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オシロスコープ
オシロスコープは産業のマザーツールの一つで「見えない電気信号」を観察し、電気信号の時間的な変化を波形表示する基本の電気測定器。多チャンネル化や広帯域化、波形の視認性、操作性の向上が図られ、ノイズに埋もれた信号や、たまにしか発生しない間歇(かんけつ)的な信号を捕捉するなど、エレクトロニクス産業の発展とともに進化している。
多チャンネル・広帯域化 加速
AI/航空・宇宙/パワエレ向け続伸
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国内オシロ需要の伸長に期待が高まる(自動車・車載の展示会でのローデ・シュワルツ・ジャパンブース=26年1月) -
オシロスコープはデジタル信号のプロトコル解析可能なミックスド・シグナル・オシロ(MSO)や、高周波(RF)計測機能や信号発生機能の内蔵といった利便性を高めるだけでなく、独自開発したASIC(特定用途向けIC)の搭載や中央演算処理装置(CPU)の高性能化に伴う操作性向上など、高機能化したモデルが投入されている。
日本電気計測器工業会(JEMIMA)が2025年12月に発表した25年度(25年4月―26年3月期)オシロの国内需要は、前年度比2・7%増の109億円を見込み、29年度には127億円と予想する。炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)などのパワー半導体の技術革新やパワーエレクトロニクス分野の投資拡大、航空・宇宙市場の成長などを背景にオシロ需要が伸長すると見通す。
販売商社の日本電計は「25年度売上高は前年度比10%増を見通し、航空・宇宙に加え、AI(人工知能)・量子科学分野で、周波数帯域10ギガヘルツ超えのオシロの要望が見られた」という。国華電機(大阪市北区)は「GaNは高速でスイッチングするため、500メガ―1ギガヘルツクラスのオシロに動きがあり、量子科学分野では超広帯域オシロが継続して伸びている。海外メーカーを中心に、市場が活発化。当社オシロの25年度の売上高は前年度比20%成長」と語る。
特にSiCやGaNを搭載したインバーターなど電力変換・電源回路では、デバイスのON/OFFスイッチングの実動作信号の詳細な波形観測や高度な解析要求が高まりをみせる。ローデ・シュワルツ・ジャパンやテクトロニクスは入力の多チャンネル化を図り、パワー半導体などの研究や開発を支えている。特にこれらオシロには、12ビットADコンバーター(アナログデジタル変換器)が搭載され、垂直軸で12ビットの高い分解能を実現。垂直分解能は8ビットオシロと比べて、約16倍となる解像度で微少な信号変化を詳細に表示する。
こうした中、ローデ・シュワルツ・ジャパンは独自開発ASICを搭載し、8チャンネル時でも動作速度が落ちないことで、引き合いを高めている。今後は「エンジニア1人に1台のデバッグツール」として提案を強める。扱いやすく高性能絶縁プローブを含めて、25年7月―26年6月期で、前年同期比20%増の売り上げを目指す。
テクトロニクスはパワエレ分野に加え、広帯域オシロを消費電力抑制が高まるPCI EXPRESSやDDRなど次世代高速シリアル伝送規格の分野に各種プローブとともに提案。複雑化するテスト要件に高付加価値を顧客に訴求する。
次世代・高性能―2ケタ成長 26年度
販売商社
日本電計の26年度は「航空・宇宙や防衛、AI・量子科学、次世代通信分野の研究開発に向けて販売を強化。シリコンフォトニクス関連にも期待しており、25年度比10%増の売り上げを目指す」。
東日本電子計測(仙台市泉区)は「大学研究機関などを中心に高性能なオシロとプローブで課題解決を提案する」と言う。
東洋計測器(東京都千代田区)は「26年度は半導体関連と自動車関連の分野に500メガヘルツモデルを中心に提案し、25年度比2ケタ成長」を目指す。穂高電子(横浜市港北区)は「パワー半導体における損失解析を自動化するソフトウエアと高精度オシロを組み合わせたソリューション提案を強化」する。
遠藤科学(静岡市駿河市)は「26年度は防衛や宇宙、新エネルギー、半導体材料関連を期待分野に置く」としている。
マックシステムズ(名古屋市中区)は「オシロとプローブに加え、顧客要望に合わせたソフトや解析環境を組み合わせたソリューション提案型営業へと移行を図る」と強調する。
国華電機は「次世代高速シリアル伝送規格や量子科学、航空・宇宙分野に、絶縁プローブや解析ソフトを組み合わせて最先端ニーズに応える」と述べる。
九州計測器(福岡市博多区)は「九州という立地を生かして、教育分野を含む半導体産業関連分野を重視」する。
レンタル
9月に創立50周年を迎えるオリックス・レンテック(東京都品川区)は「PCI Express、DDR、MIPIなどの次世代シリアル伝送規格に関連した適合性試験に注力」する。
SMFLレンタル(東京都千代田区)は「多チャンネルモデルをパワエレ分野に継続して提案。また、電源品質評価や車載イーサネットの適合性試験、シリコンフォトニクス関連分野に広帯域オシロも提案する」としている。
横河レンタ・リース(東京都新宿区)は「パワエレ分野に継続して12ビット以上の高分解能で多チャンネルモデルを提案。広帯域オシロはシリアル伝送規格など信号品質解析などのニーズに応える」と述べる。
日本法人 品川移転/ローデ・シュワルツ
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開所式を祝うアンドレアス・パウリー プレジデント&CTO -
最大142人を収容するセミナールーム
ローデ・シュワルツ・ジャパンは2003年、独ローデ・シュワルツの日本法人として設立され、日本市場に寄り添うビジネスを展開し実績を築いている。測定器を主軸に航空宇宙や防衛分野、パートナー企業との新規サービス開発など、事業領域が拡大している。
こうした中、日本法人創業の東京都新宿区より、25年12月、同品川区に移転した。持続的な成長を支え、さらなるビジネスを加速させる。
新しいオフィスには、さいたま市に設けていた修理・校正などを行うサービスセンターを統合し、業務効率化と顧客満足度の向上を図る。また、最大142人を収容するセミナールームを設け、技術セミナーなどを予定している。さらに、EMC(電磁環境適合性)対策に向けて、パートナー企業と連携した「EMC対策LAB」の開設を予定している。
業務開始日の12月3日に開所式を行い、約200人の取引先のほか、駐日ドイツ大使が出席、独本社から アンドレアス・パウリープレジデント&最高技術責任者(CTO)ら4人が来日して新オフィス移転を祝った。
オシロ物語/岡山大学 学術研究院環境生命自然科学学域・電力変換システム工学研究室 助教・工学博士 石原 將貴 氏
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数値や波形の大切さを伝える石原先生(右)
岡山大学(那須保友学長)工学部は津島キャンパス(岡山市北区)にあり、石原先生は省エネルギー技術の要として注目されるパワーエレクトロニクス技術を専門に研究している。窒化ガリウム(GaN)材料や、炭化ケイ素(SiC)材料を用いた次世代パワー半導体を活用し、小型・高効率(高電力密度)なスイッチング電源の開発に取り組んでいる。
石原先生は「近年、高電圧化が進むAI(人工知能)サーバー向け電源の開発には、次世代パワー半導体が欠かせない」と話す。こうした高電力密度電源の開発には、スイッチング挙動の観測と分析が不可欠であり、オシロスコープと光絶縁プローブを研究に欠かせない重要な測定器と位置付けている。
石原先生とオシロの出会いは大学生だった14年前にさかのぼる。「島根大学工学部2年生時に、オシロを購入した」と、手にした時の喜びを思いだす。テクトロニクスのエデュケーションモデルで、入力は2チャンネル。今も大切に扱い活用している。また、石原先生は研究だけでなく、教育にも力を注いでいる。学部3年生向けの学生実験では学生にオシロの扱い方を指導し、正しい計測によって得られる数値や波形の大切さを伝えている。ブラックボックス化されたキットではなく、電子部品を一つひとつ用いて回路を製作し、その動作や特性を評価させることで理解を促す。ハンダ付けから丁寧に指導するのも石原先生流だ。
こうした中、スイッチング損失を計測するには「光絶縁プローブなどがあり、電圧計測の技術は比較的成熟している」とする一方、「電流計測用のプローブは選択肢が限られ、プロービングも難しく、なお課題の多い分野」と指摘する。電圧と電流を同時計測することで回路の損失が算出できる。「シミュレーションだけではなく、実測値が大事」と強調する。
