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開幕まで500日を切った大阪・関西万博
2025年に開催される大阪・関西万博は、開幕500日前を切った。万博会場となる夢洲(ゆめしま)では、万博の象徴として建設が進む大屋根「リング」の全容が見えてきた。13の企業・団体が出展する民間パビリオンは半数以上が着工し、会場では建設の慌ただしさが増している。対照的に海外パビリオンの自国で建てる「タイプA」の建設は大幅に遅れている。開幕までに間に合うか、依然綱渡りの状態が続いている。
大屋根「リング」全容現る 来秋完成へ作業急ピッチ
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万博の象徴として建設が着々と進む大屋根「リング」
「現場の施工スピードがどんどん早くなってきている。建設はスケジュール通り順調だ」。リングの建設で北東工区を担当する大林組の担当者は、11月下旬に夢洲で行われた建設状況の説明会でこう強調した。同工区では日本の神社仏閣の建築で用いられる技術「貫(ぬき)工法」が採用されている。職人の手により緻密な作業が行われている様子を披露しつつ、施工性の向上で休日をしっかり取得できる労働環境の整備についてもアピールした。
会場の中心部を取り囲むように設置されるリングは、内径約615メートル、高さ12―20メートル、1周は約2キロメートルあり、完成すれば世界最大規模の木造建築物となる。
リングの建設は三つの工区に分かれ、北東工区のほか、南東工区は清水建設、西工区は竹中工務店を中心とする企業連合が担当する。24年秋ごろには全てのリングが一つにつながる予定だ。
日本国際博覧会協会はリングの用途について、雨風や日差しを遮る空間として利用できるほか、屋上の遊歩道で散策や眺望を楽しむことができるなどとしている。
一方で、万博全体の会場建設費が当初の1・9倍の2350億円に上振れしたことなどを受け、リングの建設に約350億円の巨額の費用を投じることへ世論の批判も高まっている。
このような状況に万博協会の石毛博行事務総長は11月に開いた大阪市内の会見で「費用とスケジュールのみに話しが集中し、本来の万博の意義で理解を得られなかった」と反省の弁を述べた。ネガティブイメージを払拭するためにも、万博協会は今後、開催意義や費用負担の丁寧な説明を行っていくことが欠かせない。
海外パビリオン建設難航 IPMで解決の糸口探る
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IPMでは最大となる150カ国・7国際機関、500人が参加した -
海外パビリオンの建設遅れで問題となっている各国が建てる「タイプA」出展予定国に対し、大阪府・市が建設手続きや建設許可の相談窓口を設け対応した
参加国が一堂に会した国際参加国会議(IPM)が、大阪市内で約2日間にわたって行われた。これまでで最大となる約150カ国・地域、7国際機関から約500人が参加。万博協会は、海外パビリオンの建設遅れで解決の糸口を探ろうと、パビリオン準備などで個別の問題解決を図る50以上の相談窓口「ワンストップショップ」を設け、対応を図った。
建設遅れが問題となっている「タイプA」のパビリオンを出展予定の国は、建設関連の相談窓口に積極的に足を運び、建築の申請プロセスなどについて熱心に質問する姿が見られた。
「タイプA」の海外パビリオンについて、当初の計画では23年4月から順次、各国へ土地の引き渡しが行われ、建設工事も開始しているはずだった。しかし12月8日時点で土地が引き渡されたのは2カ国で、着工している国はゼロ。タイプA出展予定国は約60カ国あり、建設事業者が決まっている国も半数にとどまる。
建設業者が決まらない国に対して、博覧会協会は海外パビリオンの建物を代理で建てる「タイプX」と呼ばれる方式への移行を進める。「回答期限をいつまでとは設けていないが、早く決断してもらわないといけない時期にきている」と、協会幹部も危機感を募らせる。
万博に関してネガティブムードが漂う中、開幕500日前を迎えた11月30日、前売りチケットの販売が開始した。運営費の原資となる入場券は、その約6割に当たる1400万枚を前売り券で賄う計画をしている。全国的な万博の機運を高められるか、目玉の一つである海外パビリオンの今後の進捗(しんちょく)が重要なカギとなりそうだ。