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工作機械のオーバーホールとレトロフィット
モノづくりを支える工作機械は“マザーマシン”として産業用機械や輸送機器、電機、機械要素部品など多くのモノづくり産業で活用されてきた。それだけに国内の製造現場では新旧さまざまな工作機械が稼働している。しかし、こうした機械は長年の使用による摩耗や劣化によって、本来の能力を発揮しきれていないケースが少なくない。使い慣れた機械を修理、改修することで新品同様かそれ以上の価値を提供するオーバーホール、レトロフィットに注目が集まっている。
新たな付加価値を提供
工作機械は高速・高精度加工が可能な5軸加工機や金属積層造形(AM)機能を搭載した複合加工機が登場するなど進化し続けている。また、デジタル技術を活用した新たなモノづくりも提案される中で、企業の持続的な発展を支え、人手不足に対応するためには、生産性向上や工程集約を実現する最新鋭設備の導入が近道と言える。
一方、国内の生産現場では新品導入から10年以上経過したビンテージ機械が生産設備の60%以上を占めると報告されている。最新鋭機の導入は多額の資金が必要となるため、ビンテージ機械の有効活用は企業経営においても重要な課題だ。
また、ビンテージ機械をオーバーホールやレトロフィットする最大の理由として、古くても使い慣れた機械で作業したいという現場技術者の思いがある。機械を分解、点検して、摩耗した部品を新品に交換するだけでも加工精度の復元が可能だ。さらに、多機能な数値制御(NC)装置に取り換える際でも、操作盤のボタンを元のNC装置と同じ位置に配置するなどの要望が出されることも少なくない。ユーザーにとって操作性を維持しつつ機能や生産性が向上すれば、新たな付加価値の創造につながる。
加えて、メーカーがメンテナンスを終了したNC装置を他社製に載せ替えることも可能だ。これにより機械寿命のさらなる延長を実現できる。現在でも現場で活躍する名機と呼ばれるビンテージ機械は、最新鋭の工作機械では不得意な特殊加工に使用されるケースも少なくない。オーバーホール、レトロフィットを活用し、特定の加工に特化した機械の長期活用が技術の独自性にもつながっている。
かつて工作機械のオーバーホールやレトロフィットは経済の減速局面で、買い替え資金に苦慮した結果の選択だった。しかし近年では持続可能な選択肢として、景気の状況に左右されることなく引き合いがあるという。
【レトロフィット導入事例】
サイトウ工機/汎用ホブ盤をCNC化 加工パターン100種登録可能
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サイトウ工機が導入した市場にない高性能の小型ウォーム歯切り盤
サイトウ工機は歯車製品加工やホブ盤修理などを手がける。中でも超小型歯車の加工技術では定評があり、多種多様な特殊形状の歯車製作でも実績を誇る。歯車加工に欠かせないホブ盤の調整にたけており、良い状態に保つことができるため、顧客からの高精度な要求に対応できる。
医療機器向け高精度歯車の受注が増加している。またコンピューター数値制御(CNC)歯車試験機を導入し、これまで職人の勘に頼ってきた加工後検査を効率化した。独自のダイレクトギアミーリング技術による高精度な歯車加工の実現やロボットを導入するなど、量産体制を構築している。
さらに顧客の高度なニーズに対応するため、技術専門商社のシステムエンジニアリング(横浜市中区)の樋口豊隆社長を通じて、三宝精機工業(同戸塚区)にレトロフィットを依頼した。浜井産業製の汎用ホブ盤「60SP」を3軸のCNCウォーム歯切り盤に改造し、2024年11月に稼働を開始した。ヘッドやテールなどの機械的改造をはじめオリジナル対話画面で加工パターンを100種類の登録を可能にした。加工精度では回転数は1000rpm(1分当たりの回転数)と回転速度が速い。他社製品と比べて全体的な機械のスペースが2分の1以下となるなど、省スペース化を実現した。
サイトウ工機の齋藤史紀社長は「汎用機と比べて細かい機械調整の必要がなく、市場にない高性能の小型ウォーム歯切り盤を導入したことで、オーダーメード型の生産ニーズに応えていきたい」としている。
MEMO
▷事業内容=歯車製品加工、ホブ盤修理
▷所在地=川崎市中原区宮内1の23の6
▷社長名=齋藤史紀氏
▷電話番号=044・820・6464
▷資本金=1000万円
▷従業員数=30人
▷創立年月=1985年12月
