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12ビットオシロ 高分解能/高速信号を観測
パワー半導体・6G・電動車向け好調
オシロは広帯域化や波形の視認性、操作性の向上が図られ、ノイズに埋もれた信号や、たまにしか発生しない間歇(かんけつ)的な信号を捕捉するなど、エレクトロニクス産業の発展と共に進化している。
日本電気計測器工業会(JEMIMA)による2023年度のオシロの国内売上高は前年度比横ばいの96億円と予想し、26年度には101億円を見込んでいる。
窒化ガリウム(GaN)や炭化ケイ素(SiC)などのパワー半導体需要に加え、次世代通信の第6世代通信(ビヨンド5G/6G)や高速シリアル通信、ミリ波通信の開発需要、自動車やバイクの電動化による開発に伴うプロトコル解析と波形観測ニーズがオシロ需要をけん引すると考える。
さらにパワーエレクトロニクスで使われるパワーコンディショナーなどの電力変換装置開発、炭素循環社会の潮流に沿った新技術投資、スマートシティーで使用するセンサーなどの開発にオシロ需要の増大が期待される。
オシロはこれまでデジタル信号のプロトコル解析可能なミックスド・シグナル・オシロ(MSO)や、高周波(RF)測定機能、信号発生機能の内蔵や独自ASIC(特定用途向けIC)を搭載するなど高機能化したモデルが投入されている。
こうした中、垂直分解能が12ビットのオシロが注目を集めている。12ビットという高分解能化で、より微細な信号変化や高速信号を確実に捕捉し、細部まで観測できる。
オシロはチャンネル数や機能、性能、操作性、測定要求などそれぞれに特徴を持つ中、周波数帯域でローレンジからミドルレンジまで市場にそろったことで、ユーザーの選択幅の拡大に加え高分解ニーズの本格的な普及に期待が高まる。
岩崎通信機はパワー半導体の動特性解析に応えるため8チャンネルで12ビットのオシロに注力。インバーターの容量が大きくなるに従い、測定信号の波形に揺らぎが見られるが、同社のオシロは安定した信号を観測できることでもユーザーから高い評価を得ている。
また大電流、大容量化するパワー半導体の解析に向けて、光絶縁プローブを投入した。
岩崎通信機は「インバーターやモーターの解析に向けて、オシロ用ソフトウエアを用意することでオシロと両輪で引き合いが出ている」と話す。特にプローブ類の問い合わせは増加しており、自動車の電子化によるECU(電子制御ユニット)は多くのセンサーが搭載され、異なる電圧を正確に解析する需要が高まっていると分析する。光絶縁プローブは7月に東京・有明の東京ビッグサイトで開催された「TECHNOーFRONTIER2023」でデモを交えて紹介し、多くの来場者から注目を集めた。今後はオシロに加え、光絶縁プローブの提案や測定手法の訴求に力を入れる。
リゴルジャパンは12ビット分解能で、第2世代の独自ASIC「Centaurus」を新製品のローエンドクラスにも搭載した。新製品は奥行きは突起物を含めても約7センチメートルを実現。ベンチタイプでありながら、手に持って操作できる。同社によると「小型化に向けた製品開発に約2年間を投じた」と言う。USBタイプCで動作し、出力48ワット以上のモバイルバッテリーでも駆動する特徴を持つ。大学・高専の授業や実験、エレクトロニクス関連の開発に向けて販売拡大を見込む。同社は中国蘇州に本社・工場を構えるリゴル・テクノロジーズ日本法人。
T&Mコーポレーションは、中国の計測器メーカー「SIGLENT(シグレント)」や「OWON(オウオン)」などを販売し、日本国内で校正や技術サポートまで手がける。7月に東京・有明の東京ビッグサイトで開催された「TECHNOーFRONTIER2023」では、シグレントの垂直分解能12ビットオシロなどを一堂に紹介し、来場者の注目を集めた。同社は「シグレントは高周波技術に強みを持つ」とし「24年には垂直分解能が12ビット、最大周波数帯域4ギガヘルツのミドルクラスをで発売する」と日本市場への意気込みを語る。
プローブ 幅広い範囲の信号に対応 耐ノイズ性/波形、詳細に解析
要求する信号を正しく測定するには、「プローブ」や「オシロスコープと測定ポイントの接続(プロービング)」が重要な要素となる。オシロ付属のプローブは幅広い範囲の電圧信号に対応する。一方で、正しく測定できる範囲を把握する必要がある。オシロとプローブは測定における両輪として欠かせないツールとなっている。
プローブは電圧や電流、振幅、周波数など測定用途に応じてプローブを適切に選択する必要がある。オシロに伝送する信号の高い忠実性、ノイズ影響を受けないことなどが求められる。測定要求に対応した高い周波数帯域と耐ノイズ性や、大電流波形を詳細に解析できるプローブなど測定に最適なプローブが多彩にラインアップされている。
岩崎通信機は大電流・高電圧、広帯域などユーザー要望に応えるプローブ類を豊富にそろえ、培った測定ノウハウ(プロービング手法)を提供。同社のロゴスキーコイル電流プローブは、回路を切断することなくインバーターなどの大電流波形が解析できる。エネルギー損失の測定ニーズが強まる中、高周波や高密度実装化し狭小部分の測定課題に応える。周波数帯域100メガヘルツの広帯域を実現したモデルのほか、配線直径が1ミリメートルモデル、150度Cの高温度対応モデルなど全101モデルをラインアップしている。
さらに同社は光絶縁プローブ「FF―1500シリーズ」を投入した。クラス最高の周波数帯域1・5ギガヘルツを実現し、プラスマイナス60キロボルトのアイソレーション電圧を持つ。同社は「SiCやGaNなどのパワー半導体が大容量・大電流化が加速しており、スイッチングの信号測定に必要」と述べる。