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大阪北部産業界
大阪北部は大阪都心にほど近い住宅地としてだけでなく、モノづくりから医療・バイオテクノロジー、物流まで幅広く産業が集積する、多様な顔を見せる地域である。新たな鉄道路線や高速道路の整備が進むほか、淀川による舟運整備なども計画されており、全国的に見ても個性的な都市開発が進む。都市型産業を今後さらに発展させようと、大阪北部でどのようなまちづくりが進んでいるのか、最近の動向から現状を追った。
変わる都市、広がるチャンス
「十三」 駅前で進む官民学の一体開発
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十三駅近くの「もと淀川区役所跡地」ではタワーマンションの建設が進む。
大阪の中心地である梅田の近く、淀川区の中心地である「十三」の再開発が動きだしている。駅前にタワーマンションを中核とした複合施設が建設中で2026年4月に完成。淀川の河川敷には船着き場を中心とした集客施設が、2025大阪・関西万博の開催に合わせた25年4月に供用を開始する計画だ。さらに将来は阪急電鉄による新大阪駅延伸や駅ビルの開発などの構想もあり、北部大阪の拠点として大きな一歩を踏み出している。
阪急電鉄の大阪梅田駅から2駅(京都線は1駅)の十三駅は、神戸線、宝塚線、京都線が分岐する交通の結節点であり、梅田にほど近い繁華街としてにぎわってきた。ただ最近では新たな都心として可能性が高まっている。現在整備が進む再開発「もと淀川区役所跡地等活用事業」では、約8900平方メートルの駅から徒歩3分の至近な地に39階建てタワーマンション「ジオタワー大阪十三」が建設中だ。1階は商業施設、2階は大阪市立図書館や学校図書館、保育・学童施設などを整備する複合施設となる。先行して医療系の専門学校が4月に開校したところで、官民学による一体開発となっている。
この再開発地を抜けると淀川に突き当たるが、ここでも船着き場などを整備する「淀川河川敷十三エリアかわまちづくり計画」が進む。堤防の外側には盛り土が施され、飲食店など集客施設が設置される計画だ。河川敷は芝生化され、イベントなどの開催も見込まれる。船着き場から万博会場の夢洲まで就航するほか、万博開催までには上流の淀川大堰で閘門(こうもん)が整備される計画で、完成すれば大阪都心や京都とも舟運で結ばれることになる。
十三では将来的に新線「なにわ筋線」と新大阪駅を結ぶ新駅が十三駅の地下部分に建設される計画で、さらに駅上を再開発して高層ビルを建設する構想もある。27年度に全体まちびらきとなる、大阪都心最大の再開発プロジェクト「うめきた」からも淀川を越えればすぐという立地は、十三のポテンシャルを大きく高めそうだ。
淀川区は大小の工場が集積するモノづくりの町でもあるが、最近では人口が流入し、4月には24区の中で人口が最大となった。地元産業界からは、再開発に対する期待が高まっている。
「箕面」北大阪急行延伸でにぎわう
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3月に延伸した北大阪急行電鉄の箕面萱野駅 -
箕面萱野駅と直結する商業施設「みのおキューズモール」。左側が延伸に合わせて3月に開業したSTATION棟。
大阪府北部を通る北大阪急行電鉄が3月、千里中央駅(豊中市)から北へ約2・5キロメートル延伸した。箕面市に「箕面船場阪大前駅」「箕面萱野駅」の二つの新駅が誕生し、梅田やなんばといった大阪都心部が一気に近くなった。箕面市にとって半世紀以上前からの悲願が実現し、緑豊かな住宅都市は大きく変わりつつある。
北大阪急行は大阪メトロ御堂筋線に直接乗り入れる。箕面萱野駅から乗り換えなしで新大阪駅まで最速19分、梅田駅まで同25分、なんば駅まで同34分。大阪都心部までのアクセスは劇的に改善した。北大阪急行の延伸に合わせ、路線バス網も箕面萱野駅を中心としたものに再編。箕面市内各地域から大阪都心部へのアクセスしやすさを後押しし、東西方向の移動利便性も向上した。従来は開業した新駅の付近から大阪市内に向かう場合、路線バスを使って千里中央駅に行くケースが多かった。
北大阪急行が延伸したエリアは箕面市の中部に当たる。萱野は田畑も広がり、自然を身近に感じられるところで、西国街道沿いには歴史ある建物も残る。鉄道の通らない地域に延伸したことで、まちの状況は大きく変わった。
ターミナル駅の役割を担う箕面萱野駅の周辺にはバスターミナルがあるほか、延伸に合わせて大型商業施設「みのおキューズモール STATION棟」がオープンした。
箕面船場阪大前駅の周辺は「文化芸能・国際交流の拠点」として整備。大阪大学の外国語学部の学生らが使う箕面キャンパスのほか、箕面市立船場図書館、箕面市立船場生涯学習センター、箕面市立文化芸能劇場、箕面船場駐車場が一体となった複合公共施設がある。今後、箕面市立病院もこの駅の周辺に移転、建て替えする計画がある。
このうち、船場図書館は全国初となる大学図書館の機能を持った図書館で、阪大が指定管理者として運営する。大学図書館の蔵書60万冊を含む約71万冊を所蔵。阪大の蔵書がある3階、4階には語学学習の本や多読用図書、外国語学部で学べる25の専攻語で書かれた図書などが並ぶ。グループ学習室や研究個室、AVライブラリーなどの利用もできる。船場生涯学習センターでは阪大の知見を生かした専門性の高い講座を受けることができる。
延伸によって、二つの新駅の周辺で新規分譲マンションの開発が進むなど、新たなにぎわいも生まれている。箕面市では、延伸区間は1日に約4万5000人が乗降すると予想され、今回の延伸による経済波及効果は初期効果が3227億円、年間の経済波及効果が614億円と試算。大阪府北部のベッドタウンの一つで、箕面大滝など観光の名所もあり、「大阪の奥座敷」とも言われる箕面市のイメージは今後、大きく変わりそうだ。