社固有の看板技術の維持、継承にも貢献している。このため、オーバーホール、レトロフィットの事業者は持ち合わせる技術とノウハウを駆使しモノづくりの足元を支えている。
